第90話対価

 扉の向こうから声が聞こえる、


「うぅ、情けない、なんでこんな、ぁぁぁあ」


「ふふっ、綺麗な胸ですね、大きいと思ってましたが、形も色も良い物持ってますねハルミさん」


「くぅぅ、メグミちゃん、もういいだろ? あっ!」


「ダメですよ、まだ全然ダメです、漸く……ほうっ、これは肌の滑らかさがやっぱり独特ですね」


「っふぅ、そりゃ半分はマーメイドの血が入っているからね、長時間水中にもぐっていてもふやけない理由がこれだよ、あぅっ」


「この皮膚、薄い膜の様な物で覆われているからでしたっけ? 『胞衣』ですっけ? 独特の滑らかな肌触り、良いですねコレ、水分の保持も出来てるんですねプルプル、どれ早速味見を、んくっ」


「あっ、ああぁ、なんで舌でコロコロとぁあ、くぅっ、上手いわ、なっ慣れてないかい? なんだか、矢鱈と慣れすぎだろう、あ、コラ、噛んだらダメぇ」


「ぷふっ、ハーフマーメイドですか、なるほど面白い、マーメイドと他種族の男性では必ずマーメイドで生まれるし、マーマンとの間ではマーマンかマーメイドの何方か、なのにハルミさんは両親共に女性ですか、ほぼ人間の様な外見なのにマーメイドの様な『胞衣』も持つ、そして乳首のお味は大変に美味、んふっ、マーメイドって『胞衣』越しでも母乳が与えられるようになってるんですよね、そう考えると『胞衣』って便利ですね、呼吸も『胞衣』のお陰で水中でも肺呼吸なんでしょ? マーメイドって」


「あぅ、そうだよ、この『胞衣』が水中でも肺に酸素を送り込んでくれる、浸透膜の様な物なのだろうが一種の魔法だろうね、種族の固有魔法の様な物だね、物質として存在するから固有錬金魔法だろうか? はぅ、なんでお尻まで撫でるんだい、くっ」


「魔法で人間に『変身』して、足を作ってるわけじゃあ無いんですよね? この街のマーメイドは太腿の途中から魚の様な鱗に覆われた下半身の方が多いですが、資料で読んだ他の地方のマーメイドは臍の下あたりから下半身が魚のようでした、なんで違いが?」


「メグミちゃん、乳首を咥えたまま平然と喋らないでもらえないかな? いい加減もう乳首は良いだろ? そのまま喋られると、微妙な振動がね、くふっ、あぁ、この街のマーメイド達は2足歩行で歩くことも多いからね、臍の下まで魚形態だと、魔法で人型に『変身』すると下半身素っ裸になるだろ? だから下着を付けれるように太腿の途中から魚形態になるようにしているのさ、まあ私は元々人形態で、『変身』で人魚形態になるんだがその際も、靴だけ脱いだら良い様に膝上までだね魚形態は、尾鰭さえあれば結構泳げるからね、あっ、こらスカートの中に手を入れるのはダメぇ!」


「フィンスイミング見たいなものなのんですね、マーメイドの人達は3段階『変身』なんですか? 人間形態、中間形態、人魚形態って?」


「イヤ、違うふくぅ…………ぷはっ、なんでキスしたのメグミちゃん、乳首だけって言ったじゃない!」


「え? だって美味しそうな唇がそこに有るから、ねえハルミさん、両親が女性ってことはハルミさんだって女性がイケる口なんじゃないですか? だってココまでやってるのに余り嫌がってませんよ」


「うううぅ、違うわ、一応男性と結婚したいと思ってるのよ! ちょっとそっちも良いかなと思うけど真正じゃないわ!」


「嘘ばっかり、だってもう抵抗してませんよ、ほらっ」


「……はぁぅ、ダメよ、年上を揶揄わないで、さっきの、んっ、質問だけど、この街のマーメイドは太腿の中間から下が魚形態の状態が普段の姿よ、そんな風に自分達で変化していったんですって」


「普段の男っぽい喋り方のハルミさんも可愛いけど、この喋り方のハルミさんもとっても可愛いですよ、こっちが素ですか?」


「んんぅ、だめっだめ、下着の中はダメ! ココまで、ココまでよメグミちゃん、流石にこれ以上はダメぇぇ!」


「ココまでですか? 仕方ありませんかね、むうぅぅ、まあいいか!

 ではこれが約束の品物です、設定は他の通信魔法球と変わりません、通話の際には、耳と口元にこんな感じでイヤホン部分とマイク部分とが作り出されます、でこうすると目の前に拡張現実空間で操作部分が浮かび上がるのでこれで操作できます。OSは以前の通信魔法球と大差有りませんから操作で戸惑うことは少ないと思います、本体はこうして小型の円柱形でクリップ式にしてますから胸のポケットでも襟の部分でも好きなところに挟んでいてください、安全ピンタイプにも出来る様にしてますから、激しい動きをする際にはそちらで確実に固定してください。

 耐衝撃と防塵も備えてますから少し位乱暴に扱っても壊れません、防錆は海水、防水は水深100メートル位までを想定して造ってますけど、テストしてないので実際の耐水深度は分かりません、一度壊すくらいの心算で深く潜って試してくださっても構いませんよ。またお礼をしてくださるなら、直ぐに新しいのを作ってあげますから」


「この短時間でここまで? 本当にメグミちゃんには驚かされるね、これは凄い、セキュリティは?」


「パスワード入力と、声紋と網膜認証の3段階です、ユーザー登録の設定が有りますよね、そこで設定してください、パスワードの入力画面は毎回キーの並びがランダムで変わるので気を付けてくださいね、手の動きでパスワードを読まれるのを防止するようになってます」


「全く、どこまでも抜かり無しか、しかしそれだと緊急時の応対に困らないか?」


「通信応答だけは3段階の内のどれでも可能になってます、また装着時に認証していれば装着中はスリープモードで待機、認証なしで直ぐに使えます。また着信はマナーモード中は振動か発光によって知らせてもらえます。隠密行動中でも使える様に発光は本人以外認識できません、外部に光が漏れることも有りません。念話機能も持たせているので緊急時にはそちらで音を漏らさずに通信も可能、どうです優れモノでしょ?」


「凄いな、しかし何だか、技術レベルがぶっ飛んでないか?」


「既存の魔法を応用すれば色々可能なんですよ? そもそも通信魔法球の操作は実際にモノに触れて行っているわけではなく、その空間に魔法で幻影を投影、そして手の動きを読み取る事で認識しています。

 これを応用発展させ、目の前の空間でなく使用者の視覚情報に幻影を直接流し込んでます、空間投影よりも非常に省魔力で同様の操作を可能にしてます。体の動きを読み取る機構はそのままですし、特に難しいことは何もしてませんよ。

 また空間に投影もこのペン方のお尻に付いた魔法球によって可能です、第三者に説明が必要な時な此方を使用してください。少し魔力を多く使用しますが、どうせ短時間です問題ないでしょ。

 そして基礎的な構造は通信魔法球と一緒、通信通話の機構はマイクとスピーカーの機構を小型にして極短距離に配置することにより此方も魔力の消費を押さえています。

 無駄を省いて技術を応用しただけですね、使いやすい形にインターフェイスを整えただけで、基本一緒なんです。なんで今まであんな使い難そうな形状で使用していたのかが私には理解不能です」


「ふーん、ねえ、コレ量産予定はあるのかい?」


「取り合えず、こちらのパーティーメンバーに一通りと、この場に来ている知り合いにも配るように予備を含めて20個ほど同型の試作品を作りました、この試作品を暫く使用して不具合を探り出して、それを解消したらヘルイチ地上街で師匠達を通して工房に頼んで量産しても貰うかもしれませんね、防具も今量産型の構造を試作してるみたいだし、今回のこれも結構儲かりそうですよね」


「そうだなこちらも暫く使用して試してからになるが、冒険者組合で優先的に購入させて貰えないだろうか? あと20個作ったといったね? 今此方に来ているのは12人だろ? 私が1個貰っても後7個あるんだね? もう何個か貰えないかな? この街の受付嬢に渡して、もう少し試してみたい」


「えっ? お代を更に貰っていいんですか? じゃあ今度は本格的にやっちゃって良いですか? 大丈夫ですよ、優しくしますから!」


「あっ! ……うぷっ、んんっ、コラ! ダメだ、これ以上はダメだってば! お金! お金で払うから! なんで何時も私の体が代金替わりなの?!」


「いえ別にハルミさんだけでなくても、試していただける受付嬢の方の体でも構いませんよ?」


「他の子達にまで手を出す気かい? それは許可できない! 今の行為は私の判断で決めたことだ、仕方がない、しかし、他の子に同じ真似はさせられないよ」


「ええぇ、折角マーメイドやスキュラの娘と色々出来ると思ったのに……本当にダメ?」


「ダメだ! それにメグミちゃん、学術的見地からの胸の味の違いの実地調査の筈なのに、キスまでしたしお尻だって触った! これは対価の払い過ぎじゃあ無いのかな?」


「ハルミさんだって喜んでましたよね? むぅぅぅ、分かりました、今回は追加で3個渡します。本当は残りは全部プリムラ様に渡して、売り込もうかと思ってたのに……まあ4個も渡せばサンプルとしては十分かな? 不具合出しにも試用個数は多い方が良いだろうし」


「太腿とお尻撫でながら言わないで、あともう乳首は禁止です。もうお終いですからね」


「追加で3個も渡すんだからもう少しサービスしてくれても良いと思うんですけど!」


「ダメです! コラどこ触ってるんですか!」


「下着の中はダメなんでしょ? なら下着の上からならOKでしょ? んちゅーっ、この辺は人とあまり変わりないんですね、マーメイドも一緒なんですか?」


「下着の上からでも、そこはダメです! もうお終い! 終了! 後マーメイドも基本替わりません! だから終わり、良いですね!」


「ああっ! なんで服を着ちゃうんですか! ケチ! ケチ臭いなハルミさん! ここは年上の貫録を見せてもっとサービスすべきでは?」


「これ以上はダメです! こうしているだけでも上にバレると色々問題が有りそうなんですから、絶対にこれ以上はしません!」


「何ですかその手は?」


「追加の3個渡して! 今日は淫魔の子達も来てるし、これからプリムラ様だって来るんだから、忙しいの、早く組合事務所に帰らないといけない、ほらメグミちゃん、急いで!」


「急につれないですね、なんだろう? 納得いきません……んぷっ」


「……ぷはぁ、ほらサービスでキスしてあげたんだから急いで!」


「もう少し、言い方と雰囲気があればもっと素直に渡せるのになぁ、まあハルミさんにそれを求めるのは酷か……」


「なに? 言いたいことが有るなら聞こうじゃないか!」


「そんなんだから未だに恋人がいないんですよ! 同性でも異性でも、それじゃあ雰囲気ぶち壊しですよ?」


「メグミちゃん、微妙な年齢の女性に言っていい事と悪いことが有るのをお姉さんが力尽くで教えてあげようか?」


「なっ! マジ切れしないでください、大丈夫ハルミさんは若いですって、ピチピチしてましたよ? ほ、ほらっはい追加の3個です、後で使用感とか改善要望をレポートにまとめて下さいね」


「メグミちゃんて引くときは一気に引いて、此方に怒らせないようにするのは少し卑怯だね、少し位怒らせてくれた方が相手のストレスが発散されて良いと思うんだけど?」


「マーメイドの人もそうですけど、ハルミさんも結構細いのに脚力有りますよね? こうドルフィンキックとかされると非常に危険なんですけど?」


「普段から泳いでいるからね、全身をくねらせる様な泳ぎはマーメイドの基本だよ」


「ペシペシしないでください、結構痛いです! 言い過ぎました、謝るから!」


「まあこの位で勘弁してあげよう、じゃあこれは貰っていくよ、ありがとう、またレポートは持ってくるよ」


 扉が開いてハルミが出てくる、何時ものその受付嬢の制服に似た薄手のブラウスに、タイトなスカートといった服装に乱れはないが顔が少し赤い。普段通り淀みのない足取りで、施設の玄関に向かう。しかしよく見るとその首筋にはキスマークが付いている、そのことにハルミ自身は全く気が付いてはいないようだ。

 開け放たれた扉の中には、ベットが見える。メグミはそのベットの上に寝転がり、開け放たれた扉の方をボーっと眺めながら


(下を触りながら思いっ切り吸ったんだけど、あれだけ吸ったら普通キスマークがつく位分かるわよね? 隠しもしないでそのまま出て行ったけど、もしかしてハルミさんその手の経験が全く無いんじゃない? もしかして処女なのかな? あの年で? それはそれで貴重ね!

 けどあのキスマーク、誰が一番最初に指摘するのかな? 受付嬢の娘? プリムラ様に会うとか言ってたし、案外プリムラ様が指摘するまで誰も指摘しなかったりして……まあいいか、それはそれで面白そうだわ)


意地悪そうににんまりと笑う。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る