第127話 舞踏会
晩餐の準備が整うまで、国王陛下の私室にて歓談する事になった。
「シンヤ殿、いや、ご先祖さま、良くぞ来て下さった。改めて礼を言います」
「えっと、ご先祖さまと言うのは?」
「この王国は500年前の勇者が起こした王国というのは、ご存知かもしれませんが、勇者の名前は知っておられますでしょうか?」
そう言えば、勇者の名前は聞いた事がない。みんな勇者とだけ言うだけだ。
エミールやアリストテレスさんも首を横に振っている。
「勇者の名は『シンヤ・キバヤシ』と言うのです」
ええっー。俺か?
エリスを見ると頷いている。
「そして、その勇者を助けて戦った3人が、エリスさま、ミュさま、ラピスさまじゃ」
エリスがそれを引き継いで話した。
「前世の記憶は無いけど、私たちは転生人なの。実はアリストテレスさんやセルゲイさん、エミールやエミリーだってそうなのよ」
「エリス、俺たちは前世から関わり合う関係だったと言う事なのか」
「そうよ、シンヤさまだけが、前の女神のエリスさまの手違いで現代日本に転生してしまったので、この時代に連れ帰るために、ちょっとだけ苦労したけど」
お前たち女神エリスって、駄女神なんじゃねーのか。
「でも、安心して、次の転生先は現代日本にしておくから」
女神ってそんな事も出来るのか?
女神、パッねーす。
「そういう訳で、ご先祖さま、良くぞいらっしゃいました」
「しかし、なんで勇者の名前は秘密にされていたのですか?」
「遺言でございます。勇者の名は代々の国王のみが継承せよとの。逆に勇者の名を知りえたる事が国王の証です」
その事実を初めて知ったエルバンテ公も驚いている。
エルバンテ公だけではない。ここに居る全員が驚いている。
そこまで、話したところで、執事が晩餐会の開始を申し入れてきた。
「では、この話はここだけの秘密と言う事で」
その後、晩餐会になったが、さすが王宮、見た事もない料理が並んで、どれも美味だ。
だが、ホテルに戻った俺は、やる事がある。
「ラピス、ダンスを教えてくれ」
そう、明日は舞踏会なのだ。1日でどうにかなるとは思えないが、やらないよりマシだろう。
エルバンテ公にエミリーも加わり、舞踏会用の基礎となるダンスを教わるが、なかなかうまくいかない。
女性のドレスの裾を踏んでしまうなんて何度やった事か。
その度にラピスやエミリーそして、エリスまでもが、ジト目でにらんで来る。
「ふぇー、もう泣きたい」
「ご主人さま、元気をお出し下さい。
ダンスぐらい踊れなくてもどうにか生きていけます」
その通りだよ、ミュ。だけど、人生にはやらねばならない事がある。
その日は夜遅くまで、ダンスの練習をして、とりあえずどうにかなりそうなところまで来た後は、嫁とのお努めも果たさず、ベッドへGO and DOWNの状態だった。
翌朝、目が覚めたら、早速ダンスの練習だ。
まだ、足元を見る癖はあるが、とりあえずはどうにかなるようになってきた。
1日、ダンスの練習を行い、やっとと言うか、ついにというか舞踏会の時間になった。
昨日と同じように王宮へ上がる。
謁見の間がダンスフロアとなって、下手には楽団がおり、ダンス前の曲を弾いているが、現代のダンス音楽と同じような符帳だ。
俺たちが到着して間もなく、舞踏会が始まった。
取り敢えず、俺はラピスと踊る。その後、エリス、ミュと踊り休憩ということになった。
ここで、知らない人からダンスを申し込まれると要らない恥を晒す事になるので、身体の大きなセルゲイさんの後ろに隠れるようにしている。
しかし、王宮の女性や貴族の娘と見られる女性たちはエルハンドラにダンスの申し込みに行っている。
ラッキー、これは恥を晒さなくていいかも。なんて、思っていたら
「よろしかったら、踊って頂けませんか?」
美人だ。が、化粧をしている。はて、これはエルバンテ領の人だろうか?
俺が不思議そうな顔をしていると
「私が誰だか分かりますか?」
「いえ、どなたでしたっけ?」
「あなたの、だ・い・よ・ん・夫人」
その時だ。
「却下」
へっ、却下?
「エミリー、こんなところで何してるの」
エ、エミリーだって?
エミリーって、こんな美人だったか。化粧はしているが……。
「えへへ、今度新発売したコンシーラってやつを使ったんです。どうです?」
そんな物を開発していたのか。すごいぞ。
「エミリーの努力に免じて、1曲だけならいいわ」
ラピスがokを出した。
エミリーが俺の手を引いて、フロアに出ていく。
エミリーとは練習もしていたので、どうにか踊りきる事ができた。
しかし、次はラピスが俺の手を引いた。
「エミリーには負けません」
いや、負けてないよ。子供を産んでから、可愛さの中に色っぽさが出て来た俺の嫁。ラピスは今、とっても綺麗だ。
ラピスと踊り終わったら、今度はエリスが手を引いて来た。
「第4夫人なんてダメよ」
エリスは、どこでダンスを覚えたのだろうというぐらい上手だ。こちらがリードされているのが分かる。
それなのに、そんな素振りも見せない姿は本当に凄いと思う。
最後はミュとだ。ミュとは二人だけで、フロアの中心で踊ることになったが、なんだか注目されている感じで、照れくさい。
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