委員会4 (微修正)

管理委員会警備局地下鉄警備隊パワードスーツ隊専用練兵場




 委員会事務所近郊の地下鉄警備隊駐屯地は夕陽に照らされていた。駐屯地では履帯の付いたパワードスーツに乗った隊員が射撃訓練に励んでいる。

 練兵場の奥に設置された士官用控え室で事務局長の西野と警備局長の古谷が話していた。西野が難しい顔で切り出した。

「さっき、不思議な来客がありました。」

 西野は本物の豆から作ったとわかるコーヒーを見つめながら言った。効率性への異常な信仰が常態化した昨今、良質なカフェイン源は失われつつある。

「どういう客かな」

 古谷の軍人然とした顔がかすかに西野の方を向いた。

「会計検査院の検査官です」

「確かに珍しい。3年ぶりくらいか」

 古谷は珍しいことには同意するがあえて話題にすることのことではないといった考えを隠そうとはしていなかった。

「その検査官に非公式の地下鉄調査を許可しました」

 古谷の目が見開かれる。

「聞いてないぞ」

「ええ、委員会の許可は取っていません。それにお目付役に平沢を付けました、問題はないでしょう」

 古谷はうなった。

「なるほど、非公式か…」

 西野はそこまで言うと、目線を上げ訓練中の警備隊を見やった。

「練度はいかがですか?」

「それは、事務局長として問うのかね?それとも同志としてかね?」

目の前では一個中隊が射撃練習をしている、それぞれの隊員は仮装現実用ヘルメットを装着してどこかの戦場で射撃をしている。

「それは、うかがった内容によって私が判断しましょう」

 古谷は軽く笑った後話し始めた。

「基本的には悪くない、でも地下鉄内部を想定した訓練を組み込むのに苦労しているよ。隊員たちの間でも少しづつ同志を増やしつつある」

「訓練計画というと、地下鉄内部ではなく、放棄都市に残されたトンネルだとでもしてるんですか?」

「まあ、そんなところだ。ところで西野、地下鉄システムの武装車両の陣容の目星はつきそうか?」

「それも平沢に調べさせています」

「最近、地下鉄システムの要求がエスカレートしている気がする。気づきにくいほどゆっくりだが、5年前と比べると明らかだ」

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