第13話 内患

「最近、秘密基地が危険なのです」


「毛虫が出るのです」


「ボールも飛んでくるです」


「犬もいるのです」


「もっと安全な基地に引っ越すのです!」


 ついに! 本格的に人類を根絶やしにするために、邪神が動き出したのだ!

 だが、これほどまでに侵略の手が伸びているというのに、人類がいまだ生存している訳は、強大過ぎるが故の邪神の異質さのためであったと言えよう。

 人間と邪神の間を阻む異質さ、即ち、幹線道路だ!


「ここは、渡れないのです」


「危ないのです」


「向こうの白い所から渡れるのです!」


 何という事か!

 人類を守ってきたただ一つの希望が、今まさに! 邪神に踏みにじられようとしているのだ!


「白い所を踏んで渡るのです」


「はみ出そうで怖いのです」


「並んでいけば平気なのです」


 だが、まだ希望はついえてはいなかった!

 邪神の侵攻を阻むかのように、歩行者用の信号が点滅し始めたのだ。


「渡り切れないのです」


「取り残されてしまうのです」


「ひかれてしまうのです~」


 しかし、邪神の前に旗を持った老人が現れた!


「ゆっくり渡れば大丈夫だよ。横断歩道は、手を上げて渡ろうねー」


「手を上げて渡るのです~」


「触手も上げれるのです」


 何と言う事か!

 この老人も既に邪神の眷属にされていたというのか!

 滅亡への布石は、既に我々の内にあったのだ。

 人間の裏切りによって、人間は滅ぶのか。

 もう、邪神の侵攻を阻む事は出来ないのだ……。

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