題名のない物語
白石王
神様の話
その子は、とても不思議な子でした。
自然に逆らい、神を軽んじるこの世の中で、彼女は自然を愛し、流れる四季を慈しみ、神を尊び、敬っていたのです。
雨の日も雪の日も、毎日。
最初は3人で、腕に抱かれながら。
そのうち2人で、手を引かれながら。
初めて1人で来られた時は、驚き、1人で帰られるか心配したものです。
幼かった彼女が成長していくさまを見ることは、とても嬉しい事でした。
彼女が自然を愛するように、私も彼女を愛しました。
けれど、私が恐れていた事が起きてしまいました。
彼女は、
「しばらく来ることが出来ないかもしれないわ」
と、それだけを私に言い残して来なくなってしまったのです。
彼女が来なくなってから、春が過ぎ、夏が過ぎ、秋が過ぎ、冬が過ぎました。
二度目の春が過ぎようとした時、彼女は来ました。
ひどく痩せていました。
死臭さえ漂っていたのです。
嗚呼、やっと開いた花だというのに、こんなにも散るのが早いとは・・・。
愛する彼女が散ってしまうことに私は耐えられませんでした。
「仕方のない人ね」
と、彼女は笑いました。
「頼むから、川を渡らないでくれ」
私は彼女の枕元で懇願しました。
「私と一緒にいてくれないか・・・?」
彼女は呆れたような顔をしました。
そして、
「仕方がないから、貴方と一緒にいてあげる」
彼女は川を渡りませんでした。
渡らなくてもいいようになりました。
今でも彼女は私の隣にいます。
これからの長い時間を私は彼女と過ごします。
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