第46話小さな手

 アツヒトに連絡を取ると、一度仮設本部に戻るようにとの事だった、どうせ転移魔方陣で一度入り口付近に戻り、そこから階層主の所に行く予定だったので一端迷宮を出て仮設本部に行く。


「よく来たね、待っていたよ、まあ、そこに座って」


とアツヒトの勧められるまま仮設本部内の会議室のソファーにメグミ達が座る。


「で? 何の用だよアツヒトさん、何かあったのか?」


「うん、まあね、良い話と悪い話、どちらから聞きたい?」


「一仕事終えたばかりなんだ、良い話から頼まぁ」


タツオのその言葉に、アツヒトは周りを見回し、メグミ達の同意の頷きを見て、


「では、良い方から話そう。黒鉄鉱山の開封作業が済んだ、全ての閉鎖ルームに通路が通って、中の魔物も始末が付いた。後は落盤を防ぐ補強作業を進めるだけなのでその護衛が主な作業になる、この護衛は初心者、初級の冒険者でも十分だ。鉱山管理事務所でクエストを発行しているので、そちらに初心者・初級の冒険者には回ってもらっている」


「それは良かったですね、では、そちらに回っていた中級以上の冒険者の手が空いたんですね」


ノリコが胸の前で手を合わせながら喜ぶ。


「ああ、手は空いたんだけどね、此方には余り応援に回せそうにないんだ……」


「ん? それが悪い方の話なの?」


メグミが聞くと、


「まあ、先ずは良い方の話をしてしまおう。此方にも応援が来てくれることになった。地下2階の捜索・調査に回ってくれるそうなので君たちの希望通り、地下2階の調査はパス出来る可能性が高くなった。まあ、絶対じゃあない、調査の進展次第では領域主・階層主の討伐が必要になれば、やはり人手が要るからね、その時は申し訳ないけど頼むよ」


「此方にも応援って、まだ人手が有ったんですか? 今回は他国の手は借りれませんのでしょう? どこから沸いてきたんですか?」


アカリが訝し気に聞く、何か思うところがあるのか余り表情が優れない。


「あーーと、うん、まあアカリちゃんの予想通りだよ、『光の聖域』対策が出来きるようになったことと、『人間狩り』の連中が相手だと何処かで知ったようでね……」


「情報源はアツヒトさんでしょう? どうせ口を滑らせたんだ、絶対そう」


「うっ、いや、あのね、僕はカマかけられただけで、既にどこかから洩れてたんだよ、本当だよ、あの、アカリちゃん、武器はしまおうね、いやそれはシャレにならないから」


 アカリのランスが回転に唸りを上げ、棘が立ち上がり、真っ赤に灼熱化してアツヒトに迫る。カグヤがそんなアカリの腰を引っ張りながら、


「アカリ先輩、こうなるのは分かってたことでですわ、『人間狩り』には随分やられてます。アツヒトさんが漏らさなくても必ず出てきますわ、落ち着いてください」


「ねえ、この話の流れだと、出てくるのはサキュバスの人達?」


メグミが尋ねる、


「いや、サキュバスだけじゃあない、インキュバスの人達も出てくるから『淫魔』全体だね、ただね『光の聖域』対策の、その首飾りの数が足りないので、参加人数は50人前後になるけどね。どちらも武闘派が6人パーティで4組、二つの種族を合わせて8組のパーティが加わる。低階層にはサキュバスの一組が回ってくれるから、その人達に地下2階層に回ってもらう」


アカリは未だにギュンギュンと唸りを上げるランスをアツヒトに突き付けたまま、


「どうせその一組は、お母様達なのでしょう? あの人達が出てきたら無茶苦茶になりますわよ? 誰一人『自重』って言葉と無縁な人達ですわよ!!」


「けどねえ、拷も……尋問でもお世話になってるからねえ、そっちの方面からも漏れてたんだよ、あの人たちはその方面でもプロだからねえ。本当にアカリちゃん達が協力してくれているって言っただけなんだ僕は、ねえ、だからそろそろ武器を下ろして貰えないかなぁ、ごめん、悪かった、許して!」


アカリは溜息をつきながら武器を下ろし、再びソファーに座り、頭を抱える。


「ふんっ、もうどうなっても知りませんわ、好きにしたら良いですわ」


「ねえ、何がそんなに不味いの?」


「メグミ先輩、アカリ先輩のお母様達はね、そのお母様が一番若いくらいで、他は200歳越えの化け物揃いですわ。単純な魔力もそうですけど、生きてる時間の長い『魔族』は規格外ですわよ。サキュバスのアイドルグループご存知ですか?」


「あぁ、魔法球TVで見たことあるわ、6人組の……『サキュビ69』だっけ? 稀に見るひっどいグループ名だと思った。けど流石にアイドルね、みんな可愛いし美人揃いで、レベル高かったわ」


「多分、此方のこちらの応援に回ったのはその『サキュビ69』ですわ、あのうちの一人はアカリ先輩のお母様ですもの」


「…………ねえ、アイドル嘗めてない? 子持ちのアイドルとか、良いのかこの世界の男共は!」


「まあ、誰も知らないじゃないですか? アカリ先輩今はおばあ様の所に居ますし、お母様とおじい様の仲が嫌悪ですからね、ご実家には戻ってないから」


「メグミちゃん、『会ってヤれるアイドル』ですからね、その辺は言わない約束で成り立ってるのですわ」


サアヤは流石(?)はこの世界の住人なのか、達観した様に言う、


「まあ、良いけどね、でもあの中の一人か……あれ? あの清純系の子? え? なんだろ、カグヤやアカリさんから聞いてたお母様像とちっとも一致しない、すっごい善人ってか穢れを知らない乙女の様な……でも似てるよね、雰囲気もアカリさんにすっごい似てるわ」


「多分その人です、それが私の母です、ええ、もうね、いい年した自分の母がアイドルですわよ、私の気持ちが分かりますか? そりゃサキュバスは不老不死、見た目でさえ、ある程度どうとでも成りますわ。見た目はあんな清純そうな感じでもね、中身はビッチです。子供生もうが体形なんて崩れませんわ、私を生んだ後、処女の振りして純情な男の子を騙したことも有るそうですわ。それをまた武勇伝の様に語る、最低の性悪女ですのよ? あの見た目に騙されてはいけませんわ」


「ちなみにワタクシのお母様もあのグループの一員ですわ」


「待てカグヤ! あんたのお母様は旦那さんがいるでしょうが!!」


「お父様も喜んでますわ、『自分の嫁がアイドル』だって、萌えるって」


「ねえ? メグミちゃん、私最近心配なのだけどこの街の男の人に真面なまともな人はいないかしら?」


ノリコが心配そうに小声で聞いてくるが、そんなものメグミだって知らない、


「ノリコちゃん、酷いなあ僕は真面まともだよ?」


「ちなみに処女だって騙された純情な少年の成れの果てがアツヒトさんですわ」


カグヤがこっそり教えてくれる、


「あぁ、そうかアツヒトさんにも辛い過去が有るのか、それでこうなっちまったのか」


タツオが同情と実感がこもった様に呟く、


「あのね、カグヤちゃん、聞こえてるからね…………まあ僕のことは置いといて。この応援の人手迄が良い話だ」


「え? 良い話だったの? 今の?」


「後半の内容は応援とは関係ないよ? それに今では良い思い出だよ」


「そう、強くなったのねアツヒトさん」


メグミは生温かい目でアツヒトを見つめる。


「未だに未練たらたらでアカリ先輩のお母様の所にお客で通ってますわよ?」


「駄目な大人になったな、アツヒトさんよお」


その場の全員が冷たい目でアツヒトを見つめる。


「僕のことはほっといてくれ、吹っ切って色々巡ったけど忘れられないことだってあるんだよ」


「茶番は良いので、そろそろ話を進めていただけますか?」


ノリコが真面目なまじめな顔で話を促す、その声はどこまでも冷たい。


「茶番…………ああ、悪い方の話だが、オークの討伐に行った男の子達が苦戦している。大分状況が悪い、どうもね何処かの馬鹿が『武器』と『女性』をオーク達にばら撒いたらしい」


「ちょっと待てよアツヒトさん! 『武器』はともかく『女性』をばら撒いたって言葉は頂けねえな! それは人を道具の様に言ってるのと同じだろ!」


「そうね、タツオが珍しく良いこと言ったわ、訂正してください」


「うん、ごめん、訂正する。武器を供与して、女性をオークの居るところに連れて行った馬鹿が居るんだ」


「『聖光騎士団』の連中か?」


「おそらく間違いないだろね、まあね『武器』は他国で造られた武器が殆どで、この地域とは製法も違う、普通の『武器』だ、オークの攻撃力が上がって、怪我人が出ているが、まあ何とかなるだろう。でもね『女性』の方はよろしくない、非常に不味い」


「そりゃ不味いだろ? 助け出さないと、こっちも人手は足りないがそっちは緊急だろ」


「ああ、君たちはまだ知らないか、まあ当然だね、オークの所に行った『女性』は手遅れだよ、もう手の打ちようがない」


「まだ生きてる人もいるでしょ? 何? 手遅れなんて、ふざけてるの?」


「メグミちゃんは、知らないんだね、別にオークに犯されたから手遅れとかそう言ったことじゃないんだ、今回オークの所に連れていかれた『女性』は『奴隷』なんだ」


「ど?? 『奴隷』?」


「この異世界にはね、未だに当然の様に、普通に『奴隷』が居るんだ。この地域には居ない、召喚者の多い他の地域でも召喚者達の働きかけで減ってきている。アメリカ人やドイツ人の多い地域はねもう殆ど居なくなっている。

 けどそれはほんの一部なんだ、その他の多くの地域では『奴隷』として人間が平気で売り買いされている。そして今回奴らがオークに渡した『女性』は『奴隷』だ、しかも少し年嵩としかさの」


サアヤ達、この世界の人達はどうやら理解が及んだらしい、溜息をついている。だか、メグミ、ノリコ、タツオには意味が分からない。


「『奴隷』が居るのは許せねえが、そのオークに連れ去られたのが『奴隷』だから助けえってのか? 俺はそんなのは許せねえ! 相手が誰であろうが助ける! 手前らが助けえなら俺が助けに行く! オークぐれえなら、今の俺なら群れで来たって何とかならぁ、見損なったぜアツヒト!!」


「落ち着いて、タツオ君そう言ったことじゃないのよ、あなた『奴隷』、特に女の『奴隷』ってどんなものか知ってるの? 酷いわよ? 

 10代前半位からある程度の見た目の女の子は『性奴隷』よ。嫌も何もないわ、延々犯されるの、普通にじゃないわ、普通の人にはできない様な行為を『性奴隷』にはさせるのよ。そして運よく生き残って、年が有る程度行くと、そのまま『労働奴隷』、まあ散々玩具にされてまともに動ける人達の方が少ないでしょうけどね。そんな『労働奴隷』の待遇は酷いわよ」


「え……? あの、それは一部じゃないの?」


「ほぼ全ての女性の『奴隷』はこんな感じよ、よその地域はね、治安は良くないし、魔物の被害で孤児なんかも多いのよ、それだけ『奴隷』の供給が多いの。大事にされる『奴隷』は本当に極一部ね、殆どの『奴隷』は人間扱いしてもらえないわ、幾らでも替えの居る道具として消費されているのよ、この世界ではね」


アカリの説明に3人が沈黙する。


「メグミちゃん達はまだこの異世界に来て間がないからね、知らなくて当然なんだ、僕たちも出来るだけ知らせないようにしてたし、この地域では完全に違法にしている。他国人でも『奴隷』の持ち込みも、所持も完全に禁止だ。見つけ次第『奴隷』から解放している。

 『勇者』のおじいちゃん達に襲撃された奴隷市場も多い、あの人達は外交とか他国の法律とかお構いなしだからね、当然解放された『奴隷』が望めば受け入れもしているよこの地域はね。僕たちだってそんな制度は許せないんだ、でもこの異世界ではそれが当然だったんだ。悔しくて遣る瀬無いやるせないけど、全てを救うには僕たちの手は小さすぎるんだ。出来ることには、守れる人数には限界があるんだよ」


「そうか……でもよ、それと今回のオークと何が……」


「ねえタツオ君、あなたオークってどんな魔物だと思ってるの?」


「豚の魔物で、その肉が売られているな、あと性欲魔神のような魔物で、人型の女であれば種族問わず襲って、子供を産ませるってことくらいか?」


「そうね、ゴブリン、オーク、オーガこの3種族は大体、人型の女性を襲って子供を産ませるわね。この3種族は女性の敵ではあるのだけど、女性の味方でもあるのよ」


「なんだそりゃ?」


「この中でもオークはね、女性の奴隷にとっては唯一の味方であったといっても過言ではないわ、良いタツオ君、オークに捕まっていた女性が助け出されて、再びオークの元に自分から帰る割合をね、帰還率と言うの。『奴隷』の女性の帰還率はほぼ100%よ。帰還までに他の魔物に襲われて帰還できなかった人を除けば100%なのよ。

 何故って? 初めて、オークに初めて人間扱いしてもらえるからよ。オークは女性を犯すわ、でもねとても優しいのよ、自分の子供を産んでくれる女性、自分を生んでくれた女性。その女性に対してオークは敬意を払うわ。オークは豚の様な見た目に反して女性に対して非常に紳士で、綺麗好きよ。

 オークの集落にはね、高齢の子供を産めなくなった女性も大勢いるわ。この女性たちの世話をしているのはオークよ。オークは大家族主義なの、たとえ血が繋がってなくても、自分達を生んでくれた女性、世話をしてくれた女性をその女性が死ぬまで敬い続けるわ。オークの雌は非常に希少だからオークは男系社会だと思われているけど、オークは完全に女系社会よ。オークは自分達の女性を本当に命がけで守る。そして死ぬまで面倒を見て、介護して、死んだら泣いてくれるそうよ。

 少し年嵩としかさでも子供の生める女性、オークにとって見た目は関係ないわ、傷ついてるなら癒すでしょうね、痩せているなら食べ物を幾らでも与えてくれる。清潔な服も、暖かい寝床も、家も、そしてオークではあるのでしょうが、家族も持てるのよ。オークの子供を産まなくてはならない、オークと交わらなければならない。これが我慢できればオークの社会は女性にとって逆ハーレムよ。

 それが『奴隷』として辛酸を嘗め尽くした女性であれば、そこは天国よ。死ぬまで一生愛してもらえる家族がいるのよ? 『奴隷』だった過去が、オークに犯された過去が、助け出されたら消える? いいえ、一生消えないわ。

 だからオークに連れていかれた女性は自分から戻るのよオークの所に。『奴隷』でなくても帰還率は70%を超えるわ。開拓村なんかでね、家族に先立たれた妙齢の女性が自らオークの所に行っていることさえあるの」


「アカリちゃんが殆ど説明してくれたけどね、『奴隷』は過酷だ、そんな簡単な言葉では言い表せないほど過酷なんだ。そしてその、やせ細り今にも死にそうな女性であってもオークは自分たちのの元に連れ帰って保護する。性欲大魔神、たしかにそうだ、健康な子供の埋める女性は犯される。でも健康じゃなかったら? オークは癒すよ、健康になるまで、子供を産めるようになるまで決して手は出さない。オークの元に居る女性の中にも『加護』『魔法』の使える女性は要るし、大きな群れには、オークにもそれらの『加護』『魔法』『武技』の使える特殊なオークが居るんだ。その人達が必死で癒してくれる。身なりを整え、人間らしい生活を与えてくれる。そして一生大事にしてもらえる。

 昔ね大きなオークの群れを討伐してそう言った捕らわれた女性たちを解放しようとしたことがあったんだけどね。断られたよ、その捕らわれた女性たちに断られた。高齢の女性なんかは、家族と一緒にここで死ぬと言ってね。もう家族なんだよね……

 情けない話だがこの地域でさえ『奴隷』でなくても帰還率は60%に届かない。過去に同じように元『奴隷』の女性を保護したことがあったが、そちらの帰還率は100%だ。同じ人間よりもね、オークの方が人間として差別も偏見もなく扱ってくれるそうだ。

 一応オークに馴染めない女性だって居ることを考えて、この地域のオークの群れの女性とは連絡が取れるようにしているんだ。薬とかねどうしてもオークの社会には無い物を都合する代わりに、馴染めない女性をこっそり保護したりはしているのだけどね。それでも本当に極一部なんだ、そんな馴染めなかった女性でさえ、帰還したりする。人間ってのは本当に情けない、どうしても差別や、偏見が消せない、どこからか情報が漏れてしまったらそれで御仕舞さ。

 人間社会よりオークの社会の方がよっぽど優しいとか嫌になるけどね。

 あとオークは子供も殺さないよ、どの年齢から殺さないのかわからないけどね。偶にたまにオークとして育てられている、人間の男の子が居るんだ。その男性は人間でも殺されない、仲間だからね。まあ殆ど人間とは戦うことはないよ、オークの社会を守る、他の魔物と戦う特別な戦士になってる事が殆どだからね。オークは仲間に同族殺しを強いるような真似はしない。本当に彼らは仲間や家族には紳士何だよ」


「俺、オークを討伐したことが有るんだけど……」


「大丈夫、人間の大人の雄は全力で殺しにかかるからね彼らは、魔物だもの、遠慮はいらないよ。ただこの地域にはね、嘗てのかつての王国都市後にオークの大きな国が有るんだけど、そこは絶対に襲わない、討伐にもいかない。そこに女性たちが捕らわれている、まあ住んでいるのだけど。そこには一部の女性をこっそり保護する時以外は近寄らない。そこから溢れて侵攻してくるオークだけを僕らは狩っているのさ。此方もこちらも村を人間社会を守らないとダメだからね」


「ねえそれが女性をオーク討伐に参加させない理由?」


メグミが尋ねる、


「冒険者はね、やっぱり日本から来た子が多いからね。オークに犯されるとその現実に耐え切れなくて心がもたないんだ。だから可能な限り保護するし、その後の精神のケアもするよ。けど、最初から参加させない方が良いだろ?オークは魔物なんだ、けどこの事実はこの異世界の住人は殆どの人間が知ってる。けどね、やはり人を襲うんだ、大人の男は助けてはくれない。なら戦うしかないんだよ」


「他の2種類は如何なんだ?」


タツオが尋ねる。


「オーク程じゃないけど、やはり女性は犯すけど、殺されたり傷つける事はないね。ただゴブリンは少し馬鹿すぎで少し不潔なんだ、まあ女性から言わせればアレも小さいらしい。

 オーガはね女性には優しいし、オークと同じくらい大切にしてくれる。けどこっちはアレが大きすぎるんだ体格が大きいからね。それに乱暴者が多いらしくてね、まあこれも体格差の問題が大きいと思うけどね。オーガは優しくしているつもりでも人間にとってはってのが多いらしい。オークは人間よりちょっと大きい位の体格だからね。あっちも大きめ位でそっちに嵌る女性も多いらしい」


「まあ、いいわ、要するに今回オークの元に送られた女性は、取り返しても無駄、取り返しても自分からオークの元に帰るのね」


「そう、既にオークの国に着いてるとの報告があった、状態は酷いひどいが何とか助けると言っている。もう人間社会に取り返すことはできないと思う。そしてオークは母体を多く手に入れた。今まで以上に数が増えることが予想される。本当に頭が痛いよ」


「やっぱりそのオークの国は襲わないんだな?」


「タツオ君は襲うのかい? 場所が知りたければ教えてあげるよ? 僕は……勘弁してもらえないかな、不幸だった女性達がやっと手に入れた、人間らしく暮らしている場所なんだ。例え魔物が少し増えて、此方こちらの手間がかかっても、その幸せは奪えないよ、僕にはね。そしてこれがこの地域の人々の出した結論で総意なんだ。止めはしないけど手伝いも出来ない」


「それを分かっているから『奴隷』の女性をオークに渡したのね」


メグミが肩御落とし俯きながら呟く、


「そうだろうね、年嵩としかさの女性の『奴隷』、幾らで売られていると思う? 一万円行けばいい方……かな? それで此方こちらには大ダメージだ、反吐が出るような遣り口だよ」


「『奴隷』制度はどうにか潰せないのですが? 私はその制度が許せません」


ノリコが唇を噛みしめて、泣きそうな顔で言う、


「色々頑張っているんだ、『勇者』のおじいちゃん達もね世界中回って、目についた奴隷市場を全部潰して回ってる、あの人達に逆らえる人も国も無いからね。どうしようもないスケベジジイだけどね、正義感だけは本物なんだ。でもね潰しても潰しても沸いてくる、キリがないんだ。流石に国家主導でやっている所は減ったがね、返って裏に回って悪質になっている」


「魔族や魔物よりもよっぼど達が悪いのが同じ人間か! 全く何処の世界も一緒だな」


「諦めるのが早いわね、タツオ! 情けないわね、取り合えず目につく『悪』を全て切れば良いのよ。そうしていればその内切る『悪』が居なくなるわ。それでも世界が良くならなければその時又考えれば良いわ」


「おめえは気楽でいいな、メグミ」


「違うわよタツオ君、メグミちゃんはね、出来ることからするって言ってるのよ、出来もしないことを悩んでも仕方ないのよ。そうよね? 私も決めたわ、死ぬまでに出来るか分からない、でも救って見せるわ、一人でも多く! たとえ小さな手でも!」


そうしてメグミの手御握るノリコも、メグミの目にも迷いは無い。


「そうか……そうだな、やれることは有るんだものな、だったらそれをやるだけだ。ああ分かった、それを成すだけの力を手に入れてやらぁ!!」

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