魔女狩り

大友 鎬

全滅編 第1話

「おめでとうございます。建物を丸々使ってファンタジー気分が味わえる脱出ゲーム『魔女狩り』にご招待いたします。3DCGとVRの新技術を用いた脱出ゲームですのでお楽しみいただけるはずです。 株式会社アンク」

 郵便ポストに入っていた脱出ゲームの内容が不覚にも面白そうだと思った。

 知らない会社名だったが前に彼女と脱出ゲームに行ったときに、何かアンケートを書いたような気がした。たぶん、それで俺の好みを知って俺に送ってきたのだろう。

 何の迷いも躊躇ないもなく参加を決めた。

 ただ、招待状ならペアにしてほしかった。都内のビルならすぐに行けそうだけど、彼女はつれていけない。でもどのみち明後日なら彼女は仕事か。



「日雇いバイト急募。脱出ゲーム『魔女狩り』の進行役のお仕事です。誰でもできる簡単なお仕事で、日給は三万円です。参加される場合はこちらをクリック。派遣会社nown」

 そんなメールがわたしに届いた。

 新しいシューズが欲しかったわたしにとっては日雇いでそれだけの金額で手に入るのは嬉しかった。

 見覚えのない派遣会社だったけれど、何個も登録していて、どんなバイトでも回してほしいと頼んでいたから、もしかしたら派遣会社が融通を効かせてくれたのかもしれない。

 少しの躊躇はあったけれど、それはコンマ一秒。陸上の世界だとそのコンマ一秒が重要なのだけど、躊躇の時間がそんなにもごくわずかなら、ほとんど躊躇いなんてないと思っていい。

 クリックして申し込むとすぐに合格の通知が来た。仕事は明後日。都内の小さなビルにて。



 自分の元に糾弾する手紙が届いた。脅迫状だった。

 かつての自分の境遇を隅々まで書いてあって、自分は震えた。

「誰がこんなものを……?」

 脅迫状には指定した日時に来なければ、自分の罪を白日の元に晒すと書いてあった。

 なんで今更……、あれは自分のせいではないのに。

 それでも行くしかない。教師としての仕事をまだまだ続けなければならない。

 今年は今の妻との間に子どもだって生まれるのだ。

 全て、この差出人の勘違いだと間違いだと主張して自分の無実を証明しなければ。

 明後日なら有休をなんとか取得できるはずだ。場所は都内のビル。

 それまで不安な気持ちでいなければならないのが妙に不快だった。

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