卜い問いとい

カゲトモ

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「あの人、偽物ですよ」

「わっ!」

 風もなく突然耳元で囁かれたもんだから当然飛び上がる訳で。

「ちょっ、ミクリさんっ! 突然」

「しー」

 しーってあんた! あんたが驚かすから大きな声を出したんでしょうが!

 猫背で黒いオーラを纏っているのは、占い師のミクリさんだ。黒いロングダウンまで着ているから、もうパッと見、ただの黒い塊じゃないか。これ、悪口じゃないぞ。

「あの人、昨日からここにいますよ」

「へぇ、そうなんですか」

 商店街から少し離れた、廃れたとは言えないが落ち着いている店並みの一角に、ポツンと小さなテーブルが設けられていて、そこにごく普通の中年女性が座っている。黒いベロアのテーブルクロスには“占い”と書かれた布も垂れ下がっていた。

 それはよくドラマとかで見るようなベタな占い屋って感じ。座っているのもごく普通の主婦って感じだし。

「占い師が主婦って言うのは結構普通ですよ。私は違いますけど」

「へぇ」

 心が読まれることはもう慣れっこだ。

「で、どうして偽物なんですか」

 本物の占い師だからこそ、見抜ける何かがある、のだろうか。

「まぁ見ればわかるんですけど」

「あ」

 察知。そうだよね、ミクリさん視る人だもんね。

「占いっていろんな種類があるんですけど、どれもデータが最重要になっています。占星術も手相もタロットも」

「ふんふん」

「でもあの人、データで占っていません」

「え?」

 データで占っていない?

「はっきり言うと占っていません」

「え、そうなんですか」

 驚いてミクリさんを見ると、こくんと頷いてから、

「とりあえず寒いんで、何処かへ入りましょう」

「あ、はい」

 自由なのはいつだって変わらないよね。

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