家族のカタチ(その2)
「あのね、あのね、今度おでかけするの!」
海斗くんが無邪気な笑顔を私に向けてくる。
「へーどこに行くの?」
私も見つめ返す。
「分かんない」
海斗くんは首を横に振り顔を下げた。
「どこかに行くんですか?」
私は前に座っている加藤さんに尋ねた。
「はい。連休だから出掛けようかと思って…」
「良かったねー。海斗くん」
「うん!」
笑う海斗くんが可愛くて私も笑顔海斗くんを抱き締めた。
加藤さんたちが来ると大抵、私と加藤さんが向かいに座り私の膝の上に海斗くんが座っている。新しく来たお客さんには私は店員さんじゃなくて姉弟に見られるのだろうなって毎回思う。
「お出掛けとは良いですね」
マスターが追加のコーヒーを持ってきてくれた。
「はい。マスターはこの連休はどうするんですか?」
加藤さんはマスターに空のカップを渡した。
マスターはカップを手に新しくコーヒーを淹れている。
「僕は多分どこにも行かないですよ。この店もありますし」
新たに淹れたカップを加藤さんに渡した。
「そういえば、ここって定休日はありましたっけ?」
「いえ、今の所は無い....というか考えて無かったですね」
忘れてたという顔で頬をかくマスター。
「え、休みって無かったんですか?」
「朱音ちゃんも知らなかったの?」
「知らなかったというか、平日のどこかが休みなんだと勝手に思ってました」
「まぁ、ウチはお客様も少ないですし休みがあっても無くても変わらないですよ」
マスターがハハハと笑うが私と加藤さんはちっとも笑えなかった。
「やっほー、マスター!元気ー?」
店のドアがバーンと開き高校生ぐらいの女の子が入ってきた。
「舞彩さん....久しぶりですね」
マスターは少し驚いた顔で女の子を見た。
私は首だけ振り返り扉を見て大きくため息をついた。あぁ、またあの女の子(ヒト)か.....
「久しぶりっていつもメールしてるじゃん」
女の子が笑いながら手を振った。
彼女は舞彩(まい)さん。以前、私が居ない時にマスターが相談に乗り、彼氏が勘違いを起こしマスターに怒りを感じ店に押し寄せた、めんどうな話があった。どうにか誤解は解けたがその時、舞彩さんがメアドをマスターに教え、今ではマスターとメア友らしい。
年は私と同い年だけど高校は別々だ。
「連絡とってるんですね」
ジト目をしてマスター見つめる。
「いえ、連絡といっても相談に乗ってるだけですよ?」
「どうだか…」
「本当ですよ。昨日だって彼氏さんが最近冷たいって(泣)マークつけて送られてきたから相談に乗っただけで....」
「ちょっと、マスター恥ずかしいから止めてよ」
舞彩さんが恥ずかしそうに言った。
「あの子は誰なの?朱音ちゃんの友達?それともマスターの彼女さん?」
加藤さんが私とマスターの会話を見て聞いてくる。いつもの冷静っぽい加藤さんが少し興奮してるようにも見える。加藤さんもまだまだ女の子みたいで可愛いが今に限っては少し鬱陶しいと感じてしまう。ごめんなさい....
「彼女は以前来てくれたお客で彼女じゃないですよ…」
マスターが加藤さんに説明する。
説明が終わり初対面の加藤さんと舞彩さんが打ち解けるのに一時間とかからなった。
舞彩さんは海斗くんを見ると私の横に座ってきて海斗くんと話始めて、ついでに加藤さんと挨拶をした。
加藤さんからの質問攻めに舞彩さんは少し恥ずかしそうにするも全て答えていった。
質問が終わる頃には二人とも仲良く初対面とは思えないぐらい話し合うなと思いながら私は横で見ていた。
マスターはカウンターにいつのまにか戻っていた。
「そういえばマスター、公園の男の人知ってる?」
加藤さんとの会話の中、唐突に後ろを振り向きカウンターにいるマスターに向かって舞彩さんは口を開いた。
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