第77話 オープン

 3号店がオープンした。

 告知よりも3か月くらい遅れてのオープンだったので、オープン前の店の前にはお客さまで溢れかえっていた。

 ここでも、整理券を配って対処する。


 化粧品は2号店ではセット売りのみの販売だっだか、3号店オープンに合わせて、全てバラ売りとした。

 そして、化粧品では新しく投入した商品がある。肌クリームだ。

 化粧品は今まで2号店のみの販売だったが、3号店オープンに合わせ、全店で販売を開始した。


 3号店はカジュアル品の販売を目的としているので、ワンピースだけでなく、いわゆるツーピースも販売している。

 新しいと言えば、ミニスカートも販売し出した。

 こちらの女性は1年前までは、長いスカートしか穿かなかった保守的な人たちであるので、ミニスカートの販売は一種の賭けでもあった。

 だが、若い子たちを中心に売れていく。

 若くない女性にも売れている。どうも夜のお仕事関係者のようだ。

 暗いスナックの中だと、なんだか、美人に見えちゃう心理っていうのもあるしね。


 店の方は1号店から3号店まで開店し、当初の予定はクリアだ。

 だが、まだゴムが見つからないし、織機も開発できていない。

 魔物の森に行けば、何か新しい素材があるかもしれない。砂漠はどうだろう。一度素材探しの旅に出てみるのもいいかもしれない。

 鉄鉱石があるなら、ケイ素だってあるだろう。そうすればガラスが作れる。


 3号店がオープンして1週間ほどして、だいぶ落ち着いてきた頃だった。

 深夜、3号店から出火した。警備担当副社長のセルゲイさんの部下が夜、扉をすごい勢いで叩くので何事かと思った。

 応対したミュから血の気が引いている。

「ご主人さま、3号店から出火です。今、憲兵隊とセルゲイさんたちで消火活動中との事です」

「分かった。これから行こう。エリス、悪いが、ラピスを公爵さまの所に送ってくれないか。送り終わったら3号店に来てくれ」

「分かったわ、ラピス、転移するわよ」

 エリスとラピスで転送していく。


 俺とミュは飛んでいく訳にいかないので、とりあえず走って行くことにした。

 3号店の前には既にエリスが到着し、水魔法で出した水で消火活動の手伝いをしているところだった。

「エリス、状況はどうだ?」

「どうにか沈下してきたわ。あと少しというところね」

 ミュも水魔法で放水し出したが、ミュの水魔法は凄い。一回放水しただけで鎮火した。

 鎮火した店内に入る。

 後から、ミュとエリス、それにセルゲイさんもやって来た。

「会長、申し訳ありません。このような不祥事は警備担当であるこのセルゲイの責任です」

「今は責任をどうのこうの言っている場合ではない。まずは出火原因を探るべきだろう」

 火元を探すが、どうやらそれらしい火元はない。

 外側を探すと、2階の窓のところが一番燃えたらしい後が見つかった。

 どうやら、外から窓を燃やし、火種を投げ込んだようだ。

 隊長のアルジオさんがやって来た。

「ここの窓を燃やした後、火種を投げ込んだようです」

 俺が見解を述べる。

「2階の窓を燃やしたという訳ですか?ファイヤーボールでも撃ち込まないと無理ですな」

 と言って、アルジオさんは自分の言葉に反応した。


「ファイヤーボール。たしか、シンヤさんたちを狙った時の暗殺者もファイヤーボール使いでしたな」

「恐らくその推理で外れていないでしょう。ファイヤーボールで窓を焼いてから、さらにファイヤーボールを打ち込む」

「と、すると犯人は黒服で髪がブロンドの女。おい、直ちに緊急配備だ」

 部下に指示すると、何人かが街中に散らばって行った。


 ふと、近くを見るとユルマラさんが来ており、崩れ落ちている。

「会長、申し訳ありません。会長から任せられた店をこんなにしてしまい、本当に申し訳ありません」

 泣きながら謝罪してきた。

「これは放火だ。ユルマラさんの責任ではない」

 それでも彼女は動こうとせず、後からやって来た両親と共に泣きながら帰って行った。

 とりあえず、家に帰った俺たちはこっちでも驚くことになった。

 家の中がめちゃめちゃだったのだ。

 ラピスを公爵さまのところに連れて行って正解だった。もし、留守番をしていたら、どうなっていたことか。

 エリスはこの惨状を見て、怒髪天を突く勢いである。

 逆にその姿を見た俺の方が、冷静になっている。

 ミュが片づけようとしたところを俺が制止する。

「エリス、お前なら分かると思うが、ここに火を点けていない。とすれば、指紋やDNAといったものが残っているハズだ。靴の泥なんかもあるかもしれない。探索できるか?」

「分かったわ、エキストラサーチ」


「ご主人さま、指紋とかDNAって何ですか?」

「うん、まあ、犯人の痕跡かな」

「シンヤさま、判ったわ」

「犯人を特定できるか?」

「会えば、探索スキルを使って、特定できるわ」

「それなら、明日の朝、3号店に行ってみよう」

「えっ、どうして3号店?」

「放火魔は必ず現場に戻るという心理がある。明日、明るくなると見に来る可能性は高い」

 チェルシー長官とアルジオ隊長に連絡を取り、その旨を連絡しておいた。

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