第27話 照王子現
「…こうして、念家はほぼ族滅状態となり王太子峰芽と子妃の鄭…いえ、念春霖は帰らぬ人となったのです。それ故、政の表舞台には念家が出て参らぬのでしょう」
「ですが…それならば奏沙様は子妃様を敵視する必要はないのではありませんか?李家の御血筋を継いでおられるのですから」
瑩珠は茶を一口飲んだ。
「李家は当時まだ幼かったお父様を王太子に立てましたが、とても冷遇しました…王となられて李王太妃は李氏を増長させましたの。そして王妃たるお母様が男御子を授かる度に毒で殺してしまわれました」
金鈴は絶句した。王妃といえば瑞華長公主である。皇族に毒を盛り、その御子を弑し奉らんとすることは大罪であるからだ。
「そのことに永良王が気づいてくださらねば私も生きてはおられませんでした。永良王は李王太妃を退宮させて両親を守ってくださったのです。この悲劇のせいで照王府には男御子はいてはならぬとお父様がお決めになられました。李氏の毒牙にかかってしまうから…と」
金鈴は何かに気がついた。
「子妃様、生とは天がお決めなさる故にままならないものでございましょう?王子が生まれぬとは言えませんでしょう」
瑩珠は満足そうに笑い、それがお兄様です、と答えた。
部屋の扉が急に開き、照王夫妻が入ってきた。
「子妃殿、
王妃が寂しそうに微笑んだ。阿子こそ、瑩珠の兄である。
「ん…そなたは金鈴?そういえば念と懇意にしていた家の出であったな。そなた達には申し訳ないことをした…李氏に冷たい目を向けられ、王子での再興を願う者が多かったと聞く」
金鈴は立ち上がり照王に挨拶をして、そんなことはないと頭を振った。金鈴はそのまま上位に対する礼を取ろうと膝をつこうとした。そのとき…
「立ちなさい。そなたらの思いをわかっておりながら成就させられなかったのは一重に我が落ち度。恨むなら父上でなくこの王子を恨めよ」
手を取り立ち上がらせてもらった金鈴はこの王子という言葉を聞いてはじかれたように顔を上げてその人物を見た。本来は上位の者の許可なくその尊顔を拝するなどあってはならないこと。そこにある尊顔は、見覚えのある青年だった。
「金鈴。我こそが隠された王子だよ…わかるかな?」
そこで黒紫の衣に身を包んだ青年は朗らかに微笑んだ。
「念…
そこにいたのは黎翔付きの側近である宦官だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます