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「で、さっきの人ですけど」
さっきの占い師が見えるように、近くのガラス張りのカフェに入った。ここはバターライスのオムライスが美味しいお店だ。
「占ってないってどういうことですか」
一つ一つ手作りの、味のあるコーヒーカップを静かに置いてミクリさんは言った。
「花菱さんって、実は怖いものが苦手だけれど、興味があってつい見てしまう性格ですね?」
ぎく。
「明るい性格だけれど寂しがり屋な一面もあって、一人でいたいけれど仲のいい友達と賑やかにしているのもお好きですね。他人から好かれたいと思っているのに、御自分では否定的だったりしませんか? あなたはとてもお優しい人で、他人の為にご自分を犠牲にされる時が度々ありますね。結構な確率で苦手な人から好かれたりすることもあるんじゃないでしょうか」
ぎくぎくぎく。
「最近、痩せにくくなったんじゃありませんか? 花菱さん、当たっていますか?」
「えぇ、まぁ。って、ミクリさん俺のこと知ってますよね?」
それなら当たるも何も、知っているわけで。占いって言うか。
「そう、それです」
「それ?」
「バーナム効果ってご存知ですか」
「バーナム効果?」
「バーナム効果って言うのは、誰にでも当てはまるような曖昧な言葉を、あたかも自分の事を全てわかってもらえていると錯覚する心理学の現象です」
なんとなく、分かるような?
「怖いものに興味があるのも、自己犠牲も、痩せにくいのも、大体の人には当てはまるものですよね? それをあたかも占っているかのように演出しているのです」
「なるほど」
だから偽物、か。
「それを信じるも信じないも、その人次第ですけれど、あの人は偽物です」
「え?」
「だって、開運グッズと称して何の効果もないものを販売しているんですもの」
「え、じゃぁ」
今すぐ止めに行かないと。
「大丈夫です」
「大丈夫?」
「もう組合長さんにはお話していますから、もうじきおまわりさんといらっしゃるでしょう」
「そう、なんですか」
「それに、あのお客さん、絶対に騙されませんから。あの人、組合長さんの奥さまです」
あぁ、あの後ろ姿、どこかで見たことあると思った。
「占いを信じるも信じないも、お客様次第ですけれど、あぁいう人は困ります」
まぁいい人生は歩めませんけど、と続けたミクリさんのオーラがいつもより黒い気がして、その続きを訊くことが出来なくて、ただ静かにコーヒーを啜った。
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