第17話 混沌
黄昏から忍び寄る混沌が、人々の幸せな日常を侵略しようとしていた。
ついに、異形の邪神が動き出したのだ!
「まずは、寝るところを確保しないと……この家が好さそうですのよ」
邪神は、二本の触手をくねらせ門の下を潜り抜ける!
「触手は数じゃないですのよ、混沌より這い出る者に潜れない門はないですのよ」
人間がどれほど知恵を絞って、塀や門でもを守ろうとも邪神の前では無意味。しかし、門のある家には、番犬が付き物だ!
「グルルルゥ……」
しかもただの犬ではない、ドーベルマンだ!
「四本足の生き物が、何の用ですのよ?」
邪神の異形な姿に恐れ、低い唸り声をあげようとも、犬の命運は決まっているのだ!
最早、人類に逃れる術は無い……。
「どうしたのかしら? ジョンが庭で騒いでいるわね……」
何も知らず、穏やかな日常を過ごしていた彼女が窓のカーテンに手をかけると、そこにはっ!
「きゃー! ジョンが女の子を咥えているわっ!」
こうしてまんまと家の中に入り込んだ邪神であった。
この家に住む人の好さそうな夫婦が、邪神の餌食となるのか!
「大丈夫だった? 怪我わない? お名前は何て言うの?」
「ぐすんっ、ぐすんっ、……ナイアルラトホテプ……ぐすんっ」
「ホテプちゃんね、お家はどこなの?」
「ナイアルラトホテプは邪神だから地球を侵略しに来たとこですのよ……、まだ、お家はないですのよ……」
「そうか、一人で地球を侵略しに。それは、大変だったね」
「もし、行く所がないのなら、家に住まない?」
「それがいい、ホテプちゃんさえよければ、うちの子になってくれないか?」
「お家に住ませてくれるの? ……ありがとうですのよ」
我々が気が付かぬうちに、善良な夫婦が邪神のしもべとかしているのだ!
これを恐怖せずに語る事など出来ようか?
否!
人類を脅かす邪神はクトゥルー一人ではない。
狂気と混沌が生んだ異形の邪神ナイアルラトホテプに、人類は立ち向かえるのか?
否!
地球は既に、侵略されていたのだ!
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