第112話 他国からの訪問者(9)
だからこの国の女性達は声を揃えて、建太へと、「でも……?」と、言葉を漏らす。
でッ、健太の髪の毛を荒々しく鷲掴みをして握り──。自身の方へと強引に引き寄せる高貴で妖艶な女性はと言うと?
「別にあんたの戯言など、どうでもいいんだよ~。それよりも~? 先程から何度もうちが言っているだろう~? うちを侮辱したその女から早く離れて~。その女を今直ぐうちに引き渡せ~。あんた~」と。
まあ、こちらも相変わらず、荒れ狂う牝馬の如く。荒々しくなっている気性を鎮めようとしないで健太へと。彼が身を挺して庇う女性を引き渡せと荒々しく下知を飛ばしてくるばかりなのだよ。
と、なれば?
そろそろ?
この国の女王アイカか丞相であるシルフィー若しくは?
同じく一騎当千の強者であり。この国最強の武人だと世に謳われ。
他国からも絶賛──。一目置かれている、健太のことを、自身の主さまだと、心から尊び慕う戦姫エリエ嬢を呼んでくるしか収まりつかない事態まで進展しそうな様子へと代わりつつある。
だから健太の周りで只今怒っている、この物々しい様子を遠目から凝視していた我等も、『さてさて~? これから先~? どうやって、この荒れた騒動を収拾するのだろうか~?』と、思うのだよ。
だって~?
高貴で妖艶な女性は、どう見ても? 他国の高名で地位の高い女性だと思うからね?
このまま騒ぎがエスカレートすれば、個人個人の争いでは済まなくなり。
今度は国と国との威信をかけた大きな争い……。戦争へと変わってしまう。
また、そうなれば?
お互いの国の領内は荒れ、戦死者も多々出てしまって。両国の民が泣き崩れるようになってしまう。
だから健太は、最悪の事態だけは回避したいので。自国の女性達に自分のことはいいから、耐え忍んでくれと嘆願をしたのだ。
う~ん、それでも?
女性という者は、愛する男の悲痛な表情を見て、いつまでも耐え忍んでいることなどできないから。
「あんた~。いい加減にしなさいよ~。うちの健ちゃんに何酷いことをしているの~?」
「早く~。家のひとの髪を離しなよ~。あんた~。でないと? あんたをこの場で八つ裂きにしてやるからね~」
「あああ~。そうだ~。あんたの言う通りだ~。いくら他国の女王だろうが~。うちらの殿に手をあげる奴は、許しはしない~」
「そうだ~。そうだ~。八つ裂きだ~。八つ裂きだ~」
まあ、こんな感じで威勢を上げ始めるのだよ。当たり前だけれど。
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