戦闘狂の優越

猫部猫

プロローグ アフレア

そう言えば…

私は昔……具体的に言うと100年と5ヶ月前くらいだった


…気がする。


私がまだ生きていた時に誰かにこう質問した事があった。


『生命が死んだら何処に行くの?』


おそらく、誰しもが思い、考え、答えの出せぬままに生を終える。

そんな突飛で現実的で一種の夢物語ファンタジーの様な疑問だ。


私の質問に対し回答者はこう返した。


『あの世に行くのよ』

『あの世?』

『そう、みんな死んだらあの世に行くの…そしてまた何かの生を受けてこの世に来るのよ』

『……………』


あの世、この世。


つまり転生というやつだ。


死んだら生まれ変わり生まれ変わったら死ぬ。

いやはや…社畜とは正にこの事ではないだろうか…。


それに生まれ変わったら前世の記憶を失うとか意味がわからない…。


……………いや、そうでもないか…。


生きてる間にあった嫌な事や好きだった事全てをリセット出来るなんてこんなにも素晴らしいことはないのかもしれない。


ラノベ主人公が誰かを助けて転生なんてどんな理由があろうと私は“無様で滑稽だ”と思っている。

誰かの為に身を挺して守る?

あぁダサイダサイ偽善も甚だしい


…まぁ私のはただの嫉妬の様なものだ。


本音を言うと羨ましい…かも?


目的があって死ぬのは私には羨ましいものなのだ。

自殺…?

それも羨ましいなぁ…。


疲れ、呆れ、哀れみ、嫉み、嫉妬、決意。


その他もろもろの感情。


……まぁ結局は死ぬんだけどね。


とりあえず何度も言わせてもらうがー


“目的があって死ぬのは”私には羨ましいものなのだ。


死んでしまう上でそんな事はどうでもいいのかも知れない。

あの世に行く上でそんな事は些細なことなのかもしれない。

この世に来る上でそんな事は忘れてしまう事なのかもしれない。


ただ…そう、私にとってあの世でこの世なこの世界くらいは死ぬ目的を持ちたい。


…………あ、だいたい気付いていると思うけど


私はもう死んでいる。


更には『この世』での記憶が無い。


そして、『あの世』で生きている。


『生命が死んだら何処に行くの?』

と言う私の質問に私が答えよう。


答えは“『あの世』へ行く”だ。


え?そんな事は知っている?


いやいやいやいや…

この質問に対して最も適切な答えはこれ以外にないだろう?


こほんっ…


で、だ。


これで私の疑問は晴れた訳だが…君達には新たな疑問な思い浮かんだだろう。

それとも、“それ”さえも既に疑問として存在していたのかい?


……まぁいい。


どちらにしろ『“あの世”とはどんな所?』と言ったような疑問があるのは確か…だろう?


私の答えは『とても楽しい…愉快な所』だろうか。

だが、この前の人間は血眼で『地獄だ地獄だ』と言っていた。


ん〜…まぁ答えは君達が見ればいい事だ。

私と血眼の答えが異なる様に君達にも君達なりの答えがあるのだろう。


それではまず………。


私の説明でもしておこう。


私の名前は「アフレア」

性別は女

一応この物語の主人公だ。

年齢は―――100を超えている。

…見た目はピチピチの18歳くらいだ。

この世界では歳を取らないらしい。

     

能力は――


私は 〈諸刃の剣ダメージ・オン・スイッチ〉と呼んでいる。


どういったものなのかは追々と…だ。

住処は『餓鬼の腹袋』と言う宿の地下50階0501室。

趣味は戦闘。

特技は戦闘。


え?容姿?私の?


そうだな…。

まず、身長だが約166cm位だ。

髪の色は白で長さは…かなり長い。

目の色は赤。

肌の色は白に近い。

服装は動きやすいよう軽装にしている。

黒ニーソ派だ。

両腰に刀が一本ずつ。

体のいたる所に戦傷がある。


それで……『この世』で生きていた記憶がない。


別にこれは不思議ではない事だ。

私に限らず『あの世』に来た人間の殆どは『この世』での記憶がない。…らしい。


『この世』での記憶を取り戻すことで転生する事が出来るらしい。

いや、出来る。

私はそれを何度も見てきた。

体が徐々に光りだし消えていくのだ。

まぁ私にはどうでもいい事だが…。

だが、『この世』での記憶はあるアイテムがないと思い出せないようになっている。

この世界のどこかで実る“黄金の林檎”

またの名を《記憶の果実》


これを食べる事で記憶が復元され、見事転生する事が出来る、という訳だ。


私の情報では一年で120個の林檎が実る。


ただ木に実るのではなく、何も無い地面からヒョコッと一つだけ現れるのだ。

しかも腐らない。


不思議な林檎だ。


これを景品に闘技場が開かれたりもする。


『あの世』では……………一々『あの世』と表現するのは面倒くさいし理解力の違いにより勘違いが生まれるかもしれないので

『あの世』の固有名詞を教えよう。


私達は『アブノーマル』と呼んでいる。


ついでに、君達の住む『この世』は『現世』と呼ばれている。


え?普通?私に言われても困る…。


兎に角


『アブノーマル』では、ラノベ主人公の様に魔法を使う事も“一部を除いて”空を飛ぶ事も出来ない。

死ねば地獄に落ち、『現世』での記憶を思い出せば天国へ行けるらしい。

この世界の人間は何かの“能力”を一つだけ有している。

先ほど“一部を除いて”と表現したのは空を飛ぶ能力を持っている人間がいるからだ。

そして『現世』で犯罪と言われていた行為は、ほぼ全て許されている。殺すも盗むもありだ。


そうそう、私には『現世』での記憶がないと言ったが新しく知識として身につけた為に『現世』の事はだいたい把握している。

ラノベ表現があったのはその為だ。


では、どこからその知識を身につけたのか?


と思っただろう。


この世界は『獄卒鬼』達によって管轄されている。

その中の1体から賄賂を使って外の本を仕入れて貰っている。


これからその獄卒鬼に会いに行くため私は歩いているのだ。



鼻歌交じりに手を大きく振りながら歩くと気分が良くなる。


途中ステップを踏んでみたりクルクルと回ってみたりすると鼻歌は更に大きくなる。


自分の存在を世界に広めようとしている様に。


『アブノーマル』には様々な地域……というか区間、というか……まぁそんなところがある。


私の住処である『餓鬼の腹袋』があるのは

『D区・胃』だ。


目的の獄卒鬼がいる所は『A区・脳』だ。


この分類について簡単に説明しよう。

『A区・頭部』

『B区・右上肢』

『C区・左上肢』

『D区・体幹』

『E区・右下肢』

『F区・左下肢』

これらの名称によって分類されている。


『アブノーマル』には乗り物的移動手段は無いためA区まであと3日はかかるだろう。


この荒れた大地……何も無いこの場は暇なのだ。


だが、こう鼻歌交じりに進めば


何も無いこの場に“何か”が現れる。



ボコッ!と地面から大量の手が生える。


それは這い上がるようにその姿を持ち上げ私の前に現れた。


異形の存在━━━


『獄虫』と呼ばれる化物…だ。



その時、私の胸が高まるのを感じた。


『獄虫』には様々な種類がある。

それぞれにランク付がされており

『F~SSSランク』まである。


私の前に現れた大量の『F~Sランク雑魚』の中に一体だけ『SSランク』の『獄虫』がいたのだ。


私の口角が上がる。


刀に手を載せ戦闘態勢に入る。



雑魚に興味は無い。


狙うは一つ。


SSランクレア』だけだ。


大地を踏み鳴らし無数の獄虫が襲いかかる。



ふふ♪今日はここで一日使う羽目になりそうだ。


…………


ここでプロローグはお終いにしよう。


次、君たちに話しをする機会があれば獄卒鬼の所で話しをすることになる。



それじゃ、また。





━━━彼女の名は『アフレア』

『アブノーマル』屈指の戦闘狂であり…


“自力で”『現世』の記憶の欠片を取り戻した人間化物である。

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