第32話 さんじゅうに
大基は事務室と教官室を駆け回ったが、どこに行っても、講義を受けず音信不通だったため単位を取得できなかったと宣告されただけだった。
意味がわからない。
自分は、二、三日はさぼったかもしれないが、まさか二ヶ月も音信不通にはならない。そんな風来坊みたいな生活はしていない。
していなかったはずだ。
第一、携帯電話がある。自分がおかしくても、誰かが携帯で捕まえてくれるはずだ。
と、考えたところで、今朝、自分の部屋でピカピカと光り続けていた携帯を思い出す。まさか、二ヶ月の間、光りっぱなしだったとでも言うのか?
ありえない。少なくとも数日で電池が切れるはず。
いや、そもそも、自分がそんなに長い間、留守にしていたわけはない。
それどころか一日だって、外泊したはずがない。
家を出てから、ずっと彼女の、百合子の部屋にいたのだ。モデルとして。
恋人の部屋にいたのなら数日、いや、数ヶ月、連泊すると言うこともあるかもしれない。しかしオレは彼女とは、なんでもないのだ。
なんでもない……? ほんとうに、そうだったろうか?
彼女はオレをなんと言っていた?
「弟」と言ってはいなかったか?
弟なら、一緒の部屋に暮らすのは当然ではないか? ずっと、同じ部屋にいるのが普通ではないか?
いや、何を考えているんだ。オレは百合子さんの弟なんかじゃない。オレはオレだ。
しっかりしろ!
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