第89話改造、改良、色々検討

 メグミが昨日と同じく魔物の死骸の回収の護衛をしているとハルミがメグミの方に歩いてくる、そちらも気にしながら、ジャングルから現れる『ジャイアントグリーンバイパー』の首を刎ねる。その生産されたばかりの死骸を見ながらハルミは、


「アレだねえ、死骸の惨さはこっちの方が酷いのに、何だろう砂浜の『カモンシークラブ』に比べて何だか草地に転がる死骸の方が安心するね」


「何となくソレ分かる気がします、『死振撒生贄陣』のは本当に不気味な位綺麗な死骸なんですよね。生きてるみたいなのにある筈の魂だけが抜けたような、不自然さが拭えません、こっちはもう見るからに死んでますからね」


 ドクドクと切り口から血が流れ出る『ジャイアントグリーンバイパー』の死骸をみてメグミは答える。そう、こちらの方が今まで生きていた、殺したという実感が有るのだ、今まで生きていたのだという温かさがその死骸からは感じられる、しかし砂浜に転がる『カモンシークラブ』の死骸にはそれが無い。確かに死んでいるし、つい先刻まで生きていた新鮮な死骸であるのに、そこにそれまで生きていたような温かみが感じられない、そんな筈はないのだけど、冷たい人形様に感じるのだ。

 サアヤがこの魔法を嫌う理由もそこら辺に有るのかもしれない、無慈悲な死、抗う事さえ許されない死に本能的な恐怖を感じているのかもしれない。


「けどまあ、君達は本当にサクサクと狩っていくねえ、これだけの数の魔物の惨殺死骸、それはそれで悪夢の様な光景なのだけどね」


ハルミは砂浜とジャングルの間に有る草地に転がる、夥しい数の魔物死骸を眺めながら呟く、


「まあアレです、残さず利用するので、生命の尊厳見たいなものには引っ込んでいてもらわないと、こいつ等だって他の生き物を食べてるんですから、食べられる側に回ったのも覚悟の上でしょ? 人よりはこういった自然に生きる動物や魔物の方がその辺は厳しい筈だし」


「ふむ、食物連鎖か? まあ無駄にはしないさ、淫魔の部隊の子達も頑張ってくれてるし、ヘルイチは今日もお祭りだろうね、幾らかは冷凍保存もするみたいだし、暫くカニには困らないだろうね」


「蛇も美味しいんでしたっけ?」


「結構おいしいよ、鶏肉に似てる。此方でも幾らか送らずにとって置いて流通させるよ、手伝いの街の人達にもこの街で解体した物を一部現物支給する予定だ、要望があってね、特に『ジャイアントグリーンバイパー』はこの島の街では珍しい陸上生物の肉だからね」


「この島には動物は居ないんですか? 昆虫系と植物系、後は『ジャイアントグリーンバイパー』位しか見ませんね」


「『水の魔王の迷宮』が出来るまでこの島では真水は貴重だったろうからね、それなりの広さの島だが、動物を養う様な水源が無いからね、真水が少量でも生きていける種類の生物しかいないのだろう」


「昔から人はこの島に居たんですか?」


「人というより、今もこの島の住人であるマーメイドやスキュラ、それにマーマン、この砂浜のある入り江が彼らの海中の街だったんだ、今は殆どの住人が地上に上がってきてるけど、海中にも街が残ってるんだよ」


「海中の街ですか? 彼らにはそっちの方が住みやすいんじゃないですか? 何故地上に?」


「この入り江は水深が浅い、だから大型の水棲魔物は入り込んでこない、それゆえの海中の街だが、見ての通り、小型の魔物はいる、というか寧ろ、大型の魔物が居ない分この入り江は小型の魔物には楽園なんだよ、彼らにも楽園ではあるが、海中では常に他の魔物と戦って、その住居を守らなければならない。

 一方地上の街には結界も有るし城壁もある、地上の魔物は入ってこないし海中の鰓呼吸しか出来ない魔物も上がってこない、安全なんだよ」


「元々、人が来る前から彼らの街が地上にもあったんですか?」


「そうみたいだね、特に子供たちを結界を張った地上の街で育てていたみたいだね。そこに目を付けた『水の魔王』が迷宮を作り、最初は魔物の住人だけで迷宮を攻略してたみたいだ。

 そこにヘルイチ地上街を作った日本人がやってきて交流を始めて、その内普通の人間も此方に移住してきて、今のような『シーサイド』の街を作ったらしい」


「へえ、じゃあ人が住み始めて歴史は浅いんですね、その割には住人も多いし、街の規模もソコソコですよね?」


「気候だね、此処は年中暖かい、冬の寒さと無縁だからね、寒いのが苦手な人で潮風が気にならない人、そう言った人間には楽園だろう。水産物の加工なんかで仕事はそれなりに有るし、観光や休息に訪れる人も多い、そう言った人相手の商売も出来る。まあ贅沢を望まなければ良いところだよココは」


「そう言った人達が増えていって街の規模を拡大して行ったんですね、今朝街をジョギングしながら回ったんですけど、昔の城壁後らしき物が幾つかありましたね」


「取り壊すのも面倒でね、そのまま残している、まあ迷宮を中心に扇状に広がって行ってるからね、区画の基準にもなるし丁度いいだろ? だから住人も中心街には昔からの魔物の住人が多くて、両端に近い方に移住者が多い、ただここ十数年は余り拡張する必要性がなくて、街の拡張が滞ってるんだけどね」


「迷宮の特殊性の所為ですか?」


「そうなんだ、冒険者が増えない、地下1階までは皆は入るんだが、地下2階以降がね、しかし今後はまた拡張するかもしれないな」


「その為のあの魔法ですか、私はヘルイチ地上街以外に出たのはこの『シーサイド』が初めてですが、他の街はもっと発展してるんですか?」


「ここよりもという事なら、そうだね、此処は島だ、周囲に開拓村がないからね、この街が海上にポツンと点在している、流通はヘルイチ地上街と定期便だけ、中々発展は難しいね、周囲に小さなサンゴ島は有るけど、この大きさのものは無い、海産物と迷宮位しか資源が無いんだ。まあだからこそ迷宮に普通の冒険者が来てくれることを切望しているのだけどね」


「迷宮に冒険者が来るだけで、そこまで違いますか?」


「分からないかい? 迷宮にマーメイドやスキュラの子達の手が取られている所為で、海の方に手が足りていないんだ、迷宮を冒険者に任せられれば、その分海の開発が出来る、この辺りの海は本当に豊かなんだよ、そこでもっと海産物を取ることが出来れば、加工工場だって拡張できる、そうすれば人手だって必要になる、そうなれば普通の住人の仕事が増えて、移住者も増える」


「乱獲とかになりませんか? 幾ら豊かでも取り過ぎたら生態系が崩れますよ?」


「その辺は大丈夫だ、この入り江だけでも膨大な数の海産物が取れるが、この島の周囲にはサンゴ礁が広大に広がっているんだ、それこそこの島の数千倍の広さでね、そこで漁を少々したところで生態系に影響を及ぼす程の規模では出来ないさ。ヘルイチ地上街の水産物が何処から来ているか知っているかい?」


「大魔王迷宮の水棲階層と、確かヘルイチ地上街の南にある『フィッシャーマンズコート』って港町、後は『シーサイド』からの定期便でしたっけ?」


「そうだね、大魔王迷宮の水棲階層はこちらも不人気でね、『空水気』すらない本当に水中の階層だからね、ほぼこの街から出張しているマーメイドやスキュラの子達だけしかいない。

 『フィッシャーマンズコート』ではサギハンなんかも加わって河口や沿岸で漁をしているみたいだけど、此処より水深が深いところが多い、少し大型の魔物なんかも居て危険なんだ、だからあまり量は取れていない、河口付近の魚が多い位だ。

 現状5街地域の水産物の供給量は需要に対して全く足りていないんだよ、だからこそ『シーサイド』が発展する可能性がある、資源は有るのに手が足りなくて供給出来ていない、この現状を打開出来れば、『シーサイド』は一段上の発展が見込めるんだ」


「ほう、ならあれですね、『水機動鎧』と『害魔弾』は結構凄い革新ですか?」


「そうだよ、君達には感謝している、アレだね十年後位には君達の銅像がこの街の何処かに建ってるかもよ? 街を発展させた功労者として」


「それは遠慮します、報酬をシッカリ貰えればそれだけで満足です」


「一応ヘルイチ地上街でもアナウンスして貰う予定だよ、生憎、今は宿が一杯だけど、転送魔方陣が有る、日帰りならこの街で泊る必要はないさ、初級冒険者を中心にこの街に明日以降クエスト発行するから、沢山来てくれるのを期待してるんだけどね」


「なら纏め狩りは低階層では禁止してください、アレ、一般の冒険者には危険ですよ」


「そうだ言い忘れてた、君達も『電撃網』を覚えた方が良い、あれはこの迷宮の地下2階以降では必須魔法だ。休憩するにしても、狩りをするにしても、あれが有れば安全地帯を作り出せる、昨日の様な場合でも幾つか『電撃網』を設置しておけば安全に対処できる。明日以降この街に来る冒険者には『水機動鎧』と『害魔弾』と合わせて必須魔法として案内する心算だ」


「ふむ? そうか『電撃網』があれば安全なのか……けど纏め狩りしているマーメイドやスキュラが『電撃網』に引っかかったりしませんか?」


「あっ! ……ん、うんまあアレだ、纏め狩りも低階層では禁止するよ、確かに危険だ」


その可能性を見落としていたらしい、少し焦っている、


「味方が掛かる危険を忘れてましたね、『電撃網』って効果時間とかどうなってるんですか? 移動する際に解除しないと放置は危険では?」


「解除自体は直ぐに出来る、効果時間そのものは大体2時間位かな? 徐々に最初に込めた魔力を消費して威力が下がるから、威力ある効果を発揮させるなら有効なのは1時間位が目安かな、確かにこっちも危険だね移動する際には解除するように徹底しよう」


「お願いしますね、そう考えるとあれか、『電撃網』が仕掛けられているか簡単に判別できる魔法とか開発して置いた方が良さそうですね、後でサアヤに相談してみます」


「それは確かに良い考えだな、頼めるかい?」


「まあ自分達の自己防衛の為でもありますからね、それに味方の罠に掛かってとか間抜け過ぎますから、最優先で開発してもらいます、けどもう一つ『電撃網』自体にも改造が必要かな」


「『電撃網』にも? 何故だい、現状でも便利な魔法だよ?」


「便利さは問題ないですね、けど、効果時間に問題が有りますね、そもそも設置してから効果が下がり続けるのは頂けません」


「けどメグミちゃん、設置型の罠魔法ってのはこんなものだよ? 獲物が効果範囲に入ったことを検知しなきゃならない、センサーが常に有効になっているってことはその分魔力を消費する、その場に込めた魔力と魔法式を維持するのにも魔力を消費する、そりゃ魔力消費量を増やせば効果時間だって伸ばせるだろうけど、それでは利便性が損なわれるよ」


「そのセンサー部分の改良と魔法式維持の方法、それにこの迷宮に特化した設置型罠魔法が出来そうなんですよね。

 先ず今の『電撃網』はセンサー部分は範囲内に入ったかどうか魔法的に検知してますが、これを細いワイヤーを作り出して、効果範囲に敷設する方式に替えます、これで常に魔力を消費して検知する必要がなくなる。完全にパッシブで紐への接触をスイッチに作動する魔法に替えることで魔力の消費が格段に抑えられます。

 魔力維持にはこのワイヤーも使って広範囲から微量の魔力を吸収する仕組みを導入します。これで何日でも解除しない限りその場に罠が設置されたままになります、紐を作り出しているので紐の劣化による罠の寿命がこの魔法の効果時間になりますかね。

 そしてこの迷宮特化ですね、『魔水膜』で常にこの迷宮の魔物は体の周りにエーテル、魔力の塊を纏っているのですからこれを利用しない手は有りません、設置してある紐を利用して、このエーテルを吸収して発動する魔法式に組み替えます。この罠にかかった獲物は自らの魔力を利用されて、感電死するわけです。これで紐の創造に多少魔力を割かれても、発動する為の魔力が必要有りませんからね。全体としての魔力消費量は返って下がるんじゃないでしょうか?」


「……あれだね、発想力の差か、君は本当に面白い事を考える、そしてそれを可能にする人材が手元に居るんだから、っ全く、これはヘルイチ地上街の技術者が諸手を上げて君達に協力するわけだ、面白い、先ほどの罠の検出と新しい罠魔法、これを作って貰えるのかな?」


「ええ、けどまあサアヤとも相談します、私だけなく、他の人の意見を聞けばもっといいアイデアが沸くかもしれないし。ただ魔法の機構自体には新しい物は何もない、既存の機構の組み合わせだけですので比較的簡単ですよ、時間さえ貰えれば自分でも魔法式を組み立てられそうなものですからね」


「これは益々、冒険者の増加か見込まれるな、全く大助かりだよ、ん? あっ、ちょっと失礼するよ」


そう言ってハルミは通信魔法球を胸の谷間から取り出した、振動音が聞こえたのでマナーモードにでもしていたのだろうが、


(あれね、下半身から取り出されても困るけど、胸の谷間から取り出せれるのもどう反応したらいいのか困るわね、なんでポケットに入れないんだろ? 丸いからポケッドだと変に目立つのかな?

 あれよねこの通信魔法球も改良が必要よね、ペン型にしてフックを付けて胸ポケットに挟めるようにしても良いし、スマホ見たいに板状にしても良いし、魔法球そのままである必要性が皆無なのよね、まあ映像の投影には球状で有るのは便利だけど、それにしたってその部分だけ球状で有れば良いだけだし)


そんな風にメグミが新たな商品の開発を思案していると、通信魔法球で誰かと話していたハルミが、


「メグミちゃん、今連絡が入ったよ、プリムラ様が此方に昼頃やってくるのが確定した、その頃時間を空けてくれないかな? 都合は如何だい?」


「昼ですか、この後、魔術組合に行って魔法の引き渡しとかして、昼もとなると今日は真面の迷宮に行くのは無理かもしれませんね、まあ良いです、新魔法の実験にだけ行って直ぐに帰るような予定になりますが、プリムラ様には聞きたいことも有るし、それで構いません」


「ん、わかったそう伝えておくよ」


そう言ってまた通信魔法球に語り掛けている、そのピンポン玉より少し小さな魔法球を左手に持って、投影される映像を右手で操作している姿に、


(やっぱり早期に改良が必要よね、あれ絶対使いにくいわ、やっぱりペン型がベストかしら? 投影部だけフロー型にして浮くようにしておけば胸ポケットに挟んだまま操作できるように出来るわ、円筒状に魔方陣と魔法回路を重ねれば球形よりも返って処理能力上がるんじゃないかな? 特化型だし、その方向でこの後試作してみるかな)


そう思ってハルミの方をじっと見つめるメグミに、


「おい、ハルミさんが美人だからって、変な事するなよ? 副組合長なんだからな?」


 そういってターニャをまたも肩車したタツオが歩み寄って声を掛けてくる、周囲をみると死骸の回収も大体終わっていて、残すは先ほど倒した『ジャイアントグリーンバイパー』位である。


「なんで私が女性を見てるだけでそんな風に言われなきゃいけないのよ、失礼ね、ただ通信魔法球が不便そうだから改造案を考えていただけよ」


「そうなのか? そりゃあ悪かったな、通信魔法球か、スマホ見たいな物だが、確かにただの球ってのも安定性に欠けるな」


ハルミが手に持つ通信魔法球を見ながらタツオが答えると、此方も転送を粗方終わらせたサアヤが此方に歩み寄ってきながら、


「タツオお兄ちゃん、メグミちゃんの言い分をあまり信じてはダメですよ、今朝だってノリコお姉さまの胸に吸い付いていましたからね、私だって吸われたんですよ!」


「……おまえは本当に何やってんだ? ノリコよく怒らなかったな? 下手したら泣いてるだろ?」


「寝ているノリコお姉さまの胸を吸っていたんですよ! ノリコお姉さま、寝つきが凄く良くて一度寝ると中々起きないんです、それを良いことに好き放題やってました」


「サアヤだって明日する予定じゃない、それに良いのよ少し位、減る物じゃないでしょ?」


「あれだな、お前らと一緒の部屋にノリコがいることが問題だな、狼だらけの部屋に子羊が居るような物だろ? 部屋替えを『ママ』さん辺りに訴えるか?」


「ダメですよタツオお兄ちゃん、私がまだです、それにメグミちゃんならたとえ部屋が違っても忍び込んででもやる時はやります。無駄ですよ」


「サアヤ、お前もアレだな大概だな? 最近メグミの悪影響受け過ぎじゃねえか?」


「失礼な! メグミちゃん程ではないですよ私は! 大体タツオお兄ちゃんはなんでまたターニャを肩車してるんですか! ターニャばっかりズルいですわ」


「これは勝手にターニャがまた登って来たんだ、したくてやってるわけじゃねえよ、なんだサアヤもして欲しいのか?」


「してください! 是非!」


《タツオ殿、できれば私もお願いします!》


「おまえもか『カナ』、まあ良いけどよ、そういえば、『カナ』お前、精神年齢的には幾つ位なんだ? 生まれて間もないってことは結構子供なのか?」


そう言いながらタツオは不満顔のターニャを肩から降ろす、


「んっ!!!」


抗議してくるターニャの頭を撫でながら、


「また後で施設に帰るまでやってやるから一回交代だ、我慢できるな?」


「ん!」


元気よく了解の返事をするターニャの頭をポンと軽く叩いて手を離すと、サアヤの腰をヒョイと掴んで持ち上げ肩に揚げ様として、正面であったことに気が付く、


「流石に顔に押し付けるのはどうかと思うわね、もしかしてタツオ変態?」


「違うよ、間違えただけだ! お前にだけは言われたくねえよ!」


そしてサアヤを持ち上げたまま、回転する様にして投げ上げると反転させて受け止める、


「ヒャァ、わっ、タツオお兄ちゃん無茶しないでください、せめて投げる前に声を掛けて!」


「ん? ああ、悪い、ついな、ほら、でもこれで良いだろ?」


そのまま頭の後ろまでサアヤを移動させて肩車をしてしまう、タツオがそうしてると華奢で小柄なサアヤは本当に子供のようだ、


「わあ、やっぱり高い、目線の位置がまるで違いますわ、メグミちゃんや『カナ』を見下ろせるなんて!」


そう言ってはしゃいでいる。『カナ』はそんなサアヤを羨ましそうに見ている。


「あれね、『カナ』ってやっぱり見た目以上に精神は幼いのよね、言葉はシッカリしてるし、姿は当然十代後半なんだけど、下手したらターニャよりも精神的に幼いのかしら?」


「そう思ってるなら、おまえ『カナ』に余り変な事はするなよ、小さい子に変態行為とか犯罪だぞ?」


「うるさいわね、自重するようにしてるわよ」


《でもマスター、この間乳首吸いましたよ?》


「おまえ何やってんだ! どの口から自重なんて言葉が出たんだ!」


「メグミちゃん、本当に歪みないですわね、もう『カナ』にそこまでやってるんですか」


「んっ!!」


「あれは性的な意味は一切ないわ、『カナ』は血液が人間の物と違うし、味がどんな風に違うのか科学的な好奇心で確かめてみただけよ」


「乳首に味とかあるのかよ! お前は本当に少し自重しろ!」


「あるわよ! 今日もノリネエとサアヤのを確かめたけど、二人だって全く違うわ、リズやジェシカやサンディだって違うし、『カナ』だって違ったわ、今度『ママ』のも吸って確かめる予定よ!」


「ねえメグミちゃん因みにどんな風に違うんですか?」


「サアヤそこを突っ込むんじゃねえ!」


「そうね、リズ達はそれぞれやっぱり母乳の味がするのよ、美味しいわ。『カナ』もなんだろ? いい匂いはするけど、塩味が全くしないのよね、冷却用の汗の成分が水分だけだからかしらね? 不味くはないけど物足りなかったわ。

 サアヤは寝起きだったからか若干塩味で美味しかったわ、不思議なのがノリネエよね、ほんのりと甘いのよ、母乳も出てないのに不思議だわ、巨乳だからかしら? 『ママ』のも味わって差を比べたいところね、そもそも『ママ』は精霊だし、人間の物とどんな差が有るのかも興味があるわね、大きいけど母乳とかは出無さそうだし」


「くっ、聞きたくねえな、親しい女性の乳首の味の情報とか!」


「妄想が捗って良いんじゃないの? こんどアカリさんとカグヤも吸っておくわね」


「ターニャは良いんですか?」


「ふっ、ターニャはあと数年は我慢してあげるわ」


「ん?」


「食べごろになるまで我慢よ、流石に幼女に手を出すのは道義に反するわ」


「リズは12歳ですよ? ターニャの方が年上ですけど?」


「リズは別格ね、胸のサイズが既に立派な大人だもの」


「なあ、君達、なにを話しているんだい? なんだかメグミちゃんは野放しにしているのが非常に危険に感じるんだが……」


「なに? ハルミさんも味見して欲しいの? そうねマーメイドやスキュラ、それにハーフマーメイドの味ね、興味があるわね、どんな違いがあるのか非常に興味があるわ、どう? ハルミさんこの科学的な実地調査に協力しませんか?」


「私も未婚で微妙な年齢の女性なんだよ! 変な噂が立つような実地調査には協力しかねるね、それよりソロソロ回収も終わりだ、城門を締めたいから君達も戻ってくれるかな?」


「ハルミさん、バレなきゃいいんでしょ? 今度施設に来た時にこっそりお願いしますね」


「断る! そうだここは断固として断ろう! なあ早くその『ジャイアントグリーンバイパー』を片付けてもどろう」


「分かりました、では報酬をお出ししましょう、そのハルミさんの通信魔法球をペン型にして使いやすい物に変更してあげます、それで手を打ちませんか?」


「これをペン型に? そんなことが出来るのか? いやメグミちゃんが言うなら出来るのか……」


「迷うなよハルミさん、コラ、サアヤも止めろ」


「そうですね、ペン型は良いアイデアかもしれません、そうね、これは良いかも」


「ダメだ、サアヤは話し聞いてねえ」


《あの、肩車は?》


「ああ、そういや忘れるところだったな、どうするサアヤ、降りるか? もう気が済んだか?」


「門までこのままお願います、『カナ』は施設に帰ってからやってもらいなさい」


「施設内だと『カナ』の背の高さだと頭打つだろ? 施設に帰るまでの道のりは……」


「ん!!」


「っとまあターニャの予約済みだしな、うーーんどうせ飯の後暇だしプールでやるか?」


「やるわねタツオ、水着姿の『カナ』を肩車だなんて、太腿を直で味わいたいだなんて」


「違うだろ! 誰も水着だなんて言ってねえだろ」


《私は水着で構いませんが?》


「『カナ』水着だとタツオの剛毛がチクチクするわよ?」


「もう水着から離れろ! そうだなプールは万が一転んだ時危ないな、庭でやろう、あそこは芝生だし万が一も危なくねえ」


「無理しないでプールでやったら? 水の中なら転んでも安全よ?」


「あ、それは楽しそうですね、プールの中で肩車は良いかもしれません」


「ん!」


「ターニャもして欲しいの?」


「ん♪」


「だってタツオ良かったわね、水着の女の子を肩車し放題よ」


「もういい、お前らこれ以上喋るんじゃねえ! ほら戻るぞ、サアヤこれ転送しとけ」


「ああ、でも私は魔法組合にもいかないとダメなんでしたわ、戻るまでプールで遊んでいてくださいね、先に終わったらだめですからね!」


 サアヤが『ジャイアントグリーンバイパー』の死骸を転送し終わると一同は城門に向かって歩いていく、その後ろを付いて歩きながらハルミは、


「うーーん、ペン型か確かに便利そうだな、けどメグミちゃんに胸を吸われるのか、うーーん」


未だに真剣に悩んでいた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る