二十五話 ファーストコンタクト




階段を上がった先。


そこにはいかにもな大扉があった。

鍵とかかかってるだろうか。どうでもいいや。

右手を構えて、鉄が纏わり付いて一回り大きな拳を形作る。

一二の、


「っ!」


なにかが爆発したみたいな音が響いて、扉を殴り開けた。

右手は問題なし。

空いたのを確認して、汐里しおりがすぐそこにいるのを感じて駆け出す。

走りながら中を見る。

広い部屋。奥の方はなんだか曖昧になっていて見えない。

見えるのは前方のベッド、そしてその前に立つ誰か。

あれがリベルタ。直感でそう認識した。

鉄を纏った足で床を踏み鳴らし、前へ跳ぶ。

手のひらに鉄の杭。リベルタに向かってそのままぶち込んだ。

……つもりだったのだけど。


「……早すぎる急ぎすぎ慌てすぎ。無理やり開けて何の会話も交わさず殺しにかかるとか」

「訊くことはないよ汐里を返して」

「まるで自分のものみたい」

「私のだ」

「…………言い切るんだ」


もやもやした何かの壁に、私の手は防がれてしまっていた。

いくら押し込んでも、能力で鉄を押し込もうとしてもびくともしない。

というか、私自身が空中で静止していた。


「だから……私はどんな手を使ってでも汐里を取り返す」


鉄の杭を消すと身体に重力が戻る。

着地すると共に足裏に鉄を流して滑るように距離をとった。

能力が分からない。……若干予想はついているけれど。

鉄の剣を壁の向こうのリベルタへ向ける。


「お前を殺してでも。それが最短なら私は実行する」

「脅し?」

「警告。後から文句言っても知らないから」

「……そう」


壁が消えた。

今度はちゃんとその存在を確認する。

顔は……ぼやけてよく見えない。声もどこか遠くから聞こえてくるようで不明瞭。

ローブらしきものを着ているけれど、やっぱりぼやけてはっきりとは認識できない。足が無い事、薄い水色の髪は綿あめみたいに膨らんで広がっていて、端が世界へ煙のようにほどけて溶けている事はわかった。

…………既視感。

私の中で直感が何かとの類似点を訴えている。どれなのかはわからないけれど。


「汐里はどこ」

「後ろで眠ってる」


汐里の気配からしてそれは本当らしい。

だから動く。


「……だから、急ぎすぎ。猪?」


今度は煙状の壁が走る私へ射出された。

多分、アレに触れるとそのままの意味で動きを止められてしまうのだろう。

地面に流した鉄を斜め上へ走らせる。鉄さえ通っていればその上を滑っていける。

壁の上を通っていっても鉄に触れたら多分私も止まる。だから、これは滑走路だ。

一気に滑って飛び出す。

それで煙の壁は飛び越えた。その先でも当然煙が私へ放たれる。

天井は見えないからかなり遠くなんだとわかっている。もう前方の地上へ鉄を放っている。

もう鉄でもなんでもない、けれど気にしない。地面に刺さった鉄に振り回されるように空中で動きを変えて先へ先へ飛んでいく。


「!」


けれど次は床がせり上がった。

ベットの前の床が急に上がってきて先を塞いでしまった。物理的な壁。

ならやる事は決まった。鉄をまとった両手で鉄の棒を構えて、飛ぶ勢いのままに……ぶん殴る!

壁は文字通り吹っ飛ぶ。その先に汐里のいるベッドがあるはず、だけれど壁を抜けたらリベルタもベッドも遥か彼方へ移動してしまっていた。

着地しつつ、飛来してきた2mぐらいの石ブロックを鉄の拳でぶち壊す。

次に二つ同時に飛んできたのは両手にそれぞれ持った巨大な斧で叩き割る。

次のもぶん殴ったけど硬い。勢いをなくしたところをもう片腕の杭打ち機みたいなので打ち壊した。……パイルバンカー、だっけ?

なんでもいい。

ブロックが来ないのを認識したと同時に距離を詰めにかかる。


「……!!」


今日何回聞いただろうか。

甲高く、そして鈍く響く金属の衝突音。発生源は鉄の装甲に守られた私の腹。

身体が後ろへ吹っ飛ぶのを感じながら、足元の床から生えた鉄が腹を突いたと理解した。

自分の力が勝手に?……違う、これは……私じゃない!

落下の際に軟化させた鉄をクッションにして衝撃を緩和。

起き上がるのと並行して液状の鉄で床を滑るような形で少しでも前に進む。


「動きが気持ち悪い」


リベルタは彼方にいるはずなのに声は変わらず響いた。

答える意味はなかったからそのまま進んだ。

さっきの鉄。無論私は何もしていない。

だったらもう候補は一人しかいない。


「っ」


今度は足元にも注意を払ったから突き上がる鉄の棒に気づけた。

身体を逸らして避ける……ついでに掴む。

さっきの感覚を思い出せ。私のじゃなくても、鉄なら————


「無駄だよ」

「え、あっ」


声が聞こえた、と同時に掴んだ鉄は逆に私に巻きついて私の進行を止めてしまう。

どうして。


「それは私の。お前のじゃない。私のものを勝手に私物化するのは許さない」

「私の力を真似してるくせに」

「違う。真似してるのは私以外の全員」


振りほどこうとしても鉄はびくともしない。

斬る……私に常ちゃんほどの威力は瞬時には出せない、それにどうせ私の戦いも見ていたのだろうし斬りにくい構造にしてくるだろう。

……なら。


「ん」


意外そうな声が聞こえた。

私を拘束している鉄を左手の剣で断ち切った。

もちろん鉄製。ただし、赤く光を放つ剣。

形も硬さも操作できるなら温度だっていけるはずだ。実際できた。

次々と鉄が伸びて手足を拘束してくるけれど、その内側から真っ赤な鉄を出して振りほどく。

全身を赤熱させた鉄で包み、伸びてくる鉄を無視して突き進む。


「どんどん化け物じみてきてるけど、わかってる?」

「どうでもいい。化け物になって汐里が助けられるならそれで構わない」

「……妄信的。そろそろ呆れてきた」


まだ汐里は遠い。それにまた距離を離されるかもしれない。

それでも動きを止める理由にはならない。

そして予想通り伸びてくる鉄が真っ赤なものに変わった。当然そうなる。

なら逆。自分を纏う鉄が一瞬で冷え固まる。

どのくらいまで?それはわからない。

だけど高熱の鉄から身を守るのに充分な温度なのは確か。


「ああすればこうする」

「お互い似たようなものでしょう?同じ力を使ってるのだから」

「そう。なら、これはどう」


その言葉を聞いた直後。

視界が光に飲まれた。




————————————。




「正直なところ、こうやってまともに出てくるのには結構抵抗があったんだ。だって僕そうぽんぽん出てくるような存在じゃないし?いや言葉を発するのは楽しいさ僕の数少ない趣味ゆえに。しかし心置きなく喋れる場所というものは存在してね、独り言を発するにしても大衆の前で高らかに戯言を唄うのと誰か個人の前でどうでもいい話を延々と垂れ流すのでは全く気楽さとか気恥ずかしさとかが異なるだろう?ここはどちらかというと大衆寄りな状況なのでできれば爆誕することもなく静かにけらけら笑っていたかったもの……だったけど、おつかいを頼まれちゃったしね、その場合は全てにおいて頼みごとが優先ってわけさ。……あー、誰かわからない?」

狐「ほれ、これでどう?これでもわからないなら忘れてるやつだね、話数が書いてないお片づけとか、十1話とかを読み返すといい。そこらに一応いるから。変わらずこんな調子だしあまり印象には残らないだろうが僕はつまりはそういうやつなのさ、大体本編だって「」こそ付いていないもののほとんど一人語りみたいなものだろう?ここまで物好きなことに継続して読んでいる誰かならこの程度造作でもないはず。と、そんな話をしにきたわけでもなく、更に言うならそもそも話しに来たわけでもなくってね」


青い誰かは砂浜のような所に立っていた。

背景には何もなく、何もないから認識が不可能。

見えるものがあるとすれば少し遠くにぽつんと立っている城のような建造物。

それと、砂浜の中で何故か半径何メートルか砂が取り去られた箇所、その中心に赤色にまみれながら倒れている女性。


狐「なんというかまぁ、ようやったものだねこりゃ。果たしてこの人間を凡人と讃えるべきなのか、狂人と讃えるべきなのか。凡人のままで狂人の真似事をやってのけたのか、凡人が狂人の域へ達することができたのか。どちらの方が良いかね」


刀の鞘部分で頭をこつこつ叩く。

微動だにしない。


狐「しかしやっぱりここは凡人として讃えるべきかもね。この通り、行動不能だ。完全にシャットダウン。こんなになるまで頑張る必要はなかった気もするね、もっと賢いやり方もあったかもしれない。……適当言ってるからね?答えを求められても困るからね?しかし最悪ではないにしろ、目的達成の上では最悪の結果じゃないかなこれは。ここまでやった上でD評価とか人の心が無いとか言われそうなものだが、実際僕もあんまりと思うが、状況だけ見ると数量的にはそうせざるを得ないな。最低限の消費で最大の結果、それが最高の評価の取り方だし。ああなんと無慈悲な事か。だが、現実においては目的を達成できない事が最大の低評価。その点で言うならやはりこの輝きの人は紛れもなく勝者だ」


次に、横から身体の下に鞘を差し込み、ひょいと裏返す。


狐「oh、れあ」


青い誰かからはそんな感想が漏れた。


狐「うぇるだんまで行ったらまー脳まで到達しちゃうしね。これはここまでよく頑張ったと讃えてあげるべきものだね。アドレナリンでも出てた?こっちでもホルモン系は作用するものなんだろうか?とかは愚問。実際のところそこらは考えなくていいんだ。……じゃなくて、そう、まず問題はここだ。どうしようかこれ。この勲章とも言える有様、弄っていいものか。そう考え始める僕である」


そう言いつつも、目の前で女性は勝手に顔を取り戻していく。

逆再生でもしてるみたいに。傷も、汚れも、消えていく。


狐「ま、僕が出てきた時点で色んなものは台無しになる。今更だね。むしろ台無しにしにきてると言っても過言ではない。誰かの死をなかったことにしよう。尊い犠牲も消去しよう。死なない方がいいに決まってんだろアホウドリか。物語の味が薄くなる?上等だ味の良し悪しで誰かの生をどうこうされてたまるかってんだ。……じゃなくて、そう、今度はなんだっけ?そもそも僕は何をしにきたんだったか?一人で久しぶりに喋りすぎて記憶が不明瞭に。ここはちょいと状況を再確認しよう」


周囲はやはり、この女性……からたち実房みおを中心として砂が取り去られていた。


狐「あんな方法で力を得るとはね。ああ、そう。リベルタだったか?この人らが不明晰夢と呼んでるあの空間も、そして今のこの空間も、リベルタが能力により作ったものだ。えーと、夢力?安直すぎる名前だが、ともかく。鉄も光もそれを構成してるのは夢力。同じように、この空間にあるもの全てを構成しているものもまた夢力だ。あの城も、この地面も、そしてこの砂も」

狐「そのままなら咳き込んだだろうけど、血が混じったから食べやすくなったのかね。あれは死にかけの精神がさせた行動なのだろうか、どんな理論を以ってあの行動に至ったのか。それは本人の知らぬ部分しか知らないことだ。……そもそも、夢力で構成されている砂を食べた所で自分の力として使えるのか、って疑問があったりするかい?それに関しては説明が割と簡単だ」

狐「できるかとかじゃない。この世界において、できるかどうかは自分で決めるし、自分で決められるんだ。もしできてしまったのなら、それはもうできるという事になる。本来なら無理なことでもできてしまったのなら、それもまたできるという事になる。そうさ、ここは普通じゃない。この空間の話じゃないぞ?この世界において、って僕は確かに言った」


しゃがみこんで実房を覗き込む。


狐「ともかく能力に必要な力はそうやって回収したらしいね。後半そのまま吸い込んでたけどよくもまぁ咳き込まなかったものだ。……というかまだ起きないのかい枳実房よ。そろそろ僕の独り言も2300文字くらいに達しそうなのだけど、僕はまだまだ喋れるがそろそろこれを見ている方も辛いんじゃないか?というわけでほれ起きなさいな」


実房の頰を鞘がぐにぐにと変形させる。

それをしばらく続けたのち、少しだけ実房に動きがあった。


「——————……………」

狐「お、動いた。おはようはまだ言わないがとりあえずお目覚めだね」

「………………わたし……」

狐「おはようのちゅーはいるかい?」

「…………常ちゃんの…関係者さん?」

狐「それで判断するかいお前さんは。しかしいい線いってるね、それで構わない。そしてお前さんが目覚めた事でもう僕のおつかいは終了なんだが、はてさてと。まだ身体は動かないな?」

「…………。……そう、みたい」

狐「光は?」

「出せそう」

狐「よろしかろう。照準は僕が合わせるから、合図を出したら適当に撃ってくださいな。ああ、威力はほどほどに。あと黒じゃなくていい、普通に眩しい細めの直線で頼む」

「……なんの為に?」

狐「何のためにもならない。だが僕の趣味。ここで一つ話しておくが、僕のすること為すことには何の意味もない。僕がいてもいなくても結果は変わらない、そういう風に僕は動いている」


まだ動けない実房の腕を鞘で斜め上に持ち上げる。


狐「だから僕が来たことでお前さんの結果は何も変わらない。これからする事で何か結果が変わるわけでもない。僕が来なくたってお前さんはそのうち自力で起き上がるだろうよ」

狐「が、僕は面倒なのが結構嫌いでね。ゲームで言うならする必要のない遠回り意味のないイベント挿入その他のかさ増し要素が嫌い。そこでなにも得られないなら意味はない、カットしたって問題ない。というわけでだ」

狐「はいどうぞ、撃って」

「っ……」


伸ばされた人差し指から、指と同じくらいの太さの光線がまっすぐ放たれた。

それは減衰することなく伸びて伸びて、城のような建造物を一応は貫いた。


狐「はいもういいよ」

「……ふぅ……。……でも、なにも変わらない…のよね」

狐「そうさ、結果はなにも変わらない。だが、結果に至る過程は省略された」

「……え?」

狐「もうそろそろお前さんはまた意識を失う。起きたら何にも覚えちゃいない。けれどまぁ教えると、要はショートカットだよ。さっきも言った通り、その過程に意味がないなら省略したって問題はないだろう?」

「…………あなたは……」

狐「名乗る名前なんて無い。名乗ったところで忘れる。だからでもなく僕のことは覚える必要は一切無い。ロスタイムもそろそろおしまいだ、適当にまた眠りなさいな」


こん。

軽く額を鞘で叩かれて、実房は一瞬で意識を失った。


狐「これもショートカット、ってね。……さて、もう僕のパートも終わりでいいでしょ。んー、それなりに喋ったなぁ」


青い誰かはその場からゆらりくらりと立ち去っていった。

足跡も残さずに。




————————————。




「っ…………!なに……!?」


その声で理解した。この光はリベルタのものじゃない、更にリベルタに害を与えるもの。

今、リベルタの視界は光によって閉ざされている。

それを理解した瞬間に私は自分を射出した。

私だってなにも見えやしないけれど、汐里の気配だけはずっとずっと感じている。


「!」


地面を蹴った音が伝わったのだろう。私が跳んだ事は察知された。

だけど視界が無いなら空中の私を捉えようがない。……本当にそうだろうか?

あれだけの能力を使えるのなら、私の位置を捉えるくらい……でも、それなら焦るような声が聞こえてきてるのは何故?

適当に答えを出す。


「どこっ」


この人は、想定外の出来事に弱い。

更に言うなら……戦いに慣れていない。

気配が近づく。光で見えないけれどもう1mほど先に汐里がいる。

このまま突っ込むのもできる。けれど相手の位置がわからない、だが襲いかかってくるのがわかっている場合どうするかは想像に難くない。

なら————



光が収まって視界が取り戻される。

リベルタは自分の周りに煙状の壁を展開していた。

身を守るのを優先する、当然だ。自分の位置はわかるのだから。

そして視界が戻ったのを確認した瞬間、辺りを見回す。

だけど誰もいないのを理解して怪訝そうな顔をした、それを見て私はわざとらしく音を立てて、天井を蹴った。ばごん。


「っ!?」


顔を上げたリベルタの視界ではまっすぐ自分に向けられた刃物が迫ってきているはず。

今までずっとここに籠っていたのなら、戦いの場は見ていても実際に戦ったことはないはず。

そこを突く。

リベルタは……思わず顔を背けた。煙の壁が厚くなる。

あの防御は絶対なんだろうね。貫くことはできない。


「っ…………!…………?」


だから、触らない。

足裏から伸びた鉄が天井に食い込み、私を空中で静止させる。

それに気がついたリベルタは私をまた見上げて、


「あっ?」


自分の身体が揺れたのを感じて、視線を落とす。

胸を鉄の杭が貫いているのを視界に収めた。


「床、から——がっごげっ」


喉とか頭とかを貫く。

壁が消えたのを見て私は落下。駄目押しに顔を剣で突き刺した。


「……とった」


剣を引き抜いて、リベルタの足元から出した鉄も消す。

私は囮。視線を集中させて、蹴ると同時に床へ伸ばした鉄に気づかせないための囮。

そしてやはりというか、床の中にまでは煙の壁は存在してなかった。

ドーム状の壁なら、下から攻撃すれば通る。

完全な球状の壁じゃない、なんて保証はなかったけれど……直感。

今理由を考えるとすれば、下からの攻撃なんか経験がないから警戒もしていないとか、あとは床は安全って認識があるからそこまで壁を広げる発想に至らなかったとか、そういうのは考えられるけど。

なんにせよ、詰めが甘かったんだ。

穴が空いたリベルタは、血も流さずにそのまま常ちゃんのように煙になって消えていった。

それを確認したらもう興味はない。すぐそばのベッドへ駆け寄る。

そこには確かに汐里がいた。目を瞑って、規則的な息を立てて……眠っている。


「汐里」


肩を揺らす。頰も叩く。


「汐里、汐里っ」


でも起きない。ここまで起きないものなの?

多少身じろぎくらいはするはず。なのに。


「起きないよ」


振り向くと同時に首を狙って剣を振るった。

だけど刃は肉を捉えることなく、リベルタの身体を煙を斬るように通過した。

殺したはずのリベルタは当然のようにそこに立っていた。

立っていた、けれど。


「…………?」


ぼやけた顔は、今度ははっきりと見えた。


「本当に野蛮。……本当に本当に本当に、酷い人。殺される経験なんてしたくなかったのに」


その声も、今度ははっきり聞こえる。

……知ってる。


「睦月汐里はもう目覚めないよ。起きる機能を剥奪したのだから」

「……じゃあ、あなたを殺せば元に戻るの?」

「戻らない。第一、私は死なない」

「そう、みたいだね。死んだと思ってたのに……」


汐里を守るように手で庇いつつ、目の前の人間・・を睨みつける。


「……なんで生きてるの?浅野あさの日頼ひより

「その名前で呼ぶな。私のことを呼ぶのならリベルタにして」




………………………………。


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