魔法を学ぶなら、魔法学校へ
青猫
第1話 The End To the Beginning Ⅰ
自分の人生は退屈だと感じていた。
高校生活が始まり早三ヶ月が経つ、普通に友達も出来、普通に授業を受けていればそこそこの成績も取れていた。部活はしていなかったが充分に青春を謳歌していたと思う。
だがそんな『普通』にいつしか物足りなさを感じ始めていた。
退屈な日常を変えたいなら自分から行動するべきだとよく耳にするが、実際何かを変えようと行動しても何も変わらないものだ。
だから自分は追い求めることをやめ、待つようになっていた。
―――――きっとそんな考えを抱いていたのがことの原因だったのだろう。
* * * * * * *
「か・・・かん・・・ざき・・・なるみ」
声が聞こえる。
ああ。この低く掠れた声は数学の先生の声だ。
どうやら俺は授業中に居眠りをしていたみたいだ。
「
意識を覚醒させると目の前に仏頂面の先生が立っていた。
目を覚ましてこんな顔を見てしまうととても萎えてしまう。
「わかりました。えーっと、どこだっけ」
「p《ページ》52の三番です」
問題を探していると、隣から悠々たる声音がかかる。
「すまん。ひより」
隣に座る
先月転校してきた女の子でいいところのお嬢様っていう感じがし、容姿端麗なので他のクラスついには学年を越えて彼女を見る騒ぎになっていた。
当時ひよりがこのクラスに転校してきて、たまたま一番後ろの席に鎮座していた俺の隣の席に彼女が座るようになった時は「何このラブコメ展開!」とフラグを期待していたがそんなことはなかった。
やはり
先生に問いの解を答えるといつもの授業に戻っていく。
それから10分程は経っただろうか視界に違和感を覚える。
先程より白く曇って視えるのだ。それどころか意識が朦朧としてくる。眠気みたいなのが襲ってくる。
一体何だろうか。
周りを見渡すと他の人にも同じ症状が出ているのかぼーっとしている。ついには頭から机に向かい意識を失う者まで現れ始めた。
「ひより・・・無事・・・か?」
「―――――――」
ひよりの安否を確認するがどうやら手遅れみたいだ。
まずい、このままでは俺も。
左隣の窓に俺は手をかけるが・・・。
「ドンッ」
努力むなしく倒れてしまった。
消えかける意識の中で教室の扉の開く音を聴いた。教室に入って来たのは金髪の女の子で、年は俺たちとかわらない相貌をしていた。
誰だ――。
「―――!。君、まだ意識があるなんてすごいなぁ。でも今は寝てないとだめだよ」
* * * * * * *
「――――っ!」
目を覚ますとそこは体育館だった。
体育館には俺以外にもたくさんの生徒達がおり、多分全校生徒はいるんじゃないだろうか。
壁によりかかるようにして寝ていたようで、辺りを簡単に見ることができる。
状況を確認するために立とうとすると何かが俺によりかかってくる。
「うわ!ひより!」
ひよりが俺によりかかるようにして寝ている。
何て状況だ!
思わずひよりの寝顔に
「っていかんいかんこんな時に何を。・・・・・ひより起きろ!」
頭を横に大きく振り雑念を払うと、気持ち良さそうに寝ているひよりを起こす。寝不足なんだろうか。
「・・・んっ・・・鳴海くん、ですか?。ここは...体育館、なぜ私はここに...そしてなぜ鳴海くんが私の隣に...」
ひよりが俺のことをじとーっと訝しげに視てくる。今現在俺は、あらぬ誤解をされているだろう。誤解を解いておかなければ。
「まず、今ひよりが考えている事は全くもって違うからな。憶えてないか?二時限目の数学の時間に
誤解を解いておくのと同時に今の状況を軽く説明しておく。
物分りが良いひよりは全てを理解する。
「思い出しました。確か問題を解いている時に視界に違和感をおぼえたので、顔を上げたらいきなり意識が朦朧として。今は...12時ですか、あれから3時間程経ったのですね。でも何故・・・」
ひよりの問いを遮るように機械的な音が聞こえ始める。
「全員目覚めたかな?それじゃ改めてこんにちは高校生の皆さん。私の名前はユナと申します。少々手荒な真似をしてすみません。何故こんなことをしたのかあなた方に説明します」
スピーカー越しに聞こえてきた声はユナと名乗る女性のものだった。
彼女は謝辞を述べ、ひよりの問いを聞いていたのか始めから話すつもりだったのか答え始める。
「まず私は個人として動いておりません、バッグにはある組織がいます。そして私はただの人ではなく魔法使いです。まぁこんなことを聞いてしまえば何言ってんだこいつと思うでしょう」
「では一つ証拠をお見せしましょう。ステージ側に立っているそこの男の子、その腕はどうしましたか?」
ユナの言葉を皮切りに視線がステージ近くに立つ男子に集められる。
その男子は突然のことに緊張の色をみせながら恐る恐るユナに話しかける。
「こ…これは部活の練習中にやったもので、全治三ヶ月の骨折だよ」
「ではその傷を治してあげましょう。・・・・・」
最後の方はよく聞こえなかったが、何かを唱えているように思えた。
数秒の時を経ると、男の子の腕を淡い光が包み込み始める。
光が収束に向かうと同時にユナが喋り出す。
「怪我は治りましたよ?確かめてください」
それを聞くとメガネの男子は怪我の具合を確かめていく。
「なおっ・・・てる 」
「―――――!?」
その光景を見ていた者は驚愕に満ちた顔をし始める。
「信じていただけましたでしょうか?私たちの目的はこの中から魔法使いの素質のある者を見つけ出すこと。ただそれだけです、ここまでで何か質問のある方はいますか?」
しばしの沈黙が流れる。
しかし、その沈黙を破ったのは一人の男子生徒だった。
この学校のトップに立つもの(役職的にだけど)生徒会長だった。
生徒会長は体育館の中央に立ち、声高らかに話し出す。
「僕の名前は
「お答えします。魔法使いの育成、養成を図る学校、魔法学校です。私たちは政府にも認知されておりません、秘密裏に行動しています」
生徒会長はそれを聞くと、なるほどと頷き次に進める。
「次にあなた方は魔法使いの素質のある者を探しているとおっしゃいましたが、一体どのようにして見つけ出すのですか?」
「それに関してはこれから説明するつもりでした…」
スピーカー越しに呼吸を整える音がする。
呼吸を整え、口から出てきた言葉にはどこか愉悦の色を含んでいる感じがした。
「あなた方にはゲームをしてもらいます!」
―――――は!?
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