桜月二十日

七日目①

 早朝の便でカコとキョウは帰国した。香港滞在時間は二十時間。グルメ、ショッピング、夜景、街歩きはできたけど、香港を満喫できたかどうかは、サクヤにはわからなかった。入国せず乗り換えで帰国して、次の機会に香港を訪れても良かったのに。


「あの子ら、なにしに香港へ寄ったかわからへん」


 ホテルビュッフェで朝食をすませたサクヤは、独り言をしてしまう。

 部屋で荷物整理をしているトモに視線を送る。


「トモはどう思う?」

「旅行の楽しみ方は人それぞれやからね。キョウはいろんなところ行って撮影してたし、カコに至っては初香港だった。二人とも楽しめたと思うよ」

「んー、そうかな」

「そうだよ」


 そう答えたトモは、荷物整理ができたらペニンシュラのチョコを買いに行くと告げた。

 香港の最高峰ホテル・ペニンシュラ香港は、一九二八年に開業した、東洋の貴婦人と称される香港で最も長い歴史を持つ格式ホテルだ。

 シャムロックホテルより南へ一キロほどいった、九龍半島の南端に位置している。

 併設されているペニンシュラブティックの土産は、本当に喜ばれる香港土産の代表格だ。奥の厨房で作る、できたて生チョコの販売は、香港のペニンシュラブティックでしか買うことができない。

 シャムロックホテルからなら、歩いて十五分もかからない。小一時間くらいで戻ってくるだろうと算段して、サクヤは彼女を見送った。


「昼こそ、高級飲茶を食べるんだ」


 サクヤはベッドに寝転がると、鼻歌交じりに持参のグルメガイドをめくった。

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