第223話 現状報告

 トウキョーに帰った俺は2日ほど自宅で休養していたというより、嫁たちの求めに応じていたが、3日目にキバヤシコーポレーション本社のあるショッピングセンターに顔を出していた。

 そこで、グループ企業全体の報告を受ける。

 報告者は、ガルンハルトだ。

「まず中核のキバヤシ販売の方ですが、売り上げは上りもせず、かといって下がりもせず一定のまま推移しています。

 それと、キバヤシ領にあるアララさんの店が正式にキバヤシコーポレーション配下に加わり、アララさんはキバヤシ領内の各地にも販売店を展開するとの事です。

 王国にあるファンレイ店ですが、王国の中心通りに店を出す事ができました。

 しかし、これにはキバヤシコーポレーションから多大な費用が出ておりますので、今後はこの費用回収にかなりの月日が必要かと思います」

「新店舗については、今後の様子を見る必要があるな。その他の領地についてもどしどし店舗を開店できるよう、計画を練ってくれ。

 それと、本拠地の売り上げが伸びないのは新製品の開発がないからではないか?

 研究所や現場と相談して新製品の開発を行うように。

 それと、ショッピングセンターでやっている飲食店だが、個別店舗として、街の方にも造っていきたいと考えている。

 あと、スーパーの小型版のコンビニという店舗も展開したい。

 これについては、後で社長とも相談したい」

 俺が意見を述べた後、引き続いてガルンハルトが報告する。

「キバヤシロジテックは海運、陸運とも好調です。貨物、旅客とも年々売り上げが伸びていますので、現状は問題ないかと思います」

「キバヤシロジテックは道の整備と造船の技術がなくてはならない。キバヤシ建設とキバヤシ造船には今後大量の仕事が舞い込む事になると思うが、頑張って貰いたい」

「そのキバヤシ建設ですが、需要が多く、あちこちで仕事が来ています。正直労働力が足りていませんが、難民として流れ着いた獣人を割り当てることで、しばらくは対応できそうです」

「難民の具合は?」

「キバヤシ領やエルバンテ領の事が徐々に王国内に広まっており、奴隷を解放された獣人の難民が避難してきています。受け入れ態勢は整っており、今のところは問題ありません」

「次にキバヤシ銀行についてですが、キバヤシ販売と一緒に支店を出しており、こちらも順調です。

 キバヤシ不動産も問題はありません。キバヤシ不動産はホテルや旅館の運営に加え、他領地で貸しビル経営も始めました。あと、サン・イルミド川下流にあるパーシェリにリゾート地を建設中です」

 そこまで話し、ガルンハルトが他の役員を見回して報告内容に齟齬がないか確認する。

「次に新規事業関係ですが、キバヤシ鉄道は会社を立ち上げました。現在、鉄路の建設に着手しています。

 キバヤシ水道は地下水の汲み上げ用の風車は既に30基を越えました。水車の方はトウキョーに親柱2本を立てました。来週建柱式を行う予定ですので、会長は出席でよろしいでしょうか?」

「ああ、いいとも。しかし…」

「会長、何でしょうか?」

「あっ、いや、俺には秘書がいないのかと思って…。スケジュールの管理は普通秘書がやってくれるだろう。みんなには居るのか?」

 全員が首を縦に振っている。どうやら秘書が居ないのは俺だけだったようだ。

「会長の場合、秘書を募集すると大変な事になりますので……。それと奥さまたちの賛同も必要かと……」

 嫁たちを見るが、全員が目を逸らした。

「仕事に不便だろうから、秘書は雇う事にしよう。嫁たちについては、俺の方から話をしよう」

「では、会長のご指示のままに」

 その後も、報告が続くが概ね問題となる事はなかった。

「あと、プロギスの領主から支店開設の要望が来ている。誰か折衝役をプロギスに派遣してくれないか?」

「分かりました。折衝役については人選します」

「先ほどキバヤシ鉄道については、簡単な説明だったが、もう少し詳しく説明を頼む」

「まず、鉄路の建設については、公都とここトウキョーを結ぶ複線を建設中です。建設完成予定は半年後になります。

 鉄道の方については、蒸気機関車を10輌建造中です。客車は50輌建造しています。

 それ以外にも駅舎、操作場の建設を行っています」

「運開は半年後ぐらいと考えていいか?」

「問題ありません。公都との建設が終わり次第、ヨコハマ領、ショウナン領へも建設する予定です」

「分かりました。キバヤシ領にも建設し、モン・ハン領を抜けて王都へ至る鉄路の建設も行って欲しい」

 キバヤシ建設社長のアーネストさんが、びっくりしている。

「会長、鉄道はエルバンテ領内だけではないのですか?」

「鉄路を王国全体に広げたいと思っている。そうすると物流や人の交流が進み、国が発展する」

「会長は、エルバンテだけでなく王国全体の事を考えておられたのですね」

「そんな大層なもんじゃない。王国全体の交流が活発化すれば、キバヤシコーポレーションの事業も拡大できるってもんだ」

 次の報告に移るように議題を振る。

「後は学院の方はどうだ」

「学院は生徒の入学を無試験にし、その代わりに導入した進級制度により、一部の生徒は留年する者も居るようです。

 しかし、無試験のため、学生の数は溢れ返っています。

 また、他領に建設しました学院も同様のようです。ただ、大学部については、試験に合格しないと進級できないため、進級希望の生徒はがんばっています。今年、大学部1年生が入学しました」

「あと、アセンはどうしている?」

「チェルシー長官に聞いているところでは、地下牢で大人しくしているそうです。それが何か?」

「今回の旅で、アセンの家族を連れて来たんだが、合わせて良いものかどうか悩んでいる。彼の嫁自体はなかなか良い人なんだが……」

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