第154話 新体制

「エリス、ミュ、ラピス、俺は決めたぞ。俺はここにショッピングセンターを造るぞ」

 ショッピングセンターという聞きなれない言葉を聞いたミュとラピスは、顔に疑問符が浮いている。

 エリスだけは、俺の世界の事が分かるので、

「ショッピングセンター、いいかもしれないわ」

 と、言ってくれている。

 ショッピングセンターは街の入り口に造ることとした。

 そこで、ギルド証の発行や観光案内、観光場所の予約、宿の予約なども出来る他、食料品の販売、ミュ・キバヤシブランドの服や靴も販売する。

 つまり、ここに来れば全ての要望に応えることができる。

 更に小劇場とスパ、ホテルも完備する。

 公都とトウキョーを結ぶキチン車も必ずここに停車するようにし、公都とトウキョーの各地からも遊びに来れる。

 今は、トウキョーの街中を巡回するキチンバスも運行中だが、これらのバスもショッピングセンターには立ち寄るようにすれば、利便性も向上できるだろう。

 どんどん、街が出来ていくのを見るのは夢がある。

 それで、ショッピングセンターの建設要員だが、運河を造っている作業員を回す事にした。

 運河の建設が終われば、仕事がなくなると心配している労働者もいるとのことだったので、保守員を除いて建物の建設工事に携わって貰う。

 このショッピングセンターもかなりの広さにする。現代のテーマパークぐらいの広さにし、半分は屋根で覆うつもりだ。

 1号本店に役員を招集し、ショッピングセンター構想を説明する。

 だが、俺が先頭に立つと俺の意見が優先されるので、アールさん、ガルンハルトさんと最初に調整して、ガルンハルトさんがシッピングセンター構想を説明し、それ以外の役員が細部を確認していく。

「運河建設の労働者を回すのは良い案だと思います」

 まずはアーネストさんの同意を得た。

「キチン車の停車場をショッピングセンターに設置するのは問題ありませんぜ。ガハ」

 おっと、セルゲイさん、笑っちゃいけないと思って途中で止めたね。

「芸能関係に興味がある子もいるので、輝ける場があるといいかもしれません」

 エルザさんも賛成のようだ。

「そうなると、ショッピングセンターの店長とかはどうなるんですか?」

 カルフさんも、そこが気になるのだろうか。

 ガルンハルトさんが応える。

「ショッピングセンターはミュ・キバヤシ4号店になりますので、もちろん店長を据えます。

 しかし、店舗規模といいミュ・キバヤシ店の中で最大になりますので、店長の責務は大きいと言えます」

 そこまで言って、一回り見渡す。

「ここはミュ・キバヤシ最大の勝負どころになります。

 よって、本社をトウキョーのショッピングセンターに移します。

 これに伴い、カルフさんはショッピングセンター店長としてやって貰います」

 カルフさんはびっくりした顔で見ている。

 アールさんはあらかじめ知っているので、したり顔だ。

「それでは1号店はどうなるのでしょうか?」

「1号店はキバヤシロジテックとキバヤシ建設、そしてキバヤシ商事とキバヤシ不動産の本社とします」

「キバヤシ商事とキバヤシ不動産とは?」

「資源の探索と、その販売を行う会社がキバヤシ商事で、シンヤ・キバヤシ領の管理と税の収集を行うのをキバヤシ不動産として新しく立ち上げます。

 もちろん、キバヤシ不動産はトウキョーの住宅の販売や会社社宅の管理とかも行います」

 満を持して俺が発言する。

「キバヤシコーポレーションは、商品販売を行う『キバヤシ販売』、運輸部門の『キバヤシロジテック』、建設部門の『キバヤシ建設』、資源探査・販売の『キバヤシ商事』、不動産管理の『キバヤシ不動産』、金融の『キバヤシ銀行』の6部門を中核として立ち上げます。

 ただし、これ以外にも立ち上げるべく、検討している会社もあります」

 全員、黙って聞いている。

 キバヤシ販売の社長はアールさん、キバヤシロジテックの社長はセルゲイさん、キバヤシ建設の社長はアーネストさん、すると残りのキバヤシ商事とキバヤシ不動産の社長は誰だろうと誰でも思う。

「実はまだ本人に話していないので、何とも言えません。心当たりはあります。

 ただし、これはショッピングセンターが出来てからのことです。それまでは今の体制のままですし、将来的には変更もあり得ると思って下さい」

 そこまで言って、全員を見渡すが、納得した顔、戸惑っている顔、いろいろだ。

「あと、キバヤシコーポレーションも本社機能を強化します。会長は同じく私が努めますが、関連会社全てを網羅して企画、戦略を立てる部門を本社機能とします」

 その意味が分からないのか、全員が戸惑った顔をしている。

「つまり、関連会社に指示をする会社ができると言う事ですか?」

 アーネストさんも懸念しているのだろう。

「場合によっては指示します。会社が大きくなるとそれぞれの会社が個別に対応していく事は俺の考えと別な方向に進んで行く事もあります。

 それでは困るので、関連会社が全部同じ方向を向くようにしたいという事です」

「なるほど、主旨は分かりました。

 我々は会長に従ってここまで来ました。会長の向く方向が我々の道標と考えておりますので、会長のお考えのままに」


 新しい会社の形態が決まった。合わせて、細部も決めて行く。

 学院と研究所は本社直轄とする。そして、ガルンハルトさんは本社副社長となって貰う事になった。

「社長は会長が兼ねるのですか?」

「社長にはアリストテレスさんにお願いしようと考えています」

「なんと、彼にですか?」

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