素敵なおくりもの
カゲトモ
1ページ
「お、奈々子」
出勤途中、レモンを買いにかどわき青果店に向かっていると、後ろからドンッと脚を掴まれた。視線を落とすと、そこにあるのは二つのツインテールだ。
「すかい~!」
「今日も元気だな」
「げんきげんき!」
花のように、例えるならそう、ヒマワリみたいな。そんな小さな太陽みたいな笑顔でくるくると奈々子は回る。どうしたどうした元気が良いな。
「何か良いことでもあったのか?」
誕生日は今日じゃなかったと思うけど。クリスマスでもないし、何があったんだ。
「えへへー! あのねーななちゃんねーおねぇちゃんになるんだよ!」
「えっ」
「ふふふふふ」
首を傾げながら笑う癖のある奈々子。その仕草も表情も、本当に心から喜んでいるように見える。
そうか、門脇君の奥さん、おめでたなのか。
「そうかそうか、それは良かったな!」
しゃがみ込んで視線を合わせると、奈々子がぎゅっと抱き付いてぴょんぴょんと跳ねる。
「うん! うれしい!」
「うんうん、良かったな」
「ななちゃん、おねぇちゃんだよ!」
「奈々子もお姉ちゃんかぁ」
「うん、おねぇちゃんなの!」
ウサギみたいにぴょこぴょこ跳ねる奈々子の手を引いて一緒に店に向かった。店先には門脇君と奥さんがいた。二人の表情は穏やかだ。
「いらっしゃい、スカイさん」
「こんにちは。奥さんおめでたなんだって? おめでとう」
ありがとうございます、と、そう続くと思っていた。けれど、そうじゃなくて替わりにクエスチョンマークが浮かんでいた。
「え」
「スカイさん? 何を・・・」
「え? おめでたじゃないの?」
「え?」
「え?」
「え?」
大の大人三人が店先で、そろいもそろってポカンと口を開けた。うん、何これ、奈々子どうしたの。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます