自主企画バトルロワイアルの生き残り

ちびまるフォイ

自主企画を逃げ回れ!!!

『どんな作品でも評価します!年末の★祭り!』

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企画内容

カクヨムをやっていて作品が読まれないことって辛いですよね。

なので、この企画内に投稿された作品は「無条件」で★をプレゼントします。

もちろんコメント付きです。

たくさん評価されて自分の作品を世界に見てもらいましょう。


たくさんの応募、お待ちしています!

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「無条件で評価してもらえるのか、これいいな」


自分の全勢力をかけて投稿した作品が最底辺の評価で落ち込んでいたころ、

今の自分にぴったりな自主企画へと参加した。


投稿時の項目にチェックを入れた。

そこから何日か過ぎてもまるで評価されない。


「あれ? なんだよ、冷やかしか。せっかく評価されると思ったのに」


小説管理画面に戻ると、ベルマークの横に赤い点が点いている。

なにかお知らせがあったようだ。



【自主企画が開始されました】



「あ、なんだ時間差か。評価されなかったのは作品が集まってからってことだったんだ」


勝手に納得して自主企画のページに行ってみると、

自分が最初に見たものとはまるで様相が変わっていた。



『自主企画:バトルロワイアルへようこそ』

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企画内容

・自主企画終了まで小説同士のバトルロワイアルを行います。

・他の自主企画に移ることができますが、

 バトルロワイアル参加小説と遭遇した場合はバトルになります。

・小説の評価★が少ない作者の作品は過去作含めすべて削除されます。

・最後の1作品に残るまで自主企画は終わりません。

・途中離脱した場合もすべての作品を削除します。


さぁ、みなさん、存分に消し合いましょう。

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「な、なんだよこれ……!? 削除されるってどういうことだ!?」


慌てて自分の小説のバックアップを取ろうとしてもできない。

このまま、どこかの小説と戦うことになって敗北すれば、俺の小説たちはすべて消される。

それはまるで魂を失うようなものだ。


他の小説に負けないように★を貯める必要がある。

でもどうやって。


□評価されない作品あつまれ~!10作品まで!

□一緒に作品を読み合いましょう!

□みんなで作品を評価しようの会


真っ先に評価を貯める方法で思いついたのは、相互評価系の自主企画へ参加。


「よし、これなら手堅くポイントを稼ぐことができるはずだ」


自主企画に覗いてみると、自分の重大なミスに気が付いた。

バトルロワイアル参加している作品の多くが相互評価へと流れていることに。


「なんだよこの数……! こんなにも競争率が高いのか!?」


誰もが自分の作品を消されたくない。

そんな思いで向かった相互評価系の自主企画はまさに激戦地。


バトルロワイアル参加小説たちは、★を比べ合い、作品を消し合っていく。


「やばい! こんなところに参加したら、真っ先にやられる!」


自分の作品でも参加できるマイナーな自主企画へと参加した。

ここなら他の生存者とかち合うこともない。

即評価へは結びつかないものの、少しづつ評価を貯めることができる。



コツコツポイントを貯めつつ、

他作品をレビューして報復にポイントをもらいながら

少しづつ自分の作品を高めていく。だいぶ力もついてきただろう。


「次のマイナー自主企画はと……あれ? こんなに少なかったか?」


小説の候補に出てくる自主企画の数は減っていた。

前は思わず決めかねるほど候補があったのに。


理由はすぐにわかった。


「いつまでも戦いを避けて評価を貯めることはできないってことか」


今までほかの参加作品と遭遇しないように逃げていたが、

逃げる先が絞られれば最終的にはどこかで必ずぶつかる。

負ければ全デリート。


待ち受ける最悪のシナリオに背筋が凍る。


「今どれだけの作品が残ってるんだろう」


最初の自主企画へと戻って参加作品を確かめた。



参加作品数:2



「え、えええ!? もうこれしか残ってないの!?」


自分の作品も含まれるので事実上の1対1状態。

残っている作品は『シティ・オブ・ライフ -街づくりによる人類救済-』。


自分の街を構築することでそこで暮らす人間たちを誘導し世界を幸せにしていく。

そんな物語。そういえば、最初に見た競争率の高い自主企画にも参加していた。


★2754


「うそ……だろ……」


作品の評価数が自分と比べて桁違いだった。

やっと100桁に到達したというのに、これでは戦う前に勝負がついている。


競争のない温室でぬくぬく評価を貯めた俺の作品に対し、

しのぎを削る戦地で評価を奪い合った相手の作品では出来がちがう。


内容を読んでも明らかに自分より面白い。誰が読んでもそうだろう。



他の自主企画に逃げ回ってもいつかはぶつかる。

必死にバトルロワイアル企画から離脱仕様にもできない。バックアップも不可。


「く、くそ!! どうすりゃいいんだ!!」


眼前まで迫る「作品全デリート」の恐怖。

追い詰められた俺は難癖つけて、相手の作品を通報して削除や公開停止へと追い込む。


が、当然そんなことはできなかった。


――――――――――――――

ご連絡いただいた利用規約違反ですが、

運営側としては問題ないことと判断いたしました。


同内容での通報が何度も認められた場合は、

あなたの行為が作品を貶める利用規約違反と判断し

アカウントの停止になる場合があります。

――――――――――――――


「そ、そんな……」


運営もバカではない。俺の難癖通報などバレてしまう。


戦えば即敗北。

評価を貯める場所は減っていく。


いったいどうすれば助かる。

どうすれば俺の愛する作品たちを守ることができる。


「そうだ! もうイチかバチかこれしかない!!!」


俺は最後に生き残っている

『シティ・オブ・ライフ -街づくりによる人類救済-』を開いた。


何度もレビューを書いて、何度も応援し、何度も★を増やした。

SNSでも、リアルでも必死に作品の宣伝を重ね続けた。

毎日欠かさず、敵に塩を送り続けた。


努力のかいあって作品の評価はますます上がり、

俺の作品と比べてみても評価・PV数はけた違い。もう、とうてい勝てない。


「これでいい……あとは天に祈るだけだ」





――バトルロワイアル自主企画、終了。



最後に残ったのは、俺の小説だった。


「やった! 間に合った!! 俺の小説が消されずに済んだ!!」


自分の小説がバックアップできるようになると、

真っ先に保存し、更新止まっていた小説も続きを書き始めた。

忘れていた過去作への愛情を今一度再確認した。


一方、最後まで生き残っていた人気作品はもうカクヨムから跡形もなく消えていた。


今では作者の近況報告ページに1文が残っているだけ。




< 大好評につき書籍化されました。そのため、小説は削除しました >

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