レギンスが脱げない事件から始まる寝ぼけ女王ふうたんエッセイ
まさぼん
真冬に暑くなる
ふうたんは、旦那のてっちゃんに、
「熱なった。レギンス脱がして。」
寝ぼけ眼で足の暑さに耐え切れず、自分でレギンスを脱ごうとムニュムニュ動いていたけれど、何層も重なる服(布)の重なり合いが複雑な構成で足元に纏わりついていたので、脱げなかった。
休日の昼寝。
てっちゃんは休みにしか出来ない家庭用ゲーム機でテレビに向かってコントローラーをカチャカチャやっていた。そんなバトル中に、
「レギンス脱がして。」
は酷にも思える。が、ふうたんは何分寝起きだ。寝ぼけている。
ふうたんの身体は、てっちゃんの優しさで、毛布に包まれ、その上にブランケットをかけられていた。昼寝して起きたら、ホッカホカが出来上がっていた。
暑い。冬なのに暑い。特に、足元が暑い。
足の裏の温度は40℃以上ありそうだ、
以前、週3回ペースで針きゅう院に通っていた事があるふうたん。付き添い兼送り迎えの運転手でてっちゃんが着いてきていて、その時、針きゅうの先生から、
「身体の冷えを解消するのに1番いいのは、足首を温めることですね。レッグウォーマーのみ着用がベストです。靴下を履いて寝るのはお勧めできませんねえ。」
と教わった。
てっちゃんは、他人の話は自分の都合のいい所だけを抜粋して聞く。都合の悪い事、興味のない事は、“右の耳から左の耳へスーと流す”だ。
そういう訳で、昼でも夜でも寝る時は、
“イン”
して寝る。
部屋着のレギンス(てっちゃんはヨレヨレずぼん)の中にシャツをイン。レギンスの裾を靴下にイン。その上からレッグウォーマーをして、靴下の中に入ったレギンスをイン。
何層にも重なりあう布の完成だ。いつもは、それでも、自力でレギンスを脱げる。
「あ~つい~。ポンっポンっポイポイポイっ。」
と、上手に脱いで、どこに向かってか決めていないから、そこらへんに脱いだレギンスを放り投げる。
そして、当たり前のことだが冬の気温で身体が冷えて
「さぁぶっい」
と、起きる。
それが。
今、どんなに全身を使って脱ごうとしてるのに脱げない。
立って下におろせば簡単に脱げるであろうが、ふうたんは、そこまで寝起きが良くない。ベッドの上から離れられない。
てっちゃんが、ゲームのコントローラーをカチャカチャするのを止めて、ふうたんの寝っ転がっているベッドのそばへやってきた。
「ホントに寝起き悪いねぇ。」
そう言いながら、レギンスを脱がせ始めた。
「何これ?きっつ。きついよこのレギンス。きっつい。」
てっちゃんが一生懸命脱がしてくれようとしているのに、ふうたんが、
「あつい~早く脱がせて。」
と、急かす。
てっちゃん、一生懸命レッグウォーマーを引きずり下ろし、レギンスをインしてある靴下を、
「ふうたんさん、靴下脱がすよ。これきっついからレギンスだけ脱がすのは出来ない。いい?」
「なんでもいいから、暑いよぉ。早く脱がせて。」
寝起きのふうたんは、邪悪な天使だ。子供帰りする。てっちゃんの事をお母さんとでも思っちゃってるかもしれない。
靴下が、思いっきり引っ張られて、
スポンっ
「もう片方も脱がすよ。」
スポンッ
靴下が2足脱げた。足の裏がいささか涼しい。
ふうたんは少しご機嫌になった。
「うひゃひゃひゃ。足の裏に『ふぅ~』って息かけて、足の裏暑い。」
てっちゃんは、
「ホントめんどくさい子だねぇ。ふぅ~。」
と息をふきかける。人工扇風機だ。
レギンスが引っ張られている。
「あれ?なんでこのレギンスこんなにきついの。太った?」
「レディーに『太った』だなんて、セクハラだよ。うわあ家庭内セクハラだ。」
「あれ?何かがレギンスの中に入ってない?」
そろそろ、意識が保育園レベルから高校生レベルくらいまで上がって戻ってきたふうたんは、レギンスを上から触った。
「うわっ。何かが入ってる。」
触ったレギンスの中の物は、触られて暴れ出した。レギンスがボッコンボッコン動いている。レギンスの下に入り込んだ何かが暴れてレギンスをボッコンボッコン浮き上がらせる。
「ふうたん、何入れたの?僕これ脱がせれないと思います。自分で脱いでくだせえ。」
てっちゃんにそう言われた ふうたんは、
「うっわ。うっわ。見捨てられた。大事な嫁の事を見捨てた。」
と、騒いだ。ひとしきり騒いでから、レギンスの中に入っているものを自分自身で取り出す事にした。
「あ~ネコだ。誰?誰がレギンスの中入ったのよ。」
てっちゃんとふうたん夫妻の家では、猫を4匹飼っている。気付いたら、こんなに増えていた。
その4匹のネコの内、
「レギンスに入り込んで暖を取っているのは誰だ!」
ふうたんは、大体目星はついていたので、こりゃ取り出すとき引っかかれるな。…とほほ、とレギンスの下に手を突っ込み、ふわふわの毛の塊を掴んだ。
ふぎゃああぎゃうぅううううにゃおーん
ゴマちゃんだ、やっぱり入っていたのはゴマちゃんだった。
「ちょ、ちょっと、ゴマちゃん出てきて。」
ふにやあふぅうううううぎゃおん
「怒らんといて。怒らないでゴマちゃん。いいから出てきて。」
ゴマちゃんは、レギンスの中で方向転換して足首側に周りこんだ。
「ちょっちょっとゴマちゃん。」
ふうたんがゴマちゃんをレギンスの中から取り出そうともがいていたら、テレビに向かってゲームコントローラーをカチャカチャ言わせながら、
「そんなもん、無理やり引っ張り出してぶっ飛ばしたれ。」
てっちゃんが喋った。
「そんな可哀そうな事出来る訳ないでしょ。」
てっちゃんは、ゲームの世界に戻った様だ。いつもの様に、返事も相槌もうちやしない。
「なに?何々。このレギンス湿ってる。」
ふうたんは、レギンスを履いた足を手で触ってみた。
「濡れてる!」
「ゴマちゃんが入ってたんでしょ?無理やり引っ張り出そうとしたんでしょ?復讐のオシッコちびりだ。へへっ。ぶっ飛ばしたれ。ふうたんはネコに甘すぎる。なめられとる。思いっきりぶっ飛ばしたれ。」
手に着いた濡れた臭いを嗅いでみた。
「うん!確かにオシッコちびられとお。」
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