第40話お姫様抱っこ

 転送阻害の結界は解除したとの報告が入り、アイ様、ヤヨイ様は治療され、今は寝ている人たちを『治療空間』毎引継ぎ、そのまま大急ぎで『転送魔法』で転移していった。パーティーメンバー以外を6人も引き連れて『転送魔法』が使えるのは流石である。直接病院に飛ぶとの事だったので、もう心配はないだろう。

 『転送魔法』がこの場で問題なく発動していたことから、『人狩り』の妨害は『自爆魔法式』と『復活の首飾り』に特化していたようだ。確実にこの地域の冒険者に特化してると言い換えても良い。その悪質な妨害に嫌悪感を覚えると同時に、その執念に似た悪意に恐怖を覚える。

 メグミ達はサアヤを残し、後をアツヒト達、冒険者ギルドの救援隊に任せ、今日は帰宅することにした。カグヤやアカリ、タツオも一度メグミ達の家に来て食事でもして帰ると良いと皆で一度メグミ達の家に向かう。

 家に着くと『ママ』が、ならいっそ泊って行きなさいと言い出した。ノリコは未だ寝ているし、熱い密林からの帰宅である、お風呂に入れて汗を流して着替えさせなければいけないが、たしかにメグミや『ママ』だけでは大変である。

 タツオだけ仲間外れか? とも思ったが『ママ』はタツオにも泊って行くように勧めている。帰宅しても他のパーティーメンバーは居ないし、食事をしてお風呂に入って寝るだけなら、此処で泊って行った方が良いだろうと説得し、タツオもそれなら確かにと納得して泊って行くことにした。

 相変わらず、女に囲まれても動じない、肝が据わっているのか? 女慣れしているのか? 鈍感なのか? まあメグミには、女慣れはして無さそうに見えるから、多分他の2つの内のどちらか一方もしくは両方なのだろう。

 『ママ』は疑問を顔に浮かべ、


「それにしてもタツオ君なら、楽々ノリコを運べるのに、なんでメグミが背負って帰ってきたの?」


 メグミは当然の様にノリコを背負って帰宅したが、よく考えれば、いや良く考えなくても、タツオが居るのだからタツオが運ぶのが自然である。他の二人も、


「そうね、何故かタツオ君じゃなくてメグミちゃんが運ぶのが当然って気になってたわ、不思議ね」


「ワタクシは、すっかりタツオ先輩のこと忘れてましたわ」


 アカリは多分、他の女性にタツオに触れるのが嫌で無意識か意識的にかその考えを排除していたのだろう。カグヤはそもそもタツオの事が眼中になかったので、言っている通り忘れていたのだと思う。

 メグミは、本当はタツオが運ぶのが自然だろうと分っていたが、自分がノリコを運びたかったので誰か言い出すまで、黙っていたのだ。結局誰も何も言わなかったので、そのままノリコを背負って帰ってきたが、背中に感じるノリコの胸の押しつぶされた柔らかい物の感触、柔らかな太ももと、背負い直す度にワザと触ったお尻の感触。ノリコの寝息が首や耳裏を擽りくすぎり、そりゃもう至福の一時だった。


(絶対に譲りたくない!)


そんなメグミの気持ちが顔に現れていたのかもしれないが、タツオは、


「まあ女の子だし、女の子同士の方が良いかと思って遠慮したんだが、俺が運んだ方が良かったか?」


どうやら珍しく気を利かして遠慮したらしい。『ママ』は早速、ノリコをお風呂に入れようと、ソファーで寝ているノリコを、タツオに脱衣所まで運んでほしいとお願いしている。


「脱衣所まで運べばいいんだな? 場所が分からねえな、先導たのまあ」


 そう言ってノリコを軽々と『お姫様抱っこ』した。女性陣からは感嘆と羨望の声が上がる。タツオは決して美男子ではないが、かといってブ男ではない、男らしい鋭い顔でまあカッコいい、その鋭すぎる眼つきを別にすれば、決して悪くないのである。

 体が大きく、そして良く鍛えている、女性としては背の高いノリコと並んでも全く遜色なく、軽々と『お姫様抱っこ』するその姿は、ちょっとした白馬の王子様のようであった。アカリは羨ましそうに、


「後で私もソレお願いしても良いですか? 是非お願いします!!」


「あ! アカリ先輩だけズルいぃ、ワタクシも一回お願いします。 

 お互いお風呂上がって落ち着いてからで良いので是非!」


「タツオ君、こんな年増嫌かもしれないけど、私も是非お願いしたいわ」


 とカグヤに続けて『ママ』までお願いしている。そう『お姫様抱っこ』は全女性の憧れである、しかし、実際にしようと思うと、可成りの腕力を必要とするため、女性が余程小柄か、タツオの様に男性が大きく力が強くなくてはならない。

 ノリコを軽々と『お姫様抱っこ』して揺るぎもしないタツオはまさに女性にとって自分の体重、体格を考えることなくお願いできる、理想の男性であった。


「ん? 別にそれくらい構わねえが? なんだ? 甘えん坊が多いのか? メグミお前はどうする?」


 タツオが気軽にそれに答えメグミにも聞いてくる。メグミは女性が好きである、しかしそれはカグヤも同じこと、それとこれとは別、そうまさしく別腹、


「そうね、私も後でお願い」


 とそっけなく答えておくが内心はヤッホーー! と喝采を上げている。『お姫様抱っこ』は全女性の憧れ、相手が触れるのも嫌な相手出ない限り、誰がしてくれても嬉しいのだ。

 そのままタツオを先導してお風呂の脱衣所まで行き、さらっと後で使用するタツオにもお風呂を案内してタオルなどアメニティの仕舞っている場所と使用方法を教えてから、早々に追い出し。

 食事の用意をすると言ってその場を後にした『ママ』以外の3人でノリコの服を脱がして、自分達も服を脱いで4人でお風呂に入った。

 この家は4人暮らしには大きすぎる、部屋数に余裕があり客間も多い、その為アカリ達3人も余裕で泊めることが出来る。そしてお風呂場もそれに比して大きい、メグミ達女の子4人位平気で入れる、3人が同時に体が洗えるように、シャワーも3つ付いているし、湯舟などは5人位平気で入れる広さを誇る。先ずノリコを軽くシャワーで洗い流し、そのまま大きな湯舟の浅い方に溺れないように気を付けながら湯舟の淵にもたれ掛からせ。

 3人で洗い場の椅子に座りワイのワイの言いながら洗い合う。メグミは自分でサッサと洗って、ノリコの髪を洗うつもりであったが、カグヤがちょっかいを掛けてくるのである。


「先輩ぃ、お背中洗いますねぇ」


 そう言ってメグミの背中に回ったカグヤは、ちょっと背中を海綿のスポンジで洗ったかと思ったら、即胸に手を回してきた、。


「何よ! これのどこが背中よ! それとも馬鹿にしてるの? どうせ私のは大きくないわよ!」


 振り向いてカグヤの立派な胸を揉む。うん立派だ、ノリコほどではないが素晴らしい胸をカグヤはしている、揉み心地も自分の物とは比べ物にならない。キャッキャと言いながら洗い合っていると、


「私も混ぜて、メグミちゃん髪洗ってあげるね」


 そう言ってアカリも加わって来たので、アカリの胸も揉んでおいた、細身で華奢で着やせするのに、胸は大きい、いや、立派なものだ、少なくてもメグミよりは大きい、アカリは脱いだら凄いタイプなのだ。

 メグミは嫉妬交じりに二人と胸やら尻やら洗い合っていたら、お風呂に漬けていたノリコを忘れていた……アッ声を上げメグミが一番に思い出しノリコの所に駆けよるとすっかり真っ赤に茹っていた。メグミは慌てて湯舟から上げると、少し温めぬるめのシャワーを浴びせて少しずつ冷ましながら、髪の毛を洗う。カグヤとアカリも一寸反省した様な顔になり、神妙にノリコの体を洗っていたが、


「先輩ぃ、ノリコ先輩やっぱり凄いですよぉ」


カグヤがノリコの形の良い胸を洗いながら言ってくる、ノリコのその巨乳なのに形と大きさの綺麗なピンクの乳輪と乳首を持つ、まさに神に愛された双丘を遠慮なくカグヤが揉みながら洗う。


「ちょっとカグヤ、替わりなさいよ、それは私のよ!」


 自分の膝枕に乗せて頭を洗っていたメグミはその膝をゆっくり引き抜き、タオルの上に乗せると、カグヤと強引にポジションを替わった。

 アカリはノリコの足の方をマッサージするように片足づつ洗いながら、


「コラコラ、その胸はノリコちゃんの物でしょう、あんまり強く揉むと起きちゃうわよ、優しくね、その方が自分でも気持ちいいでしょう? ……あと私も後で一回触らせてね」


そう自分も大層形も色も綺麗なものをお持ちなのに言う。メグミはその双丘を優しく揉みながら、


「大丈夫よ、そんなヘマはしないわ、ノリネエもとても幸せそうでしょう、気持ちいいのよ」


双丘の敏感なところをフェザータッチで洗いながらメグミは言う。すると丁度そのタイミングで浴室のドアが開いて、裸のサアヤが、


「三人ともノリコお姉様を玩具にしてはいけませんよ! それに長時間のお風呂は逆上せてのぼせてしまいます。私が胸を揉み終えたら直ぐ泡を落としてお風呂から上がっていただきますからね」


自分もキッチリ、ノリコの胸を揉む宣言をしながらこちらに向かってる。


「サアヤおかえり、あっちは如何だった?」


 胸を揉むのを止めずに聞くと、サアヤは自分の体でメグミを押し出して強引にメグミから胸を奪い、そのままノリコの胸を揉みながら、


「休憩所の結界に紛れて、妨害装置の結界が見つかりましたわ、そちらはアツヒトさんが研究所へ回して解析するとの事です。

 あの『人間狩り』部隊の人達も全て回収してます、これから『蘇生』して尋問でしょう。所持品等からアカリお姉さまの仰っていた『光と太陽の神』の過激派、対異教徒殲滅部隊『聖光騎士団』に間違いなさそうですわ。

 早速、『光と太陽の神』大神殿に強襲を仕掛けたそうですけど、こちらの成果は思わしくありませんわね、既に『聖光騎士団』は拠点を移していたようで、今構成員等を詳しく聞き取りしたり、残った資料に何かないか調べているそうです」


 少し興奮しながら顔を赤らめて答える、メグミは何とか半分、分けてくれないかと目で訴えるが取り合ってもらえない。

 アカリが「もう泡流しますよ」っと強引に終了を宣言し実行する。では拭くのは私がとメグミが乗り出すが、せめてこれ位譲りなさいとそれもアカリに奪われた。ガッカリしながらならばせめてサアヤをと、サアヤの髪を洗いながら先ほどの話の続きを始める。


「『光と太陽の神』大神殿に強襲って、良いの? それにしても素早いわね、まあアイ様やヤヨイ様も仰っていたから準備は済んでいたんでしょうね」


 サアヤの髪をワシャワシャ洗いながら聞くと、アカリはカグヤに支えられて上半身を起こしたノリコの体をタオルで拭きながら、たまに「わぁ、ほんとに凄いわね、柔らかい」とか言いながら、


「まあ元々評判の悪い部隊で、『人間狩り』が出た当初から疑ってましたからね、被害者の方の証言でもそれらしいことは分かってましたし。ただ今回もそうですが被害者の方の心の傷が毎回酷くてね、詳しい事が中々分からなかったのよ。今回は部隊員も捕らえたし、後は拠点なりなんなり焙り出して虱潰しね」


 体を拭き終わったアカリが手招きするので、サアヤの髪を洗い終わったメグミも素早く泡を洗い流して自分もザクっと体を拭いてからノリコの上半身を持つ。足元をアカリが持ち、腰のあたりをカグヤが支えてお風呂場から出てる。

 3人がかりでノリコに下着を着せて、部屋着のトレーナーとスラックスを着せる。アカリとカグヤがドライヤーでノリコの髪を乾かしているので、その間にタツオを呼んでおこうと脱衣所のドアを開けてタツオを呼ぶ。


「おーい、タツオ! またノリネエ運ぶの手伝って」


 叫ぶと、直ぐ真横から返事が来た。


「なんだ? 終わったの……お前なんて格好してるんだ?」


 脱衣所の扉の横の壁に体を持たれ掛けさせて待っていたらしい、タツオが何故か目を逸らす様にして頭痛でもするのか頭を抱えている。


「あれ? タツオ着替えたの?」


その恰好を見ると部屋着らしいあの初心者講習の際のジャージに着替えている。


「ああ、『ママ』さんが桶に湯を汲んでくれてな、それでタオルで体を拭いて着替えた、流石に汗まみれの格好で綺麗になったノリコさん運べないだろ。それよりお前、一端中に入って扉を締めろ!」


 ん? っと振り返るとアカリさんやカグヤも何やら慌てている。必死で自分たちの胸の辺りをジェスチャーで示す、バスタオルを巻いてるな? ……あっとメグミも自分の格好に思いが至った。

 ノリコは着替えさせたがメグミ達はバスタオルを巻いただけの格好である。タツオが紳士で良かったと安心しつつ、誤魔化す様にアハハッと笑いながら扉を閉めてアカリ達の下に戻った。


「メグミちゃんはうっかりが過ぎませんか? 女の子でしょう? もっと恥じらいを持ちなさい!」


「先輩ぃ、タツオ先輩が紳士で良かっただけですからね? あれ、襲われても文句言えないですよぉ? お約束のバスタオルがパラりが無くて本当に良かったですぅ」


非難轟々である。


「アハハ……ごめんね、いや家に戻って来たからついね油断しちゃって、いつも女の子ばかりだから、お風呂上りとか平気でバスタオルでウロチョロしちゃうんだよね……『ママ』には怒られるんだけど」


 失態に幾分恥じらいながら、素早く服を着る。アカリ達も服を着たのを確認して、改めてタツオに中に入ってくるように声を掛ける。

 顔を真っ赤にしながら入ってきたタツオは、バスタオルを敷いて床に寝かせてあるノリコを、またも軽々と『お姫様抱っこ』をして、


「じゃあ、ノリコさんの部屋に先導してくれ、あとメグミお前ほんとに頼むからな? 俺だって男だぞ?」


「悪かったわよ、今後気を付けます」


 そうメグミが謝っていると、浴室の扉が開きサアヤが、


「あっ! 『お姫様抱っこ』だ良いなぁ」


ノリコとタツオを見て素っ裸で呟いた、アカリさんがタツオがそちらを向くより早く、一瞬でバスタオルをサアヤに巻き付けて、その裸体を隠す。


「本当にあなた達って……女の子ばかりで油断し過ぎです!!」


 アカリが怒り、状況を察したタツオは湯気が出そうなほど真っ赤になっている。そして恨めしそうな顔でメグミを見るが、


「今のは私の所為じゃないでしょ? ないよね? ん? まだサアヤがお風呂に居るのに呼んだのが悪いの?」

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