聖邪の行進

お父さんはエセ作家

プロローグ

第1話

 お父さん、お母さん、お元気ですか?

 僕は、まあ、元気にやっています。


 突然ですが……父さん前に言っていたよね?


 本当の一目惚れって言うのは、一瞬にして世界を真っ白に染め、時の流れを穏やかにさせるって。


 それでもって、自身を突き抜ける風を感じた瞬間、目の前には、白いキャンバス世界を七色に輝かす素敵な人が見えるだとか何とか……。


 ごめん父さん。


 僕ね、嘘だと思ってた。

 顔に似合わず、何をロマンチスト気取ってんだって、ちょっと馬鹿にしてたんだ。


 ……でも、本当の事だったんだね?


 この間、僕も経験したよ。


 虹色を彩る彼女の美しさに、僕の心臓はバクバクと踊っていたけれど、余りにも突然の出来事で、突き抜ける風が強すぎたせいかな? 僕は椅子ごと後ろに倒れるという無様な姿を、彼女の前で晒してしまったんだ。


 あの恥ずかしい記憶が甦る度に、僕は死んでしまいたくなるよ。


 それでね、彼女に格好いい所を見せたいからさ、家の店に置いてある難しい魔法書をいくつか送ってよ。


 じゃあ、待ってるからね。 


           マイティより


◆◇◆


 ミチュキア女神様トイボックスオモチャ箱と呼ばれる世界から、ダイアと名付けられた新しい大地が海面から姿を現したのはいつの頃だったか?


 そんな遠い昔からダイアは生命を育み、今日まで数多くの生き物を誕生させて来た。


 しかし、いつしかダイアに住まう物達は、異種族という理由で陣取り合戦を始めたのだ。


 耳の尖った妖精は森を愛し、鬼は山へと進んだ。

 背の低い妖精は地中を求め、獣は野を選んだ。


 だが、二種類の人は全てを愛し、全てを求め、戦う事を選び奪う為に突き進んだのだ。


 片方は、特に魔法に秀でた者を王と呼び、もう片方は、その王に挑む勇ましき者の存在を認めた。


 終わることの無い陣取りが数百年もの続き、そして、紹介文の頭へと戻る。



 『戦場の真っ只中で愛を叫ぶ』


 愛を叫んだのは、才能・容姿共に普通の男。

 また、その愛に応えたのは、同じく才能・容姿共に普通の女である。


 これが一般人なら、何ら問題なかった。


 だが、彼らのクラスは魔王と勇者。


 一般人並みの才能と容姿では、彼らの存在は魔王・勇者の中では、下の下のげ~の位置にある。


 そのせいか、何故、彼らが魔王と勇者なのかは分からないが、お互いの国では、九割の人間が彼らの存在を認めていなかった。



 やがて、二人は恋に落ち、営みを共にする。

 そして、待望の愛の結晶が、ダイアの地に産声を上げた。


 彼の名はマイティ。


 マイティ・ルーラーである。

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