第30話 凪沙がかけたパッシブスキル

 その時地響きがした。


 それは段々と大きくなり壁や天井が揺れ、岩が落ちてきた。


「崩れるぞ!外に出よう」


 三人は入口に戻った。


 入口ではエルフたちが心配しながら三人を待っていた。


「おお、良かった。ご無事でしたか」


「ええ、ボスを倒したら中が崩れ出しました」


 そう言っている間にも遺跡の入口が振動しパラパラと小石が落ちてきた。


「ここも危なそうだ。村に帰りましょう」


 あつしがそう言って六人は村に帰ってきた。


 村では村長以下村人が総出で待っていた。


「おお、無事に戻られてよかった。首尾よくいかれたようですな」


「ええ、この通り箱と嵌める物を取ってきました」


 あつしが手に乗せて二つのものを見せた。


「うむ。まさしく救世主様が持ち帰ると言い伝えられておる箱はこれじゃ」


 村長はしばらくその箱を眺めていたが


「それで、どうされますかな。すぐに次の村へ行かれますか」


 と聞いてきた。


「いや、明日にしましょう。朝にまた来ます」


 あつしは言って


「それでいいよな」


 とセンタと凪沙に言った。


 その時剣を持ったエルフがセンタに話しかけた。


「あの……もし良ければその剣を見せてはもらえませぬか。そして出来ればお手合わせいただければ有難いのですが」


「ん?ええよ」


 センタは気軽に言ってみんなから離れエルフに刀を見せて説明していた。


「では、また明日にお待ちしております」


 村長はそう言って去っていった。


 凪沙とあつしは手合わせを始めたセンタとエルフをしばらく見ていたが、あつしが渚沙に突然言った。


「凪沙さん、今日のセンタは何ていうか……一段と元気というか妙に張り切ってるんだが、凪沙さんそのわけ知らない?」


「ああ、元気の出る魔法?みたいなことを言ったのよ」


「そうだったのか……で、どんな魔法?」


「あ、それは言えない。ナイショ」


「ふーん……」


 あつしは凪咲をじっと見た。


「なによぉ。そんなに見ないでよ」


 凪沙は顔を赤くしていた。


 あつしはそんな凪沙を見ながら


「それじゃ僕にもその魔法、かけてくれないかな?」


「ええー?そうねぇ……あつし君にもかけなきゃダメだよねぇ……」


 渚はしばらく考えていたが


「あつし君、彼女はいるの?」


「今はいないよ」


「じゃあさ、年上の女の子は嫌い?」


「いや?そんなことないよ。どちらかと言うと好きなほうだ」


「それじゃ私の友達で丁度いい娘がいるのよ。美人だしきっと気に入ると思うから、魔王を倒したら紹介してあげようか?」


「ほんと?是非お願いしたいなぁ。よしっ!頑張らないとな」


 あつしは嬉しそうな顔でそう言いながら


「なるほど、そういう事だったのか」


 と一人で納得していた。


「ん?なに?」


「いやね、センタにかけた魔法が分かったのさ」


「ええー!うそぉー!なんで分かるの?」


「ここ最近の君たちの様子と僕にかけてくれた魔法の言葉から推測すると、答えは自ずと導き出されるよ」


「じゃ、言ってみてよ」


「言っていいのかい?」


「えー?どうしようかな。でも違うかもしれないしな……いいわ、言ってみて」


 凪沙はそう言いながら顔を真っ赤にしていた。


「じゃ言うよ。魔王を倒したらチェリーボーイを卒業させてあげるよとか言ったんでしょ?」


「きゃー!バレてるじゃーん。もうやだぁ……」


「僕が知ってることはセンタには内緒にしておくよ。それよりさ、その娘ちゃんと紹介してよ?」


「うん、任せといて。あの娘もあつし君なら好みのタイプだし」


「よーし!俄然やる気が出てきたぞ。うん!これは強力なパッシブスキルだな」


「ああ、そういうことになるのね」


 凪沙は「アハハ」と笑った。


 そこへ手合わせを終えたセンタが戻ってきた。


「あれ?凪沙さんどしたん?顔が赤いで」


「いや何でもないよ。それよりさ、魔王を倒したらあつし君に私の友達を紹介することになったからさ、四人でどっか遊びに行こうよ」


「お、それいいね!よし!打倒魔王目指して頑張るぞー」


 凪沙の言葉で俄然やる気が増した、単純なセンタとあつしだった。

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