第13話 GCU

 生まれて二カ月が経った頃、友里はGCUに移された。そこでは友里は、ガーゼの真っ白な産着を着せられ、コットに寝かされた。コットはプラスチックのかごのようなもので、中には布団やタオルが敷いてあり快適そうだ。


 コットの下には、ちょっとした荷物を置く棚が取り付けてあって、そこにはタオル地の小さなヒヨコのぬいぐるみや、絵本が入れてある。


 ある日、伊坂が面会にいくと、看護師の千穂が友里を膝に抱いて絵本を読んでやっていた。手のひらサイズの数ページしかない絵本で、大きく書かれた動物の絵に、本物の毛糸やスポンジが貼ってある。友里は、千穂に大人しく抱かれながら絵本をじっと見ている。


「それ、千穂さんが選んだんですか」


「この本ですか? そうです、GCUの事務室に本棚があって、そこから。友里ちゃんは、まだほとんど見えないと思うんですけど。気持ち良さそう、と思って」


 伊坂が見ると、確かに友里の小さな指は、真っ赤な毛糸でできたライオンのたてがみを、ゆっくりと何度も触っているのだった。


気持ち良さそう、か。


 まだ若い千穂が、小さな友里の身になって本を選んでいるというのに、自分の母親は、なぜあんな本を送って寄越したのだろうか。生まれたばかりの孫へのプレゼントとしては、どう考えてもおかしなセンスだ。


 伊坂の母・京子がNICUに突然やって来た日から一か月半ほど経っており、もうあの時のことは考えないでおこう、気にしないでおこうと思っているにもかかわらず、伊坂はたまに思い出しては嫌な気持ちになっていた。

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