勇者が魔王を倒すだけのお話
夜煎炉
始まり、或いは終わりの夜
それは、あまりに突然だった。
鼓膜が破れるのではないかという様な爆音。
立っているのが困難な程の地揺れ。
侵入者によって炎を放たれたのだ、と。
国民が消火活動にあたるも、火は弱まる気配を見せないばかりか徐々に勢いを増していく。
侵入者もまた、炎魔法を用いて火を放っただけでは飽き足らず、消火活動に励む国民を。避難を試みる国民を。大切な誰かを、国を守る為立ち向かう国民を。
まるで邪魔な羽虫でも振り払うかの様に、机の隅の埃を払い落とすかの様に。
斬り捨て、突き刺し、返り討ちにしては、淡々と無感情に、時には何処か楽しんでさえいる風に死体の山を積み上げていった。
正に惨劇と呼ぶに相応しい光景。
普段と何も変わらない、穏やかで和やかだった夜は、一瞬で阿鼻叫喚の地獄絵図へと姿を転じたのだ。
10分。いや、1分でも時間が経過すればそれだけ、惨劇の勢いは弱まるどころか増していき、誰かが流した血の臭いが濃くなる。誰の物とも分からなくなった骨が転がり、更に高い温度で燃やされて灰と化した“確かに何かだった物体”が熱風に乗って吹き上げられた。
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