第204話 仇討ち
「それでは2番目の方法で行きたいが、協力してくれるかな?」
「わ、分かった。協力しよう」
男共5人が頷いた。
「この船には、ミスティとホーゲンを残そう。舵が破壊されているので、ヤマトで近くまで行って、そこからはマリンに頼もう」
ホーゲン、ミスティ、マリンに作戦を授ける。
そして、俺たちは、ザンクマン将軍の宿に転移し、詳細を話す。
将軍は、オイキミル副将軍に指示を出した。
オイキミル副将軍の下、キバヤシ軍が動く。
俺たちは軍と一緒に倉庫街に行き、倉庫の中に隠れる。
翌朝、明るくなった頃、マリンちゃんに押された船が港に入ってきた。
マリンちゃんが船を接岸されると、男共が船から降りてくる。
この男共には裏切り防止のために、接岸の前にミスティが幻覚の魔法をかけてあったが、降りた瞬間にミスティが魔法を解除する。
桟橋にはゼイル将軍と、高貴な恰好をした兵士たちが来ている。
「ご苦労だった。それで、例の物は手に入ったか?」
「アセンが失敗しました。結局、手に入れる事はできませんでした」
「そうか、では死をもって償って貰おう」
ゼイル将軍が剣を抜いた。
「将軍、あなたは最初から我々を殺すつもりだったんですか?」
「証拠は残さない。それだけだ」
男共も剣を抜いたが、相手は20人ぐらい居る。
ゼイル将軍と男共が向かい合う。
その時、ゼイル将軍と男共の間に割って入った者が居る。ミュだ。
ミュは、オリハルコンの剣を抜いて身構えている。
ゼイル将軍が左手を前に出した。
「フォイヤーボール」
拳大の火の球がミュ目がけて飛んでいくが、ミュはそれを剣で弾いた。
弾かれたファイヤーボールがゼイル将軍配下の男に当たると、男が火達磨になり、炭のようになって崩れ落ちる。
「ほう、その剣も特殊な剣のようだな。それも私が使ってやろう。こっちに寄越せば悪いようにはしないぞ」
「ミュ、渡してやれ」
「ほう、なかなか利口ではないか」
ミュが、ゼイル将軍に向けて剣を投げた。
ゼイル将軍が左手で投げられた剣を掴んだが、掴むと同時に左手が蒸発していく。
「ぎゃー」
剣が地面に落ちた。
その場に居る全員が驚いている間にミュが走り、落ちたオリハルコンの剣を掴み、ゼイル将軍の腹部を横一直線に斬った。
上半身と下半身が別々になったゼイル将軍をミュが上から見下ろす。
「た、助けてくれ…」
ミュは無言で剣を頭部に突き刺すと、頭部が蒸発して無くなった。
「「「ひ、ひぃー」」」
その時だ。倉庫の中からゼイル軍の幹部とその配下と思われる兵士が100名程出てきた。
「よくも将軍を殺してくれたな。その命で償って貰うぞ」
仕掛けて来たのは、そっちなのに勝手な言い草だ。
「ミュ、生を吸って老人にしてやれ」
「グローバルエクトプラズム」
120人程の兵士から生が白い霞となってミュの手に吸われていき、兵士たちは老人となった。
既に立っている事も覚束ない。
「な、何をした?」
「お前たちの生を吸った。お前たちの命はあと1,2年だ。さっさと国に帰って、墓でも用意しておくんだな」
狼狽えている兵士たちに、俺が言う。
「な、何だと!」
一人の老人が斬りかかってきた。
ミュがその剣にオリハルコンの剣を合わせた瞬間、剣が蒸発する。
「ひ、ひっー」
斬りかかった老人兵士が、後ろへ下がる。
その老人兵士を囲むように、キバヤシ軍が周囲を取り囲む。
「見ての通り、お前たちは既に囲まれている。このまま帰るか、それともキバヤシ軍と一戦するか、どっちにするか決めろ」
「……」
「どうするんだ?」
「わ、分かった。言う通りにする。その前に、元に戻してくれないか」
「残念だが、元には戻せない。残された命を有効に活用してくれ」
俺の言葉を聞いた老人兵士たちが、その場に崩れ落ちた。
しばらくそうしていたが、立ち上がるとお互いを庇い合いながら、この場から出て行った。
ヴェルサルジュ兵たちがいなくなると、ザンクマン将軍が近づいて来た。
「ご領主さま、これでよろしいのですか?いっそ、成敗した方が…」
「いや、これでいい。帰った兵士たちの姿を見てヴェルサルジュ領主は、どう思うだろう」
「先のツェンバレン、ハルロイド、そして今回のこの老人たちを見たヴェルサルジュ領主は、キバヤシに手を出そうとは思わないでしょうな」
「ザンクマン将軍、お手伝い、ありがとうございました。それでは今度こそ、お別れです」
「ご領主さま、それではご無事に」
エリスの転移魔法で俺たちはヤマトに帰ってきた。
ヤマトでは既に一足先に帰ったマリンちゃんが出迎えてくれた。
「セルゲイさん、亡くなったクアイテッドさんの亡骸を遺族に送りたい。手伝ってくれないか?」
「分かりました。会長のご指示の通りに」
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