風と光と水と

 そんなある満月の綺麗な夜、こおろぎと鈴虫がモーツアルトのアイネクライネマハトムジークのような交響曲みたいな音色を奏でていた。


 チロチロチロチロリン、チロチロチロチロリン、チロチロチロチロリン、♫


 レノアンにはそう聞こえていた。音楽の感覚が敏感になってきたのだろう。するとまたあの黒猫がやってきた。


「にゃおーん♫」


「おおッ。久しぶりだね。おいらのファン第1号の黒猫ちゃん。今日は新曲ができたんだ。聞いてくれるかい?『風と光と水と』、っていう曲なんだ」


 レノアは歌い始めた。


 『 星が降る種山が原で

 見渡す限りの白い銀河が

 爆発するような夏の夜

 シロツメ草の灯りがキミにも

 見えだろう♫

 それはポランの広場への道しるべ

 それは愛と夢の国への道しるべ

 風と光と水が輝く

 北のふるさとへ帰ろう♫

 風と光と水が輝くこの大地で

 力の限り生きていこう♪

 風が遊ぶ丘の やまなしの花のような

 純白の花を心に咲かせて』


「なんていい曲いい歌詞。どうしたらいい?町で弾き語りなんてこんな田舎の町じゃ恥ずかしいし、モリーオ市のライブハウスにでも出るか?


でもギター弾き語りじゃ曲のイメージを伝えきれない。バンドでも組むか?


でもおいらみたいなのと組んでくれる奴がいるのか?ああ悩む」


 レノアンは、歌った。すべてを忘れるかのように。


頭の中に歌詞の光景が浮かんでるくる。緑の草原をさっそうと吹き渡る風、黄金色に輝く稲穂の光、命をはぐくむ清らかな水。


そうだこのイーハトーブにしかない、誰もまねでもない、純粋な言葉を歌詞にすればいいんだ。


「銀河の彼方にともに笑ってすべての悩みを忘れてしまえ。風と光と水が輝くこの大地で」

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