GCU-2
GCUに移った友里には、新しい日課が二つできた。一つ目は、理世から授乳してもらうこと。大きくなって体力がついてきたので、友里は、短時間なら自分で吸えるようになってきた。二つ目は、沐浴。木浴室の大きな湯船でプカプカと、看護師の手の上で漂いながら入浴する友里は、とても気持ち良さそうだ。
理世が見ていると、千穂に
「やってみます?」
と聞かれたが、
「いいです、落としたら怖いので」
と遠慮した。
やっと安心できる大きさまで育った友里を、溺れさせては大変だ。
沐浴室の窓から、中庭に咲く桜が見える。今ちょうど、満開だ。不安でたまらなかった二カ月を越えたからだろうか、理世には、今年の春はいつもより美しく見えていた。
「ママ、お仕事はどうされるんですか?」
友里の沐浴後、理世が授乳室で友里を抱いていると、様子を見に来た千穂が聞いた。
「復帰します」
そう答えながらも理世は、仕事のことはすっかり忘れていた自分に気付いた。伊坂と暮らし始めて二カ月弱、理世の生活は自宅と病院の往復がほとんどで、社会から切り離されていた。
朝食を準備して伊坂と一緒に食べ、掃除洗濯をする。合間に搾乳をして、病院で友里と過ごし、帰宅後は少し休んで簡単な夕食を作って食べ、仮眠をとる。伊坂は早ければ二十三時ごろ帰宅し、理世の搾乳のために起きる時間とタイミングが合えば、二人で一時間ほど話をして一緒に眠る、という日々だった。
「仕事に復帰するかどうか、聞かれた?」
その夜、理世が千穂に聞かれたことを伝えると、伊坂は不思議そうに聞き返した。
「戻るよね? 産休・育休取ってるんだろ?」
「うん」
「……保育園の送迎、理世できる?」
理世はこれまで、残業の多い部署にいた。復帰後もそのままの状態が続けば、保育園への送りはともかく、迎えに行くのは無理そうだ、と伊坂は気付いた。
「どうかな」
「まあ、お互い稼いでるから何とかなるか。俺たちの手が回らない部分は、ベビーシッターでも雇えば」
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