第14話

「クソッ、また出やがったなー!?・・・・・・」

みんなが生唾を飲み込んだ。


五体を闇につながれ、細かい白い糸を引かせ、目で見える画面を歪ませた黒く大きな魔物が、そこには、居た。 赤い血と腐った緑が筋肉の間からにじみ出ている。


「アァァー・・・・・・」

火炎放射器で腐死人からヘリを守り、離陸させ、三人の掛け声で一番最後に乗った下の城之内が足首を掴まれ、ハシゴから振り落とされた。  声が小さく成って消えて行く。 この時、三人は、知らず知らずのうちにヘリが高い所を飛んでいる事を思いしらされる。

「早く上がって来いっ」

早乙女が言った。

千堂・福富・早乙女がチャーミンに向かって撃ち続けた。


身を屈めながら必死に上がって来る関谷が、まだ下に居た。

向かって来る凄まじいばかりの暗黒パワーに三人共知らず知らずのうちに戦闘モードに入っていた。

「ワァァァァー」

「オリャァァァー」

「クッソォォォー」

撃てども撃てども、ひるまずに上がって来る魔物。


「アァァー、クッソー、肩がーっ」

怪物の手から放たれた多くの紫光ナイフの中の一本が、千堂の右肩を貫通したのだった。

差し伸ばされた手で最後にヘリ内に入る関谷。

魔物は、身を左右に揺らしながら直ぐ下まで追って来ていた。


ヘリに魔物の右手が掛かった。 そして、みんなが、それを見た。

「キャハハハハ〜」

高笑い声と共に福富が石に成ってゴトンと音を出して倒れた。

銃声の音が止む。


みんなが福富を見て目を見開いた。

唾を飲む。

大きな魔物が腰まで見えていて、ヘリ内に片足が入って来ていた。

そして魔物の前には、助けた女性から変化したゴーゴンが立っていた。

蛇の髪が怪しく動き、口があざ笑う。


時間がコマ送りのスローモーションに成っていた。 誰もが死を直感した。

しかし、その一瞬の間。

「目を瞑れェー、目・をツ・ム・レェー・・・!?」

「!!・・・」

「!?・・・」

早乙女が、はっきりと大きな声で叫んだ。  カチャッ、カチャッ。


「オーリャァァー・・・・・・( 当たれ〜ッ )」

バグッ、ギャァァー、グワワワワァァー・・・・・・。

ゴーゴンが回し蹴りで顔を蹴られ、後ろのチャーミンのいる方へ倒れて行った。

雪崩れ式の勢いで共にヘリから外へ放り出される。

ゴーゴンは、暴れた姿で魔物は、石に変わっていく格好で下の深い闇に落ちて消えて行ったのだった。


右かかとに手応えを感じた後、静かに目を開けて上部につないだ手錠を外した。

立って肩や胸で大きく息をする。

関谷と千堂が早乙女に向かって親指を立てていた。


右手を少し上げて合図をする。

「救出しました。 ミサイルを発射します」

「了解・・・・・・ちょっ、ちょっと待った。 下から生存者が出て来た。 三十秒待ってから撃て!!」

「了解・・・三十・・・・・・二十・・・・・・十・九・八・七」

カウントダウンされていった。

「六」の時にミサイルが幾つもの怪しげな紫の輪に包まれる。

「五・四・三・二・一」

ミサイルが発射された。

中心の六階に小型ナパーム弾が突き刺さる。


ドッカーン、バッシャーン、ボーオォー。

建物中のガラスが割れ、中に火が駆け巡る。

爆発による凄まじい突風でヘリが大きく揺れた。


「うわぁー、デカイぞつ。 ミサイル間違えたんじゃないのかぁー!?」と千堂。

斜めに成って飛ばされて行く。

「大丈夫かぁーヘリっ、落ちないだろうなぁー!?」と関谷。

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