第249話 新エルバンテ領
祭りから1週間後、来年エルバンテ公が引退することが正式に発表された。
それと、エルバンテ領でもキバヤシ領と同じく、議会制を導入する事も発表された。
だが、発表はエルバンテ領だけではなかった。キバヤシ領でも発表があった。
来年、キバヤシ領はエルバンテ領となり、公都は現在のエルバンテ公都とすることが発表された。
領主はキバヤシ・シンヤとなる事も発表された。
また、国王陛下に挨拶に行かないといけない。
鉄道も急いで建設されているが、さすがに後1年で王都まで建設するのは無理だ。
王都に行くのはキチン車になるだろう。
しかし、この発表で慌てたのは貴族たちだ。
キバヤシ領の貴族の事は伝わっている。
ここは何としても、1年後に実施される試験に合格しなければならない。
そうなると学習塾が林立した。
俺もキバヤシ領の時と同じように、学習塾を開く。
なんたって、領主自ら経営する学習塾だから、生徒が押し寄せることになったのはキバヤシと同じだ。
だが、違っていた事が一つあった。他領からの生徒も押し寄せたのだ。
聞けば、他領では生まれた時でその後の人生が決まってしまう。
ところが、エルバンテだと、試験の出来次第で、国の中枢にも携わる事ができる。
野望を持った人間が、沢山押し寄せた。
特に村で優秀だとか、天才だとか言われていた人間たちが、ここに来て自分より更に優秀な人間を目にし、落ち込む者もいる。
しかし、他領からここに来ているということは、その家の将来を任されている訳だから、おいそれと帰る訳にはいかない。皆、必死で勉強している。
中にはマーキャブ村のように何もない村から、それこそ村の将来を任されて来ている者もいる。
反して、高位貴族の息子は必死さがない。
試験に受からなかったとしても、今の領土で生産される穀物を販売することで、生活に困る事はない。
だが、試験に受かった者が法律を作るのだ。いつまでもそのような生活が続けられるほど、優秀な彼らが何もしないだろうか。
徐々に領地を手放し、最後は家が無くなるだろう。
それを阻止するためには、自分が官僚になるか議員になるかしかない。
エルバンテの貴族たちは、どちらを選択するのだろう。
そんな事があって1年経った。
試験により官僚となった者は、エルバンテとトウキョーの間に作られた政治用の街で業務の開始に向け準備中だ。
そして、議院の選挙も既に日程が決まっている。
キバヤシ領側もエルバンテ側に合わせて選挙を行う。
そして、エルバンテ領でもキバヤシ領と同じで、試験に受からなかった貴族は選挙に掛けている。
だが、貴族の子供は危機感がなく、親に言われて嫌々やっているので、支持も上がらない。
貴族で頑張っているのは、やはり男爵家とかの身分の低い貴族の次男、三男だ。
男爵家の次男、三男は試験でも多数合格していた。
エミールは先のキバヤシ領の事を知っているので、キバヤシ領の法令から学んでいた。その結果、エミールはかなり良い成績で合格したとの事だった。
政治を行う街もどんどん出来ている。
街の名を決めてくれというので、領土の中心を表す「セントラルシティ」とした。
セントラルシティには議事場も建設されている。
そして、エルバンテ公引退の日が来た。
セントラルシティの議事場に選挙で選ばれた議員や官僚、司法員が集合し、引退の式典を見守る。
そして、引退式の後は新領主の就任式と続く。
進行は議長が努め、エルバンテ公が領主退任の言葉を述べて退任式は終わった。
次にエルバンテ公の居たところに出て来たのは俺だ。
議長が新領主を務める意志の確認を行い、エルバンテ公から領主の証である剣と盾と旗を渡される。
これにより、俺は正式なエルバンテ領主となった。
領主の交代式が終わったことで、次に新しい国の宰相を決める。
宰相へ立候補できるのは、議員の推薦人20人を確保できた者だ。
立候補者は3人居た。一人は実績のあるヤーブフォンだ。
キバヤシ領ほぼ全ての議員が推薦した事もあって、50人以上の推薦人が集まっている。
議員による投票の結果、やはりヤーブフォンが新しいエルバンテ領の初代宰相に決まった。
ヤーブフォンはキバヤシでの実績もあり、無難に努めてくれるだろう。
そして、宰相が決まれば、次は大臣の任命になる。
キバヤシ領の時と同様、ヤーブフォンは自分に投票してくれた議員の中から大臣を選ぶ事になるが、キバヤシ領で大臣をやってきた者の方が実績もあるので、任命するのは簡単だが、それだと、旧エルバンテ領側の課題が分からないので、片手落ちになる。それを指摘もされるだろう。
なので、ここは半々で任命しなければならない。
旧エルバンテ領を知らないヤーブフォンとしては、なかなか難題だ。
だが、ヤーブフォンは2週間ほどで、大臣を決め、俺のところに名簿を持ってきた。急遽議会を招集し、大臣の任命を行う。
俺の知った大臣はいなかったが、ラピスは公女らしく、何々家と聞いただけで、領地が分かるようだ。
領地の政はヤーブフォンに任せる事で、俺は商売の方に傾注できる。
それと、サン・イルミド川を上り、北の国へ行くのもいいのかもしれない。
北の国では苦しめられた人が多いのに、何故南へ逃げて来ないのか疑問がある。
その理由も分かるかもしれない。
そんな時、俺のところへモン・ハン領からの使者が来た。
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