兄弟になる、というのは選択の余地のないことだ。この現実の世界では。私は姉である。気付いた時には弟がいたし、その数年後には妹もできた。けれどこのお話では違う。選ぶのは兄だ。選んだ兄と、選ばれた弟。そして二人の交流は緩やかに始まり、進む。日常には不穏の欠片もない。が、世界が、何かが、おかしい。その正体が分かる時の焦燥感は堪らない。どうか、幸せになってくれ。そう願わずにはいられない。ラストに辻褄が合い、兄弟は掌を返したかのような周囲からも寄り添うことが許される。人間とは身勝手な生き物だ。そしてだからこそ、愛しいのだろう。