名残の雪
「……良いのだ、巌流殿」
「なに!?」
なにを思ったか、
「………………」
目を
姫や女官の哀しい姿。
旧怨をひとまず腹に仕舞い込み、こうして共闘してくれた好敵手。
あるいは、焼けるような武闘の中にしか、己の活路を
それらの模様に、ただただ胸を打たれる思いがしたのだ。
「“人の世”とは、まこと
「
「……あなた様は、まこと神なのですなぁ?」
これはもしや、まだ取り付く島があるかと
それが、長らく剣しか握ってこなかった、
しかし、一身を
「お願い申す。 伏して願い
「申してみよ。 聞く耳は持たんが」
「どうか、人をお救いくだされ」
「なに?」
「世を恨みかこつ心は捨て
「真心? 今さら真心と
「左様。 凶行の陰にも必ずや」
「ならば
「この
「空言では無い!!」
しかし、なけなしの口八丁を止めるには
「一寸の虫にも魂はある。 これを
「
「それは……っ」
「だがどうだ!?
「それは……、それは、仕様があるまいよ。 かつては皆々、己のことだけで精一杯だった」
「な!? 言い訳を…っ、言い訳をするな!!」
「あなたは
「なにィ!?」
「この世の中に、もはや
「言うな!!!」
「ならば! あなたは言い訳を探しておるに過ぎぬ!!」
「嫌だ! 言うな言うな!!!」
「どうにかして恨みをぶつける相手を、凶行の
「だまれ下郎!!!」
彼女が発した
すぐ耳元で、嫌な音が鳴るのを聞いた。
痛みはない。
嘘だ。
意識を
若い頃、かの合戦の折りも、
もはや身が
「ははは!! 死ぬがいい! 存分に苦悶して──」
「武蔵!!! 死ぬな阿呆! まだ死ぬることは許さんぞ!?」
狂笑の陰にも埋もれぬ、好敵手の叱咤を聞いた。
影絵に等しい
だが済まぬ。
貴公との決着は、もはや
「
瞬間、
それに続き、
「たまにはと
「ぅ……?」
それはまさしく畏怖の象徴。
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