異世界で3人の弟に溺愛されています。

@Re-no

小さな男の子達に出会いました

それはあまりにも突然すぎた。

私はただ自分の部屋で鏡を見ながら髪の毛をといていただけなのに、いきなり鏡が光って眩しさのあまり目を閉じた。そして目を開けると、そこに私の部屋はなかった。


私に理解できるのは目の前に3人の男の子がいると言うことだけ。

「お前誰だ…?」

いやいや、こっちのセリフですよ。

君達いったい誰ですか。

「いきなり出てきたってことは、鏡の故障じゃないですか?」

「でも何処から飛んできたの?見たことない服だし」

鏡…?飛んできた…?見たことない服って言っても一般的な白ニットにスカートを履いているだけなのに…

おかしい。何かがおかしい。いや、この状況がすでにおかしいんだけどそうゆう事ではなくて…

私の頭の中にはある一つの単語が思い浮かび上がっていた。

「あの、一つ聞きたいんだけどここって日本?」

「…日本?ここはバンテン王国。日本なんて聞いたことねーよ」

あー、バンテン王国ねえ…

私はその言葉でほぼ確信した。

信じたくないけど、ここは私の住んでいた世界とは別の世界。私はあの鏡の光で異世界にトリップしたってわけだ。

この非現実的な状況の答えが分かり、私はなんとか落ち着くことができた。

というか、この状況でこんな冷静な自分に少し笑ってしまう。

「私、こことは別の世界で鏡見てたら鏡がいきなり光って気づいたらここにいたんだよね」

「別の世界…?でも鏡が光ったってことはやっぱり鏡に飛ばされてきたってことだね」

さっきから鏡で飛ぶとかなんとかって言ってるけど、鏡がここの移動手段なのか?

「つまり、お前は別の世界から鏡の故障でここに飛ばされたってわけだ」

「故障…?」

「鏡は入口と出口がないと移動できないんです。ここには出口となる鏡がどこにもないでしょ?お姉さんは移動中にここに落とされたってわけです。」

なるほどね…とりあえずここはそうゆう感じの世界だってことは分かった。

私の住んでいた世界の常識は通用しないってわけね。

「この世界ではよくあることだから大丈夫だよ。お姉ちゃん」

そう言ってこの中でも一番年下であろう男の子が私の手を握ってくれる。

よくあることなんだ…

通りで、いきなり私が目の前に現れても驚かないわけだ。

あ、そういえばまだ自己紹介してなかったっけ。

「自己紹介が遅れたけど、私の名前は原花音。22歳。よろしく」

「エル!7歳!よろしくお姉ちゃん」

「サンです。8歳、よろしくです」

「…イヴァン。というかよろしくってお前」

えーと、一番年下っぽくてチワワみたいに目がクリクリの子がエルで

一番大人っぽくて、子供のくせに妙に色気があるのがサン。

そして、この口が悪くて生意気そうな子がイヴァンってわけね。

あのさっきからイヴァン君の視線が痛いんですが…

「まあ、よろしくっていっても、僕たちとよろしくしてもなにもいいことないですよ。」

「どういうこと…?」

「僕たち家とかないしね」

「お前、周り見てなんとも思わないのかよ」

そう言われて周りを見渡すと、道のあちこちに座り込んだ人がいて今にも倒れてしまいそうにふらふらと歩いている人がたくさんいた。

外の風もとても冷たくて、上着を着ていない今、さっきから寒気が止まらない。多分季節でいうと冬真っ只中。この世界に冬なんてあるのか分からないけど。

家がないということはこの寒さの中、夜を過ごすってことなんだろうけど、考えただけでも手足が凍りそうだ。

「落ちたところが悪かったな。ここはバンテン王国の中でも金がない奴らが集まるところだ」

イヴァンはそう言ってそっぽを向く。

なるほどね…だいたいこの世界の事は分かった。まあ、今の私にそんなの関係ないんだけどね。

「でも私、この世界に君達しか友達いないしさ。一緒にいちゃだめ?」

なにがどうあれ、私が頼れるのはこの小さな男の子三人しかいない。

こんな所じゃ、大人は信用できそうにないし。

「…一緒にいるくらいいんじゃないですか?イヴァン」

「僕、花音と一緒にいたい!」

サンとエルがイヴァンの顔をのぞく。

いいぞいいぞ。その調子。どうかお兄ちゃんを説得してくれ。こんな所に置いていかれたらそれこそ私は終わりだ。

イヴァンはしばらく沈黙して深くため息をつくとスタスタと歩き出した。

「一緒にいていいって!いこ!」

「あ、いいんだ。」

イヴァンの無言は肯定を意味する。よし、覚えた。

私これからどうなるんだろう。

今日食べるはずだったプリンの賞味期限が切れる前に帰れたらいいな…

そんな事を考えながら、エルに手を引かれて私は一歩を踏み出した。

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