第219話 新しい仲間

 救出した人質たちと話をするが、全員がキバヤシ領もしくはエルバンテ領へ行く事を希望した。

 獣人の中には奴隷の首輪を付けた者も居たので、エリスが奴隷解除の魔法で首輪を外す。

 しかし、100人を超える人が居ると問題となるのが食料である。

 兵士の駐屯地を脱出する際に蓄えてあった食料を貰って来たが、キチン車1輌分あっても直ぐになくなってしまう。

 それに100人分の料理をするのはなかなか大変だ。

 スラム街で炊き出しをしていたエミリアさんの苦労が、今更ながら大変だという事が分かる。

「食料もそうだが、炊き出しができる人も必要だな」

 炊き出しは人質だった女性陣が手伝ってくれるが、それでも大量に作るとなると不得手な部分が多い。

「それなら、食料調達に合わせて、エミリアさんにお願いしてくるわ」

 エリスがそう言うと、転移魔法で転移していった。

 しばらくすると、カイモノブクロに食料を詰め込んだエリスと、久々に見るエミリアさんが転移して来た。

 早速、エミリアさんが指示を出して炊き出しが始まり、出来上がった料理を俺たちも一緒に食べる。

 ここでもエリスは子供たちに人気だ。

 エリスの周りにはいつも子供たちが来る。

 対して、ミュの周辺には子供たちは来ない。

「いいんです。私にはご主人さまが居ます」

 そんなミュをラピスが慰めている。

 そんな俺たちのところへ、一組の家族が尋ねてきた。

 黒い鳥人の母親と娘だ。

「あ、あの、キバヤシさま。私はアセンの妻の『ミストラル』といいます。これは娘の『ウェンテイ』です。

 夫の事で、いろいろとお聞きしたい事があります。まず、夫が人を殺したというのは本当でしょうか?」

「本当です。俺も現場に居ました。

 アセンはここに居るミュと戦い、右腕を失くしました」

「ああっ」

 アセンの妻と言うミストラルが、顔を覆って泣き出した。

「そ、それで、夫は何故そのような事に……」

 俺は、イルミティバ沖であった事を話した。

「話して頂き、ありがとうございます。夫は私たちのために言う事を聞かざるを得なかったのでしょう。

 ですが、人を殺したのも事実。私たちは相手の方々にお詫びに行きたいと思います」

「相手の方は熊人の獣人です。奥さんに幼い娘さんと年老いたお母さんが居ます」

 それを聞いた、ミストラルは、また顔を覆って泣いた。

「失礼ですが、ミストラルさんは空を飛べますか?」

「はい、娘はまだですが、私は飛べます」

「それでは、お願いがあります。この隊列の行く先を先行して、調べて頂けないですか?」

「それぐらいであれば簡単です。敵対する者が居るかどうかを調べれば良いのですよね?」

「そうです。ワンレイン領は未知の領地です。我々に友好的なのか敵対しているのかも分からない。

 それと出来れば、食料を調達できる街があれば食料も仕入れたい」

 娘のウェンティは、エリスが預かる事にして、ミストラルは空へ飛び上がった。

 1時間ほどして、帰ってきた内容では、この先しばらくは街はなかったそうだ。

 しかし、湖があったとのことだったので、今夜はそこで野宿になるだろう。

 キチン車で進むこと、約1時間ぐらいだろうか、報告どおりに湖があった。

 かなり、大きな湖だ。ほとんど海といってもいい。

「『ラフランテ湖』だ」

 新しく仲間に加わった5人のうちの一人が言う。

 そう言えば、あいつらの名前を聞いてなかったっけ。

「エリス、新しく仲間になったやつらって何という名前だったっけ?」

「えっーと???そう言えば聞いてなかったっけ。ラピスとミュは?」

 二人とも頭を振った。

 こういうのは、アリストテレスさんに聞いてみる。

「おい、ちょっと来てくれ」

 アリストテレスさんが、5人を集める。

「お館さまが、あなたたちの名前を聞いてなかったと言うので、教えてやって欲しい」

 いや、アレストテレスさん、それはちょっと直球過ぎるよ。

 5人は顔を見合わせていたが、

「これは、失礼しました。私が5人のリーダーを努めます、マシュードといいます」

 中肉中背で頭に白髪が生え始めた男が言った。たしかに一番の年長者のようだ。

「私はネルジットです」

 一番の長身の男が言う。見た目180cmは超えているように見える。

「私はアムルです」

 この男は頭が禿げており、中年太りしている。

「シノンです」

 この男は30代になっているだろうか。

「ハイドラです。この前結婚したばかりです」

 一番若い男が言う。

「もう一人紹介させて下さい。これは私の息子で『アシュク』といいます」

「アシュクはいくつだ」

「はい、18歳になりました。お館さまの事は父から聞きました。よろしければ私もお供に加えて下さい」

「アシュク、君は読み書きはできるか?」

「はい、父が軍隊だったので、読み書き、計算と剣術はできます」

 見ると腰に剣を下げている。

「その剣は?」

「駐屯地で兵士の物を持って来ました」

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