間違い探し

Iris

電話

あれ・・・スマホの調子が悪い・・・


朝の通勤時に操作して違和感があった。


昼休みにはまともに反応してくれない。


・・・ないと困るから・・・抜けてショップに行こうか・・・今日なら午後半休でもいいかな・・・


そんなことを思いながら外出をした。


ショップで見てもらうと本体の不具合と言われた。


店員「お客様はこの端末で2年使われていたので変え時ですね・・・あ、契約が10年経っているのでこの機種なら2年お使いいただければ、ただで交換できますが・・・どうしますか?」


私「・・・そうですか・・・じゃあ新しいのでお願いします。」

(10年?・・・あぁ、高校1年で携帯もってから、もうそんなに経つのか・・・)


手続きが終わって2時30分をまわっていた。


私「どうしよかな・・・戻って仕事する気分じゃないな・・・」


ショップを出たところに喫茶店があってなんとなく入ってみた。


入ると初老のいかにもマスター的な人が出迎えてくれる


店員「いらっしゃい、お一人ですか?」

私「はい」

店員「好きな席にどうぞ」

私「では・・・」


店内はおもいのほか人がいて半分以上席が埋まっていた。

店を見まわして窓際に絵が飾ってある席に座る。


私「コーヒーをホットでお願いします」

店員「かしこまりました」


壁の絵はきれいな女性の絵で優しく微笑んでいるが視線を感じる不思議な絵だった。


棚に目をやるとクロスワードの雑誌が置いてあって手に取った。

暇潰しに開いたページの「間違い探し」(パズル)をなんとなく考えてみた。


答えはすぐに出た。漢字2文字


・・・そっか・・・

持っていたボールペンで書き込む。


店員がコーヒーを持ってくる。


店員「ごゆっくりどうぞ」


私「ありがとうございます、すてきな絵ですね」


店員「ああ、これですか?美人でしょう?」


私「はい」


店員「本当は家に飾りたかったんですが、視線が強すぎてね」


私「なるほど、わかる気がします」


コーヒーに口をつけて昔を思い出した。


・・・こんな絵どこかで見たな・・・


高校の時に美術部にはいっていてすこしだけ絵を描いていた。

その時付き合っていた子が視線のある絵を描いていたきがする・・・元気かな?

大学に進学して、その子とも疎遠になって、絵もやめてしまった。

それなりの企業に就職して4年、それなりに仕事もこなせて不満もないけれど・・・


楽しいことしてないな・・・

開いたままだったクロスワードの答えの前に2文字追記した。


私(さてと、戻るか)


お金を払って店を出る。


少し歩いたところで書店によって時間をつぶした。

会社に連絡を入れようと思ってスマホを取り出そうとするが、ない。


私(あれ・・・喫茶店に忘れたかな・・・)


引き返して店員に忘れ物がなかったか確認した。


店員「おまちください、確認してきます」


店の隅に古い電話がおいてあったので


私「あの電話おかりしてもよろしいでしょうか?」


店員「・・・どうぞ」


私「ありがとうございます」


電話の受話器を上げて番号を押そううとしたら4桁のダイアルが目にはいった。

「2」「0」「1」「7」

私「・・・西暦かな?」

なんとなく「1」を爪ではじいて「0」にした。


私(電話番号は・・・090-****-****と)


電話がすぐにつながる


*「はい」

私「よかった」

*「はぁ?」

私「今どちらですか?」

*「どちらさまですか?」

私「あぁ、その電話の持ち主です、拾ってくれたんですよね?」

*「え?どういうことですか?」

私「いや、だから」(あれ?この声どこかで・・・)

*「この電話さっき買ったばかりなんですが・・・番号あって、あってます?」

私「え?・・・090-****-****ですが・・・」(拾ってもう売ったやつがいるのか?)

*「あっていますが・・・この電話さっきお店で買ったんですよ・・・」

私「・・・あ?」(このダイアル?え?)

*「なにかの間違いではないですかね?」

私(この子・・・10年前の私か?)

*「もしもし?聞こえます?」

私「・・・あ?はい。・・・ごめんなさい、勘違いのようです。」

*「よかったです、それでは」

私「あ、ちょっとまって」

*「はい?どうかしましたか?」

私「・・・いや、・・・がんばって」

*「はあ?」


電話が切れた


私(・・・あぁ、思い出した。電話を買った直後に変な電話があって最後に「がんばれ」って言われた・・・あれは・・・私か)


受話器を置く


店員「お客様、この携帯電話ですかね?」


さっき購入した電話を持っている


私「はい、それです。どこにありました?」


店員「先ほどの席のソファーの隅に」


手渡された。


私「ありがとうございます。助かりました。」


店員「はい、よかったです。」


私「・・・それでは・・・あ、ちょっと失礼して」

さっきのクロスワードパズルの回答の文字を2本線で消した。


私「ご迷惑をおかけしました。」


店員「いえ、またおこしください。」


店を出てスケッチブックを買いに向かった。


私(いまからでも遅くない・・・たぶん)




喫茶店


店員 (さて、お客もいないから片付けてクロスワードでもしようか・・・)

ページをめくると答えが埋まっているページがあった。

店員 (ああ、先ほどの)

回答欄には「人生」とかいてありその文字に「私の」が書かれて2本線で消されていた。

店員 (なるほど・・・「間違い探し」か・・・)


電話を確認してダイアルを戻した。

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