クリスますやんか'17投稿祭だよ!

楢崎沙來夜

クリスマス・イブの夜に…

むかしむかし、あるところに、顔がでかくて、首が太くて、足が短くて、ちょっとずんぐりむっくりした感じのする頑丈な体をしたサンタさんがいました。

そのサンタさんは毎年、とある小さな村にプレゼントを配りに行っていました。


さて、今年もクリスマスイブの夜がやってきました。その村に住んでいるデビルくん、キャシャーンくん、タイガーくんの、3人の子供たちは、デビルくんの家に泊まってサンタさんを待とう、という約束をしました。3人は楽しみで仕方ありません。

そんなことは知らず、サンタさんは相棒のトナカイと木のそりと一緒に、家を出ました。

子供たちが寝静まったころ、シャンシャンシャンとトナカイの鈴が鳴り響き、サンタさんが村にやってきます。村のはずれにそりをとめると、屋根に登って煙突から家に入り、子供たちにプレゼントを配り始めました。

「メリークリスマス!」

サンタさんが耳元でささやくと、プレゼントを貰った子の寝顔が幸せそうな笑顔に変わりました。

次の家、その次の家と、プレゼントを配っていくと、デビルくんの家に着きました。

サンタさんが煙突を下りていくと、ガサガサと物音がします。

「あれ?なにか聞こえない?」

デビルくんがその物音に気が付きました。

「煙突の方かな?」

キャシャーンくんが首をかしげます。

「サンタさんだ!きっとサンタさんだよ!」

タイガーくんが嬉しそうにはしゃぐと、ドシーンと暖炉から大きな音がしました。

3人が慌てて暖炉を見に行くと、煙で何も見えません。しばらくして煙が晴れてくると、そこには、あのサンタさんがいました。

「わあ!ほんとにサンタさんだ!」

3人の子供たちは飛び上がって喜んでいます。

「いてててて…」

サンタさんが起き上がると、子供たちが目を輝かせながら見てきます。

「プレゼントかな?」

サンタさんが聞くと、最初にデビルくんが答えました。

「僕は、もっと優しくなりたいんだ!」

「まっかせてー!」

サンタさんは右手を上げて、こう叫びました。

「まほう!」

するとどうでしょう。デビルくんのこころが暖かくなりました。

「ありがとう!これでみんなをもっと幸せにできるよ!」

「次はどの子かな?」

サンタさんが聞くと、次はキャシャーンくんが答えました。

「僕は、もっと頭が良くなりたいんだ!」

「いいよ!」

サンタさんはまた右手を上げて、こう叫びます。

「まほう!」

すると今度は、キャシャーンくんの頭がすっきりしました。

「ありがとう!これで便利な機械を作ってみんなを助けられるよ!」

「最後は君だね」

残ったタイガーくんが答えます。

「僕は、もっと強くなりたいんだ!」

「りょうかーい!」

サンタさんは同じように右手を上げて、こう叫びます。

「まほう!」

すると、タイガーくんの体中から力がみなぎってきました。

「ありがとう!これで悪いやつらをやっつけられるよ!」

3人の子供たちはサンタさんにお願い事を叶えてもらえて、大喜びです。そこで、サンタさんが3人に言いました。

「君たちはいい子だから、夜も遅いし、そろそろ寝ようね。あと、私が来たことは話しちゃダメだよ」

「はあい」

3人はちょっぴりさみしそうです。

サンタさんは暖炉に入ると、ゆっくり煙突を登って、次の家に向かいました。


夜が明けてきました。サンタさんはプレゼントを配り終わり、帰る準備をしています。

ふと、あの3人が気になり、もう一度デビルくんの家に向かいました。

煙突を下りてデビルくんの部屋にこっそり入ると、3人はぐっすり寝ていました。

サンタさんは安心して、3人にささやきました。

「メリークリスマス!」

すると、3人が幸せそうな笑顔を見せてくれました。

ふと、クリスマスツリーの下を見ると、クッキーと牛乳とクリスマスカードが置いてありました。カードを開くと、3人のあどけない文字で「サンタさん、ありがとう!」と書いてありました。実は、サンタさんが帰ったあと、3人で用意していたのです。一晩中動き回っていたサンタさんも、これを読んで元気になりました。

そこでサンタさんはペンを取り出し、カードの空いたところに一言書き加えました。

サンタさんは3人ににっこりと笑って、トナカイが待っている村のはずれに向かいます。

「準備出来てるよ!」

トナカイが帰る準備をしてくれていました。

「ありがとう!」

サンタさんがそりに乗り込むと、トナカイがそりを引きはじめます。

そりがゆっくりと空に向かって走り出し、村の上空を一周ぐるっとまわりました。

デビルくんの家の近くを通ると、寝ぼけ顔の3人が目をこすりながらこちらを見ています。

「さあ、帰ろう!」

トナカイが一つ意気込み、サンタさんの家に向かって全力で走って行きます。

3人の子供たちはそれを見て、窓を開けて大きく手を振りました。

太陽が顔を出し、銀色の雪原を照らします。そして、太陽に向かって走るサンタさんが大きな声で村のみんなに言いました。

「メリークリスマス!」






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クリスますやんか'17投稿祭だよ! 楢崎沙來夜 @sakuya_yuzaki

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