冬の足音

カゲトモ

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「クリスマスねぇ」

 テレビに話しかけるのは、一人暮らし故だろうか。いや、母親も昔からテレビに話しかけていたから、遺伝か? 違うか。

「クリボッチなー」

 まぁ大体の人はこうやってテレビに話しかけるよな。うん、つっこんだりとか無意識にするよな。それでふと我に返って、何やってんだろうとか思うんだ。

「まぁ今年も仕事なんだけど」

 聞いている人もいないからいいんだけど。

「別に寂しくはないけどな」

 電気ケトルで沸かした熱湯をマグカップに注ぐ。今朝の朝食はハムエッグチーズホットサンドにコーヒー、それからマンゴーソースのヨーグルト。今日はいつもより早めに目が覚めたからホットサンドを作ってみた。美味しい。

 よく考えれば、ホットサンドもトーストも挟んでいるか、いないかくらいしか違いがないんだけど。なんでかホットサンドの方が満足度が高い気がする。満腹度は一緒なのに。

「へぇー、美味そう」

 情報番組で有名ホテルが今年売り出すクリスマスケーキの特集が組まれていた。どれも色とりどりで手が込んでいて、一ホールの金額がすごい。さすがそこまで含めてホテル価格だ。

 俺には縁のない話だなぁ、なんて。

 クリスマスケーキと言えば、サンタが乗ったイチゴと生クリームのシンプルなデコレーションケーキか、ブッシュドノエル。手作りで、売り物のように綺麗ではないけれど、素朴でとても美味しかった。

 今みたいに何でもない日にケーキを食べるなんてのはあんまりなくて。ケーキと言えば誕生日とクリスマスだけ食べることの出来る、特別なものだった。

 だから子供の俺にとって、クリスマスって言うのは特別なイベントだったわけで。

冬休みになると隣の教会に集まってクリスマスの準備を始めるのだ。飾りつけとか料理の下ごしらえとか。もうこの時から楽しくて、待ち遠しくてずっとワクワクしていた。

 当日は教会で毎年開かれるクリスマスミサに参加して、教会の子供たちと一緒に遊ぶ。ささやかなプレゼントを交換して、歌を歌って、楽しく過ごすのだ。

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