Simple is best

ぺむぺむ

第1章

第1話

 まず、落ち着いて状況説明をしよう。

 私は世でいう《ゾンビ》の世界で生きている。家族は皆、ゾンビ化してしまい、この町の生存者はどうやら私一人みたいだ。そんなことは町の状況を見ればすぐにわかる。軽自動車が突っ込んで酷く折れ曲がった信号機に、何台も玉突き事故を起こしたまま放置されている自動車。その車はどれもドアが開きっぱなしで、引きられたような大量の血痕が地面にこびりついている。ハエの集る肉片も、顔を上げれば必ず目に付いた。

 アメリカ合衆国で発生したゾンビウイルスがアジア諸国に伝染したことにより、数十万人の死者と感染者、ゾンビウィルスに感染した死者の生き返りが確認された。日本では関西地方で一名の感染者が確認されてから数ヶ月の内に全国へと伝染し、史上最多の死者をだした。

 ゾンビウィルスに感染したゾンビに噛まれた人間は感染し、わずか五分でウィルスが全身にまわり、《ゾンビ化》する。その時には理性が消失し、本能的に人間に襲いかかるようになる。

 家族がゾンビ化したその日は私は風邪で欠席しており、安全地域だといわれていたこの地域で、妹のあかりは背後から来たゾンビに襲われてゾンビ化した。それを私の同級生の灰田千花はいたちかが目撃し、携帯で知らせてくれたことでわかった。不幸中の幸いか、警察が動けるときに両親が感染し、警察によって排除され身元が特定したことで、両親もゾンビ化したことを知った。

 __おっと、こんなことを説明している間にも大量のゾンビが集まってきているではないか。

 父親の趣味の関係で使用していた、トンカチ、ノコギリ、ナイフ、などをベルトにさしている。

 私は右手に持っていた斧を両手に持ち変えると、

「かかってこいや、腐りゾンビども!」

 と叫びながらゾンビに向かって走り出した。


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