第11話 三人で村へ行く

「ここにおったら、また魔物が来るかもわからへんからさ、村へ行って話さへん?」


「んん?村なんてあるのかい?」


「うん、あるで。知らんの?」


「いや、知らない。ところで君、関西人?」


「うん。そうや」


 俺がそう言うと、男はいきなり弓を構える真似をして、俺に矢を放った真似をした。


 俺はつい胸を押さえて


「うう・・・や、ら、れ、たぁ~」


 と言ってその場にばったりと倒れた。


「あはは、本当にやるんだ」


 そう言って笑う男に、俺は起き上がりながら


「おいおい、何にやらすねんな」


 と男に言った。


「いや、ごめんごめん。関西の人ってノリが良いって言うでしょ?拳銃で撃つ真似をしたら、倒れてくれるって聞いたからさ」


「いやいや、今のは拳銃やのうて弓やったけど?」


「でも、やったじゃん」


「いやまぁ、これは条件反射というか、性さがと言うか、ついやってまうねん・・・って、そんなことはどうでもええねん!」


「あははは。関西の人っておもしろーい。漫才やってるみたいだね」


 と、今度は女の子まで笑い出した。


 ウケて笑ってくれるのは悪い気はしないが、今は早く村へ行きたい。


「まぁとにかく、村へ行こうよ」


「そうね。私もここにはいたくないわ」


「遠いのかい?」


「いや、そんなに遠うないで」


 三人は並んで村に向かって歩き出した。


「自分、名前なんて言うの?」


「え?おれ?」


「うん。あ、関西では相手のこと、自分ていうねん」


「そうらしいね。知ってたけど、一瞬わかんなかったよ。俺は、穂積あつし。あつしって呼んでくれていいよ」


「あつし、かぁ。ええ名前やなぁ」


「君は?」


「センタ。九十九つくもセンタや」


「ぷ!」


「ぷぷ!」


 二人同時に笑いやがった。


「いやいや、ごめん。なかなかいい名前じゃん」


 いや、もうええって。聞き飽きたって。


「君は?」


 あつしが女の子に言った。


「私は、相川凪沙よ」


「へえー、可愛い名前じゃん。僕達より年上みたいだけど大学生?」


「ええ、そうよ。あなた達は高校生?」


「うん。高二だよ」


「君は?」


「俺は高一や」


 そう言ってるうちに村が見えてきた。


 俺たちが村に入っていくと、そこにいた村人達が一斉に俺たちを見て叫んだ。


「救世主さまだー」


「おーい、救世主さまが帰ってきたぞー」


 村は騒然となり、村長が慌ててやってきた。


 横にいる凪沙は何事かと目を丸くしていたが、あつしは冷静な顔をして、顎をなでている。


「救世主さま、お待ちしておりましたぞ。あの日からお姿が見えないので、もう来られないのかと」


 村長は泣きそうな顔をしている。


「村長さん、心配させてすみませんでした。強くなるために訓練していたんです。サエちゃんのかたきは必ず取ります。そして、サエちゃんと約束したとおり魔物を退治してこの村を平和にします。安心してください」


「そうですか・・・そうですか。サエもきっと喜んでいるでしょう・・・」


 と言ってホントに泣きだした。


 村長さん、鼻水が・・・


 その時凪沙が、俺の袖を引っ張って小声で聞いてきた。


「ねぇ、いったいなんの話?渚って誰よ」


 そう言う凪沙と、その横にいるあつしに気づいた村長が


「おお、今日は従者をお連れですな」


 と、言った。


 俺と横の二人は慌てて


「ちょっ・・・」


「い、いやこの二人はそんなんじゃ・・・」


 と言ったが、村長は聞く耳を持たず


「そうですか。さすがセンタさまじゃ。今までの方とは違う。必ず、この村を平和に導いてくだされ」


 そう言って深々と頭を下げられてしまった。


 俺は二人の痛い視線を受けながら


「ごめん。後で村長にはちゃんと説明しとくから」


 と、小声で言ってから村長に


「村長さん。ちょっとみんなと話がしたいので、宿屋を借りていいですか」


 と言った。


「どうぞどうぞ。あの部屋はセンタさま専用に取ってありますでな、自由にお使いくだされ。おお、そうじゃ、従者の方の部屋も用意せねばなりませんな。それではわしは部屋を用意してきますで、これで失礼しますじゃ」


 村長はそう言って宿屋の方へひょこひょこと小走りで去っていった。


 俺は、更に痛い二人の視線を受けながら、宿屋へ二人を連れていった。

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