赤い屋根の喫茶店
やおき
第一話
喫茶店(その1)
小さな町の片隅にここはありました。
ここを見つけるのは難しいですが、いざ探して見ると簡単に見つかったのです。
チラシを見た時は嘘臭いとか友達と話してたけど物は試しと思い来てみました。
私―笹倉朱音はついにここ赤い屋根が目印の喫茶店『True Heart』を見つけました。
看板にはこの店のメニューが書いてありその下には「あなたの心を軽くします」と書いてある。軽くとはどうするのだろうか?私はその意味が分からず、店のドアに手を掛けた。
ガチャ、と音がする。ゆっくりドアを引こうとすると引けない。私はえ?え?と思い思い切りドアを後ろに引いた....でも開かなかった。
今日は休み?チラシには休みは無いって書いてたのに、騙された!?
私は一気に脱力して帰ろうとしたその時、後ろのドアからガチャっと音が聞こえた。
私はゆっくり後ろを振り向くとドアが開いている。ドアの前には私と歳が同じか少し上だろう青年が立っていた。
「えっと、お客様?ですよね」
青年は少し震えた様子でこちらを見てる。
「あ、はい。そうです。今日って休みじゃないんですか?」
私は青年の方へ振り返り、顔を見て答えた。
「いや、ウチは五時まで営業なのでやってますが....」
「え?だってドアが....」
閉まってたって言おうとして止めた。なぜなら私はドアの方向を見るとドアは店の内側に開いている。私はずっと自分の方に引いてたから開くわけがない。
私は恥ずかしくなって、顔を赤くしながら言った。
「いえ、何もないです」
何をやっているんだ私は、恥ずかしい。本当に恥ずかしい。ドアの前でガチャガチャしてるのを見てわざわざ来てくれたなんて、この人優しすぎるでしょ。
「えっと、どうぞ」
青年は私を店に招きよせた。
「あ、はい」
私も招かれて店の中に入った。
店の中は至ってシンプルで入ってすぐに左にはソファとテーブルが右には二人席の丸いテーブルと椅子が置いていて、その前にカウンター、カウンターの反対側は四人席が二つあった。それほど広く無いんだと申し訳ないが思ってしまった。
「好きな所へどうぞ」
青年はカウンターの前で言った。
店には私一人だし他の席使うのは....と思い、カウンターに座った。
「何にされますか?」
青年はメニュー表を開いてテーブルに置き聞いてきた。
メニューには色々な名前が書いてある。そのどれもが聞いたこと無い物でよくわからなかった。だってコーヒーは全然飲まないし
メニュー表を見てるとマスターのオススメと書いてあるのを見つけた。私は選んで失敗するよりは選んで貰おうと思いこれにした。
「すいません。これ」
「マスターのオススメですか?」
「あ、はい。お願いします」
青年は分かりました。と言うと一回私を見てから作業に移った。
何だったのだろう?....
それから五分くらいしてから、どうぞと目の前に出てきたのはコーヒー....ではなかった。
グラスの中は薄い黄色をしていて、一口飲んでみる。やっぱりレモネードだ。
何でコーヒーでは無いのか気になり聞いてみた。普通、喫茶店ならコーヒーと思ったんだけどな....
「コーヒーでは、ないんですね」
「えぇ、お客様はコーヒーが飲み慣れて無いでしょうし、疲れているご様子だったのでレモネードにしました」
青年はカウンターに手を着き、笑顔で言った。私は静かにまたレモネードを飲む。美味しい。
無言が何か嫌だったから私はどうにか話をしようと考えた。だって静かすぎるよ。マスターは洗い物しながら時々こっち見てニコッて笑顔むけてくるだけだし、私はふとマスターの言葉を思い出し、質問した。
「私がコーヒー飲めないって、よくわかりましたね」
「高校生で飲める人は少ないですから」
「あーなるほど、じゃあ疲れてるってのは?」
「ここに来るってことは何か抱えていらっしゃると思いまして」
私はえ?と答えてしまった。その声に青年は首を傾げた。
「違いましたか?」
私はレモネードを置き、手を横に振る。
「いえ、確かに悩みはありますけど、そんな何かを抱えるほどの物じゃ無いですよ」
青年はクスッと笑い、奥を指差した。
「悩みがあるなら聞きますよ。『あなたの心を軽くします』」
看板とチラシに書いていた言葉だ。本当に出きるのだろうか聞いてみた。
「そんなことって本当に出来るんですか?」
「知りたいならどうぞ、奥へ」
青年は扉を開き奥へどうぞとしている。
私は少し不安に感じたがその為にここに来たと思いだし奥へ歩き出す。
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