白夜の薔薇4 こずえはバリ島南のウド地区のタナロット寺院の近くに案内した。 そこには小高い丘になつており、石垣が積み重ねてある、こずえがその石の一つを押すと


白夜の薔薇4


こずえはバリ島南のウド地区のタナロット寺院の近くに案内した。

そこには小高い丘になつており、石垣が積み重ねてある、こずえがその石の一つを押すと

石垣が左右に開き地下への階段が見えてきた、階段をおりしばらく歩くと鉄の扉があり


こずえが小さい穴へ目を近づけると穴は網膜センサーになっているらしく青い光が右から

左に移動し、鈍い金属音がして扉がひらいた


中にはところ狭しと電子機器が並んでおり男達が急がしそうに働いている、こずえは

奥の部屋に案内した、ここは内閣情報室のインドネシアのバリ支局で、インドネシア政府

と共同で開発している海底油田の調査を主に担当している。


こずえによれば先ほど襲ってきた男達は北朝鮮の工作員で、北朝鮮はインドネシアから不正

に工作機械を密輸しているのだが、現地の企業と東都貿易の藤堂とのつながりが分からない

が関わっている政府の高官は特定していると言った。


北朝鮮は拉致問題で日本への寄港が禁止されている為、小型潜水艦を日本近海へ数多く配置

する必要がある、その為ソナーに探知されにくいスクリュウを作る事が急務なのだ。


ここはタナロット寺院の地下にあたるらしくこずえに連れられて階段を上がっていくと

丁度夕日が沈むところで、目の前に広がる海が黄金色にそまりその神秘的な光景はただただ息を

飲むばかりである。


北朝鮮の動きを封じ込める方法はないものかと、こずえに聞くと、BCA Internet Banking

(インドネシアの銀行)に多額の工作資金を持っているのでネットに侵入しこの資金の一部を

政府の高官に送金しログを関係筋に流せばその高官は失脚し、政府に口座を凍結され

活動が出来なくなると言う


奈々の前頭葉に埋め込まれたマィクロチップはあらゆる暗号を解くこと出来る優れものなのだ


奈々は目の前のパソコンを操作し始めた、BCAのネットにアクセスし難しい顔をしながらキーボート゚

をたたき次々とキーワードをクリアしメインコンピュターに侵入していく、最後のキーワードにたどり着き

色々入力するが拒否されてしまい、考えこんでしまった。


しばらくして、もかしてと呟き、17805MERDEKAと入力しEnterキーを押した、すると見事に

メインコンピュータが開いた。


17805の05は日本の皇紀2605(西暦1945)178は8月17日のことであり、インドネシアの独立の為に

戦つた日本人に感謝しインドネシアが独立を宣言した日に日本の皇紀2605の05を入れたのである

またMERDEKA(ムルデカ)とはインドネシア語で独立を意味する。


奈々は北朝鮮の隠し口座から政府の高官に5000万ドルを送金しログを新聞社にながした。

翌日大騒ぎとなり、政府の高官は警察に逮捕され、北朝鮮の口座は凍結された。

北朝鮮は某国の謀略であるとインドネシアの政府に抗議したが送金の事実があり密輸に高官が

関わっていたので抗議は受けいられなかった。


奈々は健治には友達のところへ泊まり、明日空港で落ち合うと携帯電話で伝えた。


翌日目的をある程度達したので健治とともに東京へ、しかし裏側で北朝鮮との戦いがあったなんて

健治は知る由もない。



ここは銀座のクラブ、あいかわらず店は繁盛している、華は客を呼ぶ為の大した努力もして

いないように見えるが、本人は随分気を使っているつもりなのだ、根がまじめのせいか以外と

空回りしている。


店の女の娘はそんな華が大好きならしく、結構長く勤めている娘がおおい


しかし、華、には秘密があるのだ、それは最愛の恋人を殺した黒幕への復讐である


つい最近、客を喫茶店で待っていると隣に座った男二人の会話の中に健一の名前が出てきたが、

どこにでもある名前なのでたいして気にもしなかつた、しかし波照間島が出てくる。におよんで、

耳をすまして聞いているとボスの名前と風体が自分の店に出入りしている人物とそっくり

なのだ、華は忘れかけてた健一を思い出し涙があふれでてくるのを抑える事が出来なくなった


となりの男達は不審に思ったのかそれっきり話し声は聞こえなくなった。


(はたして華の店に出入りしている男とは何者なのか)


しばらくして客がにこやかな顔をして入ってきた、この男は某不動産会社の社長で都内

のマンションの販売を手広くてがけている、最近都内の高層マンションは人気が高く売り出せばすぐに

完売になり随分はぶりがいいらしく、月に4、5回は店に来てくれる、いつも2~3人で来てくれるので

華にとっては上得意客の1人で゛ある


やりての商売人らしく気さくで面白いせいか店の女の子にも人気があり、華もあんまり気を使う必要

がないのでとても楽なのだ、今日は一人の女性を伴っていた


彼の行き着けの日本料理屋の個室に入ると連れの女性を自分の秘書で立花留美君だよと紹介した、

歌手の小柳るみこに似た美人である、出身地を聞くと今話題になっている東国原知事の生まれた

宮崎の都城(みやこのじょう)らしい。


都城は鹿児島との県境にあり昔し薩摩藩の統治であった為鹿児島の風土を色濃くのこしている場所で

あり、周りを山に囲まれた盆地で南西には霧島連山をいただき、肥沃の盆地なのでシラス台地で米が

あまり収穫できない薩摩藩にとつては重要な場所であり


また霧島連山の麓には木崎原古戦場があり、ここは九州の桶狭間と呼ばれており、戦国時代の武将

島津義久が日向の伊東軍3000をたった300の軍勢で打ち破り、薩摩軍が九州を席巻する源になつた事

などを留美は話した


な、たいしたもんだろうと社長が笑いながら華に言つた、さらに、こんなに賢いからなかなか嫁の貰

い手がないんだよと言うと、留美は結婚するつもりはありませんと、ピシャリと言いかえし、社長は

いゃあ、まいつたと首をすくめた。


薩摩おごじよ(鹿児島の女)は土佐の八金(高知の女)とともに気が強いと言われているだけあって留美も

相当のものであると華は感じた。


食事が終わると店に二人を案内し、しばらく歓談しているとスタッフが耳打ちした、奥の席を見ると

話に夢中になつて気がつかなかったが先ほど男たちが話していた客がきている


丁寧に礼を言って席を立ちその客の席へ行き挨拶したが、さっきの話を聞いたせいか顔がこわばって

いる感じがしていると、その男は華どうしたんだ顔色が悪いぞ、さては昨日飲みすぎたなと笑って

じやあ向かい酒だと乾杯した


そうこの男はこの物語の最初に登場し、食事の時一輪のバラをプレゼントしてくれた男である

月に1~2度くるくらいで華はそう親しくない、どの女の子が気に入っているのかだれがついても

ニコニコ笑って話している


この男が黒幕かも知れないのでなるべく親しくしょうと思い店が終わったら食事に連れていってくれる

よう頼むとこころよく引き受けてくれた。


この男は政財界にも深いつながりがある高杉経済研究所の所長である、経済関連のテレビ番組にも時々

顔をみせ、辛口の評論家である


彼は、華をいきつけの洒落れたショツトバーに案内した、この店の常連らしく席に着くとマスターに

いい女だろうと、笑いながら紹介してくれた。

彼はワインを注文し、華に僕を誘うなんてめずらしいねと声をかけ、何か聞きたいことがあるんだろう

当ててみようかとニャツと笑った


華は見透かされたような気がして、慌てて、ただ一緒に飲みたかっただけですよと答えた

なあんだこんな職業だから儲けるためにどこの株が上がるか聞きたいのかと思ったよと言い、特別に

一つだけ教えてやるよと話はじめた。


それによると今回の防衛省のスキャンダルで防衛省は納入先変更を余儀なくされる事、今回の告発は

ライバル会社によるもので、新規納入先は省内の権力争いで勝ったものと親しい会社に選定され、

其の会社は業界5位のいままで目立っていない常盤産業であり今この株を買えば一週間後には2倍になり

大儲けが出来ると言つた


華が所長さんは買うんですかと聞くと、勿論だよ、これでしばらく銀座で飲み放題だよ笑っている

そんな事を知っているのだから例の秘密組織のボスに違いない、絶対証拠を握つてみせると心に誓う

華であった


しかしそんな大事なことを簡単に話したのか不思議な気がしたが、試しに其の株を買って見る事にし、

翌日知り合いの証券マンに電話をすると、業績のよくない会社だから止めた方がいいと言う

プロもまだ知らないんだと思い、構わないので500万分買ってくれるように頼んだ


それから一週間後彼の言うとおりどんどん其の会社の株が上がりついにもと値の3倍になってしまった

早速証券マンに売りにだしてもらうよう依頼し、華はあっとゆうまに1000万円を儲けたのだ


しばらくして高杉は店にやって来て華を見つけると席に付くようにスタッフに依頼した。

さっそく席に付くとえらい損しただろう、申し訳なかったとあやまった、華はそんな事ありませんよ


おかげですごく儲かった事を小声で言うと、と言うことは一番高値の時、うまく売り逃げたんだ

それは、すごい、すごいと感心している、話を聞くと其の後あっとゆうまに暴落しもとの株の半分の

値段になってしまい、当局はだれかが仕手戦(株価操作)をやったものとして捜査に入ったと言う事である


華が心配して高杉から聞いてその株を買った事が違法になるのか聞くと、いやインサイダー(関係者が

事前に情報を流す)取引でないよ、僕はその会社とはなんの関係もないから大丈夫だと言い、華は高杉

が儲かったのか聞くと、僕もその時点で売りに出したから儲かったんだよと笑っている


華、はなんかチョツト危険な男だと思いながら、段々惹かれる行く自分に戸惑いを隠せなかった。








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