第27話 魔草の洞窟は俺たちのファンタジー
旅の最中の食べ物は殆ど貧相なものにするべきだが、なにぶん現実世界の肥えた料理に慣れている俺たちには、此方の世界の食べ物は些か味気ないものである。
街で食べる料理に不満はない。しかし、少し遠出する時に食べる干した肉や、チーズは最初は斬新で良かった。でも、何度も口にしていると飽きるものだ。
「――――――というわけで、今後はちゃんと料理しようぜっ」
イネスさんのお使いも済ませ、トレダールに戻ろうとしていた俺たちだが。時刻も昼時とあり、一度昼休憩を取る事に。
「お前いきなり何言ってんの? 頭おかしいぞ?」
「うるさいよそこっ! 皆だって常に美味しい食べ物食べたいでしょ?」
「それはそうだけど……料理器具持って旅するとか現実的に厳しいんじゃないかな?」
確かに竜二が正論である――――――――
「――――だがしかしっ! 俺は干しに肉とかチーズには飽きたんだよ~。出来る時でいいから、料理もして行こうぜ~」
「お前が全てやるならなんの問題もねぇぞ?」
「そこは――――回していこう」
あからさまにため息を落とす純。俺が懇願の眼差しで竜二を見ると、少し考える仕草を行う。
「まぁ……確かに出来るならして行こうか。いつも干し肉とチーズじゃ健康も偏るからね」
「流石です我が参謀よ…………」
他の皆も渋々ながら頷く。やはり、結局は出来ることなら美味しい料理を食べたいのだ。
そんな下らない(俺にとっては大事な)話が終わった後は一時間程休憩を取り、再度トレダール第6地区への林道を戻るのであった。
――数日後。
宿屋パラダイス内。俺たちは恒例の作戦会議を行っていた。今回の審議題目は――『魔草の洞窟』についてである。
我がチームの参謀――通称眼鏡がいつも通りに指揮を取る。
「今回の魔草の洞窟だけど……まだ殆ど情報がないんだよね。何か知っている人とかいるかな? はは……いるわけ――――――」
当然の如く知るわけも無く、誰も答えないと思ったら――――――まさかの予想外の奴が口を開いた。
「その洞窟この前行ったぞ?」
『――――ぇ、えぇぇぇぇ!?』
行ったことあるとかぬかしたのは、チャラチャラ男のジュンジュンであった。
「それってまさかお前がいなかった1週間の間にか?」
「それ以外に何時があるんだよ? アホか?」
うぜぇぇ――――――てか、そんなことよりあの時は何も喋ろうとしなかったくせに……この野郎――
「何でそんな所に行ったの?」
「別に最初からそこに行こうと思ったわけじゃねぇ。たまたま15地区でギルドの依頼があったんだよ。それでついでに寄ったってわけだ」
何をしてたかと思えば、任務を受けていたのか……
「流石純だな。それなら魔草の洞窟のことは純に聞けば良いってことだな?」
「そうだねっ! 純いいかな?」
「――――あぁ。いいぜ」
「ありがとうっ! ぁ、あと……出来ればその修行のことも教えて貰えたら嬉しいんだけど? ――いいかな?」
「――――ったく。しょうがねぇな……ちゃんと聞いとけよ。俺の伝説の1つを――――――」
何時から伝説になったんだよっ(笑) まぁ、純らしいが――――――
純は当時の状況を鮮明に語り始めた。俺たちは黙ってその話に耳を傾けたのだった。
話を終えると、何故かわからないが純は満足そうに頷いた。
「純っ……何時の間にそんな冒険をっ――! わっちたちに言ってくれても良かったのにっ」
「そうだぞ純? 黙っていやがって――――」
「うるせぇ。お前らが聞かなかっただろうがっ」
そんな理不尽な――――――――――
純が思い出したように再度口を開いた。
「そうだ。眠りから覚めた後、俺は何時の間にか此処まで運ばれていた。そして、そこにはあの女神が居たんだ」
親切にもその彼女とやらが運んでくれたようだな。てかその彼女っていったい何者?
さらに純は続ける。
「そして彼女は去り際に太陽のような笑顔で俺にこう言った――――――『私の名はミズクっ。高貴なるクリーミル警備軍ウーマリアの一員だよっ! あの時は助けてくれたありがとうっ! 君みたいな子はクリーミルに一度着て欲しいな。私が歓迎するよっ! それじゃ――――またねっ純っ』――――――ってな」
「クリーミル? なんだそりゃ?」
「――あん? 俺が知るかよっ」
喧嘩になりそうな俺たちを制止して、竜二が眼鏡を押し上げた。
「クリーミルは五つの大国の内の1つだよ。しかも、唯一の女性が尊ばれる国さ」
「うひょっ! そんな所がこの世界でもあるんだねっ!!」
そう言って、竜二が以前マリクに聞いた事を話してくれた。
「ってことはそのミズクって人はクリーミルの人間というわけか」
「てめぇ。勝手に呼び捨てにしてんじゃねぇ! 俺の女だぞ?」
「あぁ――――はいはい」
何時からこいつの女になったんだよ。相変わらずいい加減だなぁ――――――
クリーミルという名を聞いて、重い空気が漂う室内。
「――――――心配だね……」
――――そう。俺たちの頭にはイネスさんから聞いた話が過ぎっていたのだ。戦姫の存在が危ぶまれ、密かに戦争を起そうとしている4大国。
もしその噂が本当ならば、ミズクと呼ばれる女性がいるクリーミルは大変なことになってしまうだろう。
岳は、辛辣な表情で地面を見詰める純を見る。
「――――純。お前はどうしたいんだ?」
普段は腹の立つ奴だが、こういう時にふざける奴ではないことは俺たちはわかっている。特に岳は純ち仲が良く、こういう時に声をかけるは決まって岳だ。
純は強い意志の篭った瞳を向け、こう言った。
「考える意味もねぇ。――助けるに決まってんだろ?」
「――――――ははっ。そう言うと思ったぜ。みんなも当然良いだろ?」
「僕は大賛成だよっ! 僕たちの目的のゴールがそこにはあると思うからねっ!」
――――確かに。クリーミルは唯一女性庇護の国。世界の女性たちを解放するため、俺たちの目的を達成させるために行くのは必須か……
「俺も今回は異論はない」
「――――そうだね。それなら今回の目的が終わったら、クリーミルに行こうか。その場合、イネスさんの修行はお預けになっちゃうけど……
」
『うぅ……我慢します――――――』
俺たちの次の目標は決まったな。なんかこうしていると、RPGみたいで少し面白いと感じてしまう俺は――――可笑しいのだろうか?
「それなら改めて魔草の洞窟の話に戻すよ? 中の案内は純に任せるとして、あとは備品だったり食料の準備だね」
「――――後調理道具っ!!」
俺は慌てて声を上げた。
「はは……そうだったね。一応、出発は明日にするとして。今日は手分けして準備をしよう。ランプとか、水とか食料とか欲しいからね」
「わっち食料買ってくるよっ!!」
「変な物買うんじゃねぇぞ? 祖チン」
「うひょっ! 任せてくださいっ!」
そんな冗談を交えながら、竜二の指示の元俺たちは準備を進めた。そして、明日に向けてゆっくりと身体を休めるのであった。
――――翌日。
俺たちは朝早くに起床すると、襲ってくる睡魔と激戦を繰り広げながら、トレダール弟15地区へと運んでくれる船へと乗り込んだ。
数時間の長旅の末、トレダール弟15地区は聞いていた以上に何も無いところであった。あるのは船を着ける木製の桟橋のみ。
それ以外は、手付かずに自然が悠然と広がるだけである。俺たちは、トレダールで集めた情報と純の案内で奥底にある魔草の洞窟へ向かう。
今回は、少しの調理器具も持ってきてるため、美味しい料理も可能だっ! ――――たぶんっ。
平原を越えて、木漏れ日の差す森林を東に進んでいくとそのダンジョンはある。小さな湖の畔に、佇むその巨大な岩。
どうやらそこがダンジョンの入り口らしく、純の先導の元岩の下へと入りこむ。
急斜面となって下に続いている入り口を慎重に下り、1つ空いた大きな穴を進んでいくと垂直にも横幅にも広い空間に出た。
銅製のランプの明かりでは全てを照らすことは叶わないことから、ずいぶん広い場であるということがわかった。ちなみにランプを持っているのは智久と竜二だ。
後方支援の者が持った方が良いと言う参謀眼鏡の提案である。さすがぁ~
湿気の混じった冷気が身体を刺激し、身体を震わせた。
辺りに警戒しながら、進んでいく俺たち。そして中間地点まで歩いて行った矢先、前方の岩陰に一瞬見えた影。さらにそこから何かが俺目掛けて投擲された。
「うぉっ――――!」
俺は咄嗟に身を屈めてその何かを回避する。ダガーのような物が頭を通り過ぎ、岩壁に当たる。それを確認すると同時に声を張り上げた。
「敵襲っ! 岩陰だっ――――何かいるっ!!」
一斉に剣を抜く仲間たち。俺も態勢を戻して、ダガーを構える。そして、俺たちの目の前に現れたのは、毎度見慣れた敵さんたちであった。
ボロキレの魔物――――スィーフである。その数は6体。1体以外は皆武器を持っている。おそらくのその1体は先ほど武器を投げた奴であろう。
「がははっ! 出やがったなっ! 俺様が――潰すっ!!」
竜二の指示も待たずに突撃する純。それに釣られて俺も続く。そこでやっと竜二の指示が飛んだ。
「智久は後方にっ! 浩太は智久を保護して! 岳は純たちを援護してっ!!」
「――了解っ!!」
岳も俺たちの戦いに加わる。現在は俺、純、岳の3人で2体ずつを相手取っている状態。
俺の相手は武器なしとダガーを持った奴。まずは――――――武器なしを叩くっ!
武器なしスィーフを倒すべくダガーを何度も振るうが、俊敏のなスィーフに当てることは中々に困難。
さらにはもう1体の攻撃も注意して回避しなければいけなため、一気に踏みこむことも出来い。
しかし俺も盗賊の端くれ。俺はこんな時のために純がいない一週間ギルドに通い、体術の訓練を徹底的にしていた。
そこで取得した技。俺の目の前に突き出された武器持ちの細い手首を左手で掴む。そして、相手の力を利用して右に捻った。すると、スィーフはまるで強い力を引っ張られたかのように空中で1回転した。
これは合気道のようなものである。そのまま流れに沿って俺はダガーを地面に仰向けに倒れるスィーフの首元に当て――――掻き切る。
飛び散る鮮血を無視し、迫っていた武器なしのスィーフに踊りかかった。掴みかかり、足を駆けて転ばせる。その途中でダガーを背中に突き刺して2体目も絶命させた。
咄嗟に顔を上げて周囲の確認。既に純の傍らには2体のスィーフの亡骸が転がり、岳も1体を突破してもう1体と応戦していた。
俺が駆け寄るまでもなく、後方から竜二の風魔法がスィーフに直撃して身体を引き裂いた。
それでも事切れないスィーフを岳が止めの一撃を顔面に食らわせた。
「――――ふぅ。終わったな」
「がはははっ! 俺の方が倒すの早かったな? 隆生」
また勝手に競争しているよあのアホは…………
「はいはい。そうですねーー」
「てめっ!!」
後方で待機していた智久が目を輝かせながら声を上げた。
「みんな強くなってきたねっ! わっち感動っ! 濡れちゃそうっ!!」
「ぐふふふ――――智久きもっ」
「ぶひゃはやっはひゃひゃうひょふほふ」
本当に気持ち悪い奇声を放つイケメン。耳障りなそいつを地面に鎮め、俺たちは強くなっていることは確かに実感した。
そんな浮き足立った俺たちを元のテンションに戻してくれるのが眼鏡君だ――――――――
「はいはいっ! まだ始まったばかりだからねっ! 気を引き締めて進んでいくよ」
手を叩いてそう言う竜二。
「――ったく。心配性だぜ眼鏡はっ」
「まぁ、そういうな純。俺たち唯一の参謀なんだから」
ぐちぐちと不満を言うチャラ男だが、こいつもこいつなりに信用しているのだ。
「それじゃさっさと行こうぜっ」
「――――そうだね。陣形は崩さずに慎重に行こう」
魔草の洞窟は数層に分かれているらしく、俺たちは順調に1層目、2層目を抜ける。そして、純とミズクさんがアナコンディと激闘を繰り広げた3層もなんなく突破に成功する。
おそらく、この階層を支配していたアナコンディがいなかっただろうけど。簡単に抜けられて良かった。
此処まで来るのに、スライム、スィーフ、ゴブリン、ロックボールと戦闘をしたが、多勢に無勢とは有利なもので突破できた。
それらの戦闘での純の活躍は相当なものであった。本当に目を見張るものであった。何かからくりでもあるのだろうか……?
4層目へと続く下り道を目の前にしながら竜二が言葉を漏らす。
「――――此処から先は未開の層だね。慎重に進むよ」
『――――了解』
光るキノコとランプのおかげでだいぶ明かりは確保されているが、先まで見通すことは叶わない。
洞窟とは常に緊張し、何時闇の中から命を狙われると限らない状況である。そのため普段よりも疲労が溜まり、俺たちは思っている以上に体力を奪われていた。
慎重に下って行くと、入り口と同程度の大きさの空間が目の前に現れる。すると何故かほっと安心した気持ちに晒される。
額から垂れる汗を拭き取りながら、竜二は俺たちを見渡した。
「少し此処で休憩しようか――――休める時に休んだほうがいいからね」
俺たちは、近くの岩陰に身を隠すように移動した。俺は擦りきった精神を休めるように、地面に腰を下ろした。
「うへ~……やっと休憩か――――――疲れた」
「もう疲れたのかよっ。だっせぇなぁ~俺は全くだぜっ」
「疲れたねぇ…………」
「純っ。火をつけてくれない? 木を集めてきたから」
「えぇーーー俺疲れてんだけど……」
今、疲れてねぇって言ったじゃないのよっ――――――
この洞窟には折れた木なんどが多く散乱している。森の中にあるからだろうか?
純は渋々ながらも、火打ち石を使って焚き火に炎をつける。
バチバチと音を立てて弾ける飛ぶ火花。焚き火の炎は轟々と燃え盛り、周囲の温度を上昇させる。
「――――――――――」
炎は人の言葉を吸う。揺らめく火を見ていると、沈黙がその場を漂う。
だけどそれは嫌な静寂ではなくて、心地の良い静けさ。そんなサイレントな空気を破ったのは――――チャラ純。
「お前らに聞きたいことがあんだけど?」
おっ? 純からの質問なんて珍しいな……
「――――どうしたの?」
「なんか、変な力とかに目覚めたりとかしてねぇか?」
「変な力――――? なんのこと?」
「――――やっぱり俺だけか? やべぇなっ!! テンション上がってきたっ!!」
いや、何1人でテンション上がってんだよっ
「何を喋ってんの? ついに頭可笑しくなってしまったか?」
「うるせー。お前らにはない力を俺は手に入れてしまったんだよっ」
「だから、それはなんだよって聞いてるでしょ?」
はぁ。疲労のせいか苛立ちがつのる。竜二は慌てて声を上げた。
「能力? どう言うことか詳し説明してくれないかな?」
「あぁ? しゃーねぇーなぁ~。俺の素晴らしき力について教えて上げようじゃねぇか」
此処数日は、純の語りが多いな。まぁ、別にいいけど――――おっと。苛立っていたは駄目だよねっ! 入れ替えっ入れ替えっ。
「魔草の洞窟でアナコンディと戦った時、俺は既に動けない状態だった。そんな時俺の女神が命の危機に晒されたのは話しただろう? その時、何故かはわからねぇが身体から力が漲ってきたんだよっ」
まさか、純がアナコンディに止めをさした話って本当だったパターンなの?
「突然身体から白い靄みたいのが溢れた。そしたら次の瞬間にはアナコンディの首を落としていた」
「それは本当なの――――?」
「嘘はいわねぇよ。俺も最初は勘違いだと思ったが、此処までの数回の戦闘でその力が嘘じゃねぇと気がついた」
――――確かに。目の錯覚だと思っていたが、純の身体から靄が迸っていたような~いなかったような――――
「でも、それって証拠とかあんの?」
「はぁ? あるに決まってんだろ? 見てろよ――――――」
純はそう言うと、真剣な表情で目を瞑る。そして次の瞬間、純の全身から白い湯気のようなエネルギーが一瞬だが溢れ出した。
『おおぉぉ――――――――』
「――おらっ!! 見ただろ!? なっ! でただろ~。やっぱ俺は最強だな」
俺たちがその光景に驚いていると、何かに気がついたのか竜二が声を荒げた。
「まさかっ――――――――――!」
急に腰に付けた布袋に手を突っ込み、ガサゴソと何かを探し始める。
「いきなりどうしたんだ竜二?」
「たしか――――――――ん……あった。みんなこれ持ってるよね?」
竜二が取り出したのは、この世界に来る前に現実世界で其々の机の中に入れられていた紙切れ。
そういえばこんな物もあったな――――すっかり忘れていたけど……俺のは何処にあっただろうか?
「僕も一応まだ持ってるけど……それがどうしたの?」
「ずっと考えていたんだ。この紙切れにどんな意味があるのか――――そして、今それがわかった。まずは皆紙切れを僕に頂戴」
それぞれ、以前手に入れた紙切れを竜二に渡す。俺のは布袋の奥底に挟まっていたよ。
それを受け取ると竜二が自身の推論を話し出した。
「これはおそらくだけど……この世界に送った奴が僕たちに向けヒントのようなものなんだよ」
「――――ヒント?」
「あぁ。この紙切れに書かれていた言葉をもう一度確認してみて――――――」
智久の紙切れ→マジックワールド。浩太の紙切れ→能力。岳の紙切れ→大事な物。純の紙切れ→光の世界。俺の紙切れ→闇の世界。そして――――――――
「――――俺の紙切れには5つの王国と書かれている」
竜二は続けて話す。
「この5つの単語の中で引っ掛かる物はないかな? ――そう。マジックワールド、能力、5つの王国」
「――――なるほど。確かにこの世界の情報と合致しているな。実際に5つの大国があり、魔法の世界。そして――――純の発動した能力」
「そのとおりっ! っていうことはだよ? もしかしたら、純だけでなく俺たちも何かしらの能力が使えるかもしれないよ?」
その言葉を聞いて、あからさまに不満を漏らす純。
「はっ? やれるもんならやってみやがれっ! どうせお前らはできねぇよっ!!」
「はは……まぁ、直ぐには出来ないかもだけどね――――。其々頭の中にでも入れといてよ。もしみんなが純みたく強くなれたら、確実にこの世界を生き抜きやすくなるからね」
確かにこれが竜二の推論通りなら、俺たちにも何かできるかもな――――
「うひょっ! わっちはどんな能力がいいかな~ふふふふふ」
「ぐふふふ――――岳はどんなのが良いの? 息子ロケットとか?」
「あぁ? 浩太ぶっ殺すぞ? お前のもいだろか?」
皆に能力があるとしたら、俺はどんな能力だろう? てか、純は――――?
「純の能力は結局どんなの?」
「俺が知るかよっ。最強になるとかだろうきっと」
「それはないでしょ……どう思う竜二?」
「うーん――――まだ確実な事はわからないけど、全身の強化とかじゃないかな?」
純はその推論が当たっているのか満足そうに頷いた。
「名づけるなら全強化ってところかな?」
「おい眼鏡ッ! そんなダサい名前にするんじゃねぇっ! もっとこう――なんかあるだろっ!!」
「ははは……なら自分で考えておいてね。僕たちはこれでいくから」
「賛成~」
「――――――――この野郎っ!」
純は放置するとして、それにしても――――――――
「――――まるでゲームだな」
「そう……だね。僕たちを此処に追いやったのはいったい誰なんだろう――――」
浩太が思いついたように声を上げる。
「ねぇねぇ。確かこの洞窟ってまだ誰にも攻略されていないんだよね?」
「あぁ――――そう言えば、そんなこと言ってたな」
「それならさっ……せっかくだから僕たちが来たって印を付けておこうよ~」
何を言い出すかと思えば、浩太は以外にお茶目なところがあるからな。後、無駄に想像力が豊かだ。
「ぉっ! それいいなっ!! 俺たちのバンドの絵でも書くか?」
「そうだねっ。書こうよっ!」
以外に乗り気な三人。
「それで誰か書く?」
「うひょっ。それはやっぱり――――」
一斉に1人の人物を見る俺たち。その視線の先の人物は非常に不満顔をで唸る。
「あん? なんで俺を見てんだよ?」
「だって……純が1番上手いだろ? 絵」
「はっ? 別に上手くねぇし」
「上手いじゃんっ! 皆もそう思うよね? はいっ――賛成の人、手を挙げて~」
笑みを浮べながら当然の如く手を挙げる。純は実は絵が上手い――全く持ってその様相からは想像がつかないがな。
意外な才能ってわけだな――――――俺にはどんな才能があるかって? それはもう――――たくさんありすぎるからな~~
「――――っち。わかったよ。しかたねぇな。書けばいいんだろ? 書けばっ……めんぞくせぇ」
そう言って、満更でもない様子でナイフを取り出した純は、岩壁に少しずつ絵を書き上げていくのであった。
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