第46話 アイカの落胆(その一)(1)

「婿殿~。いきましょうか~?」


 ……ん? あれ? この国の祭司であり、丞相でもある。女王アイカの義理の母であるシルフィー殿の声が聞こえてきたね~?


 それもさ~? 健太を呼ぶ声──。


 シルフィーに同行をして、何処かの場所にいこうと誘っているみたいなのだが? 相変わらずこの物語を遠目から見ている我は、シルフィーが健太を何処に連れていこうとしているのか、気になるので? 二人の動向を遠目から探ることにするね?


 健太はこの世界──。この国……。


 そして~? この集落にきてから未だ日も浅いのだ。


 だから彼は未だ、この世界──。この国……。集落のことが右も左もわからない状態なのだよ。


 まあ、そんな事情もあるから、この国の祭司──。丞相であるシルフィーが、この国の王になる予定の健太を案内するのかも知れないね?


 この国の女王であり。多忙なアイカの代わりに……。


 ん? 我らに、健太のことで訊ねたいことがあるだって~?


 あああ~。別に構いはしないが~。一体何だろうか~?


 フムフム、なるほど~?


 あああ~。そう言うことかぁ~?


 皆はもう既に健太は、この国の王さまなのだと思っていたと~?



 う~ん、そうだね~? 健太は、この国最高の祭司であるシルフィーがアイカの為にと。女王である彼女に足りない智と謀を補え、サポートできる人物として、異世界日本から健太へと白羽の矢を立て──召喚をしたのだ。


 でッ、召喚をされる数分前の健太は、日本の某T国立大学を目指す為にと、幼少期から塾通い……。


 まあ、彼のパンツ一枚の容姿──。ジャングルの王者、ターザンやタ○チ○ンと比べても身体の線が筋肉質ではなく。女性のように細いしなやかな容姿……。


 それこそ? 武に長けているオークの女性が強く抱き締めれば、折れそうなぐらい華奢……。


 と、言っても?


 健太は正真正銘なオスなのだから、貧相な容姿と言った方がよい姿を凝視すればわかる通りで、ガリ勉の青瓢箪と言った方がよい高校生の男子……。


 となれば? 遠目から建太とシルフィーの様子を見ている者達の承知通りで、運動音痴……だけではない。彼は産まれてこのかた争い……。喧嘩と言う物もしたことはない少年なのだよ。



 だから彼の性格は争いを事……。荒々しい行為を好まない温和な性格であり。いつもニコニコ御日様のように笑っている性格なのだ。


 と、なれば? 紛争が激しい。この世界──。このジャングル内の王には相応しくないのでは?


 と、言ったことになるのだが?


 まあ、その通りで、女王アイカ派、数日前に健太を召喚──。彼の着衣をしている高校指定のブレザーやスラックスを屋敷に住む一族の女性(者)達と強引に脱がして凝視──。


 その後は、彼の最弱貧相な容姿を見て落胆……。


 自身の義理の母である丞相のシルフィーに、健太との婚姻の方は、もう少し思案をさせて欲しいと嘆願をしたのだ。


 だからこの国の王になる為に召喚をされた筈の健太には、『大どんでん返し~!』が起きて。数日前から健太は、女王アイカに放置をされたままの状態……。


 だから右も左もわからない健太に、色々なことを学ばせようと。この国の丞相であるシルフィーが健太を連れ出しているのだよ。


 まるで愛しい彼とデートでもしているようにね~。


 だから以前シルフィーを見た時よりも。彼女は更に艶やかで美しくなっているとは思わないか~?


 と、我らは思うのだよ~?


 でッ、これも我らの推測の域なのだが~?


 この国の№2である、丞相のシルフィーなのだが? 自分自身の好みの異性として健太のことを召喚したのでは~?


 と、いった話しも出ている……。


 と、いうか? この集落内でも。こんな邪な話題がでるほどシルフィーの健太への優しさ……。


 というよりも? 甘え方は、女王アイカを含め姉妹と従妹を合わせても群を抜いているほど。彼女は健太の面倒を良く見ているのだよ。



 まあ、このことが後々の憂いにならなければ思うのだがと、我らも言いたいところだが?


 健太がこの国の王になれば自然とシルフィーも。彼の財産になるのだから。彼女が彼に甘えるのは仕方がないことなのだから。


 この国──。この集落の者達は、別に二人に対して、不信感を募らせたりはしない。


 う~ん、それどころか?


 只今女王アイカが、健太へと興味の無い様子でいるので。健太と同じ屋根の下で暮らす女性達皆が、アイカのような様子だと。


 それこそ? 健太の命の方が危うくなる。


 だってオークは、他種族を自身のテリトリーへと入れて暮らすことを嫌うのだよ。たまたまこの国には、エルフ種であるシルフィーがいて、丞相の位でいるから。皆が納得をしているのだ。


 だから女王アイカ一族と寝所を一緒にしたオスの健太が。王にならないと、他の者達にわかると、直ぐに殺害される可能性もあるから?


 シルフィーが健太の彼女、若しくは? 妻のような振る舞いをしているのだ。彼の身を守る為にね。


 と、こんな事情がある健太……。彼はこの世界に召喚をされた日から、『大どんでん返し~!』で、命が風前の灯火なのだよ。


 本当に可哀そうに……。


 う~ん、でも? 彼は、そんなことなど知らないので、太陽のように『ニコニコ』と、微笑んでいるのだ。


 でッ、健太は微笑みながらシルフィーへと「は~い」と、嬉しそうに言葉を返しながら。自身に寄り添い。腕を組みながら甘えてくるシルフィーのことがまんざらでもない表情をして。二人は仲良く移動を始めるのだよ。



 でッ、移動を始め。少しばかり時間(とき)が経てば健太は、この国の美しい丞相へと。


「シルフィーさん、一体何処にいくのですか?」


 と、少々悩んだ顔をしながら問いかけるのだよ。


 何時(いつ)まで歩いても、二人は目的地らしい場所へと到着をしない。只シダ系の植物らしい原生林の中を歩き続けているのみだから。


 健太は不安になり、シルフィーへと訊ねるのだよ。


 するとシルフィーの足が止まり──。自身の腕を上げて、指先で何かを指し始めるのだよ。


 だから健太は、美しいシルフィーの顔から。彼女の指さす方向へと。自身の視点を変えて凝視を始める。


「……ん? あっ! 集落だ~?」


 シルフィーの指さす方向へと視線を変えた健太の口からは、こんな驚嘆が放たれるのだよ。


 だって~? シルフィーの指さす方向に、人の住む集落らしき建物群が健太の目に映ったから驚嘆を吐いたのだ。


 でッ。シルフィーはというと?


 そんな様子の健太を凝視しながら。


「婿殿~。あれはね~。エリエさんの治める集落なのよ~」


 と、説明をするのだ。


 すると健太は~? ではなく。我らもシルフィーの話しを聞き困惑をするのだよ。


 だって~? アイカ姉妹の次女で、武道派のエリエの治める集落……と。シルフィーは健太に説明をしているのだが。エリエ本人は今日も朝まで、女王と王の住む館で、健太やアイカ、シルフィー……。


 その他の姉妹や従姉と一緒に食事や睡眠……。一族の男王になる予定の健太に、自身の食事の準備や洗い物……。衣服の汚れ物を洗濯……。


 その他にも肩もみや自身の身体のマッサージなどをさせくつろぎ暮らしていたのだ。


 そんな屋敷内で健太達と共に暮らしているエリエに所領があるなんて不思議……。


 と、言うことはないか?


 彼女は女王アイカの妹君であり。一族……。


 その上、この国の将軍の一人なのだから。自身の兵を養う為にも所領は必要なのかも知れない?




 う~ん、でもね~? 健太は~?


 彼の横で彼女の如く腕を組み、寄り添い甘えている。この国の丞相であるシルフィーが見込んで、異世界日本から召喚をした少年なのだよ。


 ……となれば? 彼は、自身の置かれている立場とこの国の女王であるアイカが、自分自身に何を求めているのかは、だいたい察しがつく。


(う~ん、アイカさんの国は、中世の日本のような、国人衆の集合体みたいな感じのようだね~?)


 と、軍師的な見方で思案をするのだ。


 だから健太は更に思案を続け、こんなことも自身の脳裏で思う?


(う~ん、ということは? いつでもアイカさんを取り巻く彼女達は。アイカさんへと謀反を起こすことも可能だということになるよね~? う~ん、だからだろうか~? シルフィーさんやアイカさんの妹達が。アイカさんの館で一緒に寝食を共にするのは、謀反を防止するための策の一つでもあり。一族の血の繋がりをより濃くすることで、自身の国の安定を図ろうとしているのかも知れないね~?)と。


 健太はこんなことも思案をすると同時に、『ハッ!』と、我に返るのだよ。


 だって彼が、シルフィーの話しを聞き、思案を続けることで、更に自分が今置かれている立場……。


 女王アイカが健太に何を求めているのか? 察しがついたのだよ。




 と、同時に健太の顔色が変わったことを、この国丞相でもあり。自分好みの色に染めるべく健太を召喚したと思われる? シルフィーは見逃さないのだ。


 だから彼女は、大人の女性らしい色香と艶やかさのある、健太が先程から何度も魅入っている唇を開いて──。


「そうよ~。婿殿~? 今あなたが脳裏で思案をした通りで~。私(わたくし)達~。一族の女性達にも、あなたは女王に接するように、優しく愛しながら接してくれないと~。私(わたくし)達一族の女達は、女王アイカに牙を向くかもしれませんよ~。だから私(わたくし)達にもあなたは~。心から尽くしなさい~。わかりましたか~?」と。


 シルフィーは健太に対して、義理の母としてではなく。一人の女性として忠告──!


 今後健太が屋敷内で、どういった様子で振る舞えれば良いかを悟らして。いつも家中で照れ恥ずかしそうに、皆へと接している彼へと諫めの言葉も告げる。


「えっ、あっ、はい……。シルフィーさん……」


 シルフィーの言葉を聞き、健太は気落ちをした声色で言葉を返すのだよ。


 だって~? 今シルフィーが健太へと要求した台詞は、自分の妻になる予定である女王アイカを裏切る行為……。浮気をするようにと要求をしているのと同じなのだよ。


 健太のように、一夫一妻制の日本から召喚された者にしてみたら。


 だから彼は気落ち……顔色を変えるのだ。





 う~ん、でもね? 未だ純情な恋愛に恋い焦がれる年頃の健太に対してシルフィーは、大人の事情というものがあるから気にもしていない素振り。


 だからまた自身の艶やかな唇を開いて。


「婿殿~。あなたの産まれ育った世界と、この世界の夫婦……。妻の数は違うかも知れないから~? 婿殿は、自身の脳裏で困惑をするかも知れないけれど~? あなたは次期にこの国の王になるのだから~。妻を沢山娶り。この国を安定、発展させていくのは当たり前のこと~。だから女王アイカに遠慮……だけではなく~? 浮気心が女王に対して悪いと。婿殿自身が、自己嫌悪に陥らないようにしなさい~。あなた自身は、別に悪いことをする訳ではないのだから~。只、王として当たり前のことと、行為をするだけ~。だから気軽に私(わたくし)達へも相談~。甘え~。頼ればいい~。そうすれば~? 私(わたくし)達一族の女達は、婿殿のことを信頼~。甘え~。頼るのよ~。そうなれば~? いつまでも我が一族は安泰~。未来永劫に血は続いていくのだから~」と。


 シルフィーは健太へと告げる。


 それと? 今後健太が王としてどう振る舞えれば良いかも? シルフィーは女王アイカの気持ちなど少しも考慮しないで、次期王になる健太へと教え諭すのだよ。こんな感じでね~。


 だから女王アイカ……。


 というよりも?


 未だ幼く、男女の恋愛……。女性の本当に気持ちなどわからない健太は、この国のナンバーツーである丞相のシルフィーの言葉を素直に聞き、安易に受け取り、諭してしまうのだよ。


 女王アイカの純情な気持ちを蔑ろにしてね。


 う~ん、実は彼女? 自身の妹達や未亡人である自身の義理の母であるシルフィーなどの身の回りの世話──。健太に洗濯などをさせてはいるのだが。女王アイカは余り好意的には思っていないのだ。


 どちらかと言えば?


 自分の夫になる健太を一族の女性達に盗られたのと一緒だからね。彼女は不快感と嫉妬心を募らせている。


 その上、この度のシルフィーの、健太への王として、今後どのように振る舞えばいいのか? 諭した言葉に対して。健太は素直に行動をとるようになるのだ。


 だからアイカの妹君や従妹である。エリエ、プラウム、サラ……。


 そしてウルハ……。只今健太と腕を組み、恋人の如く振る舞いで仲良く歩くシルフィーは歓喜──。大変に健太へと行為的になるのだ。


 う~ん、でもね? 最初に、賢い健太が基部した通りで、女王アイカは、一族の女達や健太へと嫉妬心を募らせる。


 だから女王アイカは、次期王になる予定の健太へと興味が段々と薄れているのだよ。


 誰かさんの、悪しき想いに乗せられるようにね。



 ◇◇◇◇◇




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