手術台で見た悪夢

カウントダウンで意識が堕ちて

広がったのは極彩色

カレイドスコープの中をさまよう

鏡の迷路に響いたのは

医者と看護師の笑い声


全身麻酔の意識下で

談笑する声に神経がささくれ

突き刺された痛みに

絶叫が迸る刹那

急上昇する血圧と脈拍


緊張が走る空気の中で

暗闇へ意識が吸い込まれた

呼び戻されるまでの数分間

私の意識は死の中にいた

虚無の闇に充たされた死の中に


「──さん、息を吸って!」


悲鳴のような呼び掛けに

ガフッと肺が空気を吸い込む

浮上した意識と共に開いた目に

眩むライトと看護師の顔が映り

騒音が脳へと流れ込んできた


ああ、戻ってしまったと

闇の静寂を名残惜しむ私は

手術台から引き降ろされる

全身麻酔が醒めきらない身体に

現実の重力がのし掛かる


どちらが悪夢なのだろう

どちらも悪夢なのだろうか

覚めやらぬ瞼の裏に

ぐるぐると目まぐるしく変わる

カレイドスコープの残像…



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