第184話 姉妹

 最近、ポールが変わって来たような気がする。

 昔は濃い茶色の肌と毛をしていたが、最近色が薄くなったようだ。

 その事を嫁たちに言うと、

「うーん、たしかにそんな気がするわ」

 エリスが答えた。

「サリーちゃんはどう思う?」

「たしかに私もそう思います。ポールは熊人なので、茶色が普通だと思っていたのですが……」

「ポール、何かあったか?」

「いえ、特に変わった事は何も…、ただ、たしかに昔に比べると自分でもそうかなと思います」

 ホーゲンは獅子人であり、髪がブロンドなので、ゴールドに見える。

 一方、ウォルフは、銀狼の血があるので髪はシルバーだ。

 この2人が並んで歩くと、金と銀が並んでいるようで、その姿は街の名物にもなっており、歩くと人が道を開けるほどだ。

 反対に寄って来るのは女子だけだ。

 その点、ポールは髪は茶色であり、目立たなかったが、色が抜けてブロンズになって来た。

 3人でいると、金、銀、銅になっている。

「私が鑑定してみるわ、いいかしら」

 ポールがokを出したので、エリスが鑑定してみる。

「……、分かったけど…」

「なんだ、エリス、分かったけど、それは言い辛い事なのか?」

「エリス姉さん、大丈夫です。今更、何を聞かされても僕は僕ですから」

「そう、じゃ、鑑定の結果だけど、ポール、あなたは熊人は熊人でも白熊人なのよ。この地ではめったにいないわ。はるか北の方に住んでいると聞いた事があるだけ。

 この先、あなたは白くなっていくわ」

「……」

 ポールは黙っている。

「サリーちゃん!」

 話かけられたサリーちゃんは、おどおどしている。

「サリー姉さん、言ってください。僕はどこで拾われたのですか?」

「あなたとミスティはサン・イルミド川の川岸に流れ着いていたの。

 その日、川に魚を取りに行った時に、小さな船に乗せられて岸にたどり着いた船があって、あなたは乗っていたわ。

 直ぐに連れて帰って、近くの農家から山羊の乳を貰って育てたわ。

 ミスティも同じ、二人とも同じような船に乗っていたので、たぶん同じ国から流されたのだと思う。

 エルバンテでは見ない船だったわ」

「ラピス、王国より北にある国は何ていう国なんだ?」

「分からないわ。王国より北に国がある事すら知られていないの」

「とにかく、王国の北には国なのかどうかは分からないが、人が住んでいるという事だけは確かなようだ」

「ウーリカに聞いてみたら、どうかしら?」

「エリス、何故、ウーリカなんだ?」

「ウーリカが捕まった時に、ここより北より来たと言ってたじゃない。もしかして知っているかも」

「ウーリカは、シュバンカさんの護衛でちょうどトウキョーに来ているハズだ。早速、聞いてみよう」

 俺たちはシュバンカさんとウーリカの所にやって来た。

 セルゲイさんも居て、親子水入らずのところにお邪魔して悪いと思ったが、ポールに関する事なので2人とも快く迎えてくれた。

「ウーリカの居たという北の国の事を聞きたい。

 このポールは北の国から船に乗せられてやって来たそうなんだが、北の国とはどういったところだ?」

「一言で言うなら地獄だ。力のある者が力で支配する。法などはない。支配者が法だ。

 その支配者以外は全てが奴隷みたいなものだ。

 子供なんて、とても育てられない。生まれたら、船に乗せられて川に流されるのが半数ほど居る」

「つまり、ミスティとポールはその中の一人という訳か」

 ここには、ミスティも来ており、自分の過去を聞いている。

「ちょっと、ミスティ、それにウーリカ、貴方たちの毛を貰うわね。

 エキストラサーチ!」

 エリスが鑑定する。

「どうしたエリス、何か分かったのか?」

「二人のDNAを鑑定したわ。

 その結果、二人は同じ血を持つ両親から生まれた確率が、99%という事が分かったわ」

「何?今、何と言った?」

「二人の両親は一緒だと言ったのよ」

「つまり、二人は姉妹という事か?」

「そういう事になるわね」

 衝撃の事実に、ウーリカもミスティも固まっている。

「ウーリカが私のお姉さん……」

「……」

 ウーリカは何も言わない。

「いえ、嘘よ。私のお姉さんはサリー姉さんだけ、そうよ、それ以外お姉さんはいないわ」

 いきなりの事実に、サリーちゃんもどうしたらいいか、分からないようだ。

 ウーリカの方も固まったまま、何も言わずにただ立っている。

「ウーリカ、大丈夫か?」

「あ、ああ、私の妹だと言うのか?」

「お前は、俺の殺害容疑で掴まった時に、たしか妹が居たが、親に知らない間に捨てられたと言っていたな」

「ああ、確かにそう言った記憶がある」

 二人が姉妹という事が分かったが、二人ともいきなりの事実を受け入れられない。

 お互いを見ているが、その間には隙間がある。いきなり、ハグして感動のご対面なんて事はない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る